最近、中国各地で国有企業による不動産物件の大量の投げ売りが注目を浴び、人々の懸念が高まっています。一部のアナリストは、これが中国当局による重要な政策転換の兆候であり、不動産価格の急落が目前に迫っている可能性があると指摘しました。

 中国本土の主要なポータルサイトである「搜狐(ソウフ)」9月29日の記事によると、北京朝陽区の住宅建設委員会がこのほど、オンライン・オークションを通じて154戸の分譲住宅を売りに出し、その売却価格が10億元(約200億円)を超えました。

 同様に、広州市のある国有不動産グループも400戸の住宅物件を売却しました。これらのニュースは懸念と議論を巻き起こしています。

 中国メディア「華夏時報」9月29日の報道によると、山東省済南市政府の国有資産監督管理委員会(国資委、SASAC)の傘下にある済南市都市開発グループは昨年、3000戸の賃貸用物件を大量に購入したばかりでしたが、最近、1341戸を総額28億元(583億円)以上の価格で売却しました。

 これに対して一部のネットユーザーからは、「これが不動産投機だったのか」、「これらの住宅はもともと何のためにあったのだろうか?なぜ今になって市場に投げ売りされるのか?」、「これらの住宅物件は彼ら(デベロッパー)の手にあり、不動産の物件価格が下がるわけがない」などのコメントが寄せられました。

 では、なぜ地方政府の国有資産監督管理委員会がこれほど多くの住宅物件を持っているでしょうか。その理由は主に3つあると、「華夏時報」の記事が不動産専門家の分析を引用して報じました。

 1つ目は、不動産デベロッパー企業の経営破綻。不動産デベロッパー企業が経営破綻すると、地元の国有資産監督管理委員会がこれらの不動産物件を引き継ぐことがあります。

 2つ目は、土地オークションの競り勝者としての役割。土地オークション市場では、土地が最高価格に達してもまだ競り勝者が決まらない場合、競売参加者の建築面積の大きさで競り勝者を決定する仕組みがあります。つまり、デベロッパーが土地を獲得するためには、関連する住宅や施設などを建設しなければならないため、最も多くの建設を約束できる者が土地を獲得することになります。これにより、地方政府の国有資産監督管理委員会が土地の所有権を持つことがあります。

 3つ目は、大量の住宅物件の購入。地方の国有資産監督管理委員会は、大量の住宅物件を購入することがあります。

 「華夏時報」によると、住宅賃貸市場の低迷により、地元の国有企業が所有するこれらの住宅の長期的な収益率は、運営コストすらカバーできない可能性があり、そのため、直接売却して現金化する方が得策とされています。また、今年の地方政府の財政収入はかなり悪く、財政的に苦しい状況にあり、財政収入を増やすため、地元の国有資産監督管理委員会が売却を余儀なくされた状況に迫られたものとされています。

 カナダ在住の時事評論家である文昭氏は、自身のYouTubeチャンネルで、国有資産監督管理委員会が不動産物件を売却して現金化を図り始めると、大規模な政策変更が迫っている兆候であると述べました。そして、これは単一の地域の国有資産監督管理委員会だけでなく、複数の大都市の国有資産監督管理委員会が行動しているということは、不動産の崩壊規模や状況の緊急性がさらに楽観視できないことを示唆しています。崩壊規模は、大都市での購入制限が解除されるに加えて、価格制限も解除されると、住宅価格が急落する可能性が非常に高いことを意味しています。この段階に達すると、中国当局は住宅市場を救うための切り札を出したと言えるだろうと、文昭氏が考えています。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙も数日前に、「中国が不動産市場の価格制限措置を再考、結果は予測困難」と題した記事を掲載しました。この記事は、中国の地方政府が今年初めに不動産市場に価格制限措置を導入し、悪質な価格下落を防ぐための措置としていましたが、現在はこれらの措置を緩和する可能性を検討していると報じています。ただし、これが予測できない結果をもたらす可能性があると指摘しています。

 中国当局はデベロッパーに対し、政府に登録した価格の15%を下回らない価格で物件を販売するよう要求しています。

 文昭氏の分析によると、「結果は予測困難」というのは、そのリスクが長期間にわたり過度に抑制され、リスク資産の総量が過大であるため、価格制限が解除されると、不動産企業が激しい価格競争を繰り広げることになり、その後何が起こるかは誰にも予測できないということです。つまり、価格制限の解除に伴う激しい価格競争が、市場や経済への影響が不明瞭であるため、不確実性が高まるということを示唆しています。

 文昭氏は、中国の住宅価格が「天井は見えないほど高く、底は見えないほど深い」と表現し、これらの状況が透明性の不足から生じていると指摘しました。一般民衆にとっては、この不透明性からくる不確実性に対処する唯一の理性的な選択肢は、指導者に追随することです。つまり、指導者がどこで不動産物件を購入するのか、どの株式を購入するのかを追随すればよいのです。少なくとも指導者は一般の人々よりも情報取得の優位性を持っていると考えられています。したがって、国有企業や国有機関が不動産物件を売却し、高い価格で現金化しようとしている場合、物件価格は大幅に下落することが間もなく来ることを示唆しています。

 文昭氏は、価格制限の解除や住宅価格の下落容認は、政府が不動産市場を救うための切り札でありますが、それが最終的な措置ではないと指摘しました。最終的な措置は、住宅価格が引き下げた後でも、不動産企業が回収した資金で依然として債務を返済できない場合、国有不動産企業がこれらの民間不動産企業を引き継ぐことになります。しかし、国有企業が民間企業の資産を引き継ぐ際に、民間企業の債務も引き継がなければなりません。その場合、銀行は国有不動産企業に対して、債務の返済を支援するための特定の融資を提供することになります。では、その資金はどこから来るのでしょうか?それは印刷機を稼働させ、大量の紙幣を発行することによって賄われる可能性があります。

 政府は不動産市場の安定を確保し、国有不動産企業と銀行が介入することによって、市場の混乱を抑制しようとしている可能性があります。ただし、このような過程には通貨供給が増加する可能性があり、インフレーション(物価上昇)のリスクが伴うことになります。

 これらの過程が進むと、人民元がトイレットペーパーほどには価値が低下しなくても、少なくともその価値が低下して紙ナプキンのようになる可能性があると、文昭氏が指摘しました。

(翻訳・藍彧)