福島第一原子力発電所は24日午後1時ごろ、トリチウムなどの放射性物質を含む処理水を海に放出した。この決定は国際原子力機関から承認を得ており、一部の外国の学者は処理水が環境や人間の健康に影響を及ぼす証拠がないと述べているにもかかわらず、隣国の中国では政府から市民に至るまで激しい反応が現れた。

 中国海関総署は24日、福島からの処理水が食品の安全に放射線汚染のリスクをもたらすことを防ぐため、中国の消費者の健康を守り、輸入食品の安全を確保するため、日本産の水産物の輸入を全面的に停止することを発表した。

 また、中国各地で食塩の買い占めが起きた。北京の多くのスーパーマーケットでは、通常供給が豊富だった食用塩がわずか1時間で「在庫切れ」となった。上海のネットユーザーによると、上海のスーパーマーケットの海塩も完売し、高価な塩製品すら売り切れているという。

 このほか、24日夜、江西省南昌市で地元の民衆が八一広場で集まり、抗議活動を行った。

 また、核処理水がすでに放出されることを知った子どもが、わんわん泣いたり、家の地図から日本を切り取ったりする動画もあった。

 福島第一原発の処理水の排出が環境にどのような影響を及ぼすかは、時間をかけて検証する必要がある。しかし、この事件に対する中国の上から下までの激しい反応は、完全に中国政府が主導したものである。中国国内では、処理水の排出に関する理性的な分析や議論は禁止されている。

 中国のウェイボーには、処理水が宣伝されているほど恐ろしいものではないと分析する記事が投稿され、1.2万以上の「いいね」を受けた後、公式に削除され、記事を投稿するアカウントも封鎖された。一方、処理水の排出に反対する記事やコメントは、どんなに激しい言葉を用いても処理されない。

 実は、福島第一原発の処理水は、国際原子力機関の審査と承認を経ており、現行の中国の基準よりもはるかに高い。

 福島第一原発のトリチウム希釈基準は1,500ベクレル/リットル未満となっているが、浙江省杭州湾の秦山原発では、07年に設定された基準は、3,700ベクレル/リットルとなっており、その後はずっと変わっていない。すなわち、過去16年間、秦山原発は福島第一原発より2倍以上のレベルで杭州湾に処理水を排出して続けている。しかし、この事実はほとんどの中国人が知っていない。その原因は政府が彼らに知られたくないからである。

 中国政府の反応に対して、多くの海外のネットユーザーは、「中国政府のこの行為は本当に理解できない。もしいつか中国の人々は、中国が日本よりもはるかに多くの核廃棄物を排出していることを知る日が来たら、中国政府はどのように対処するつもりなのか」、「福島原発の処理水を30年放出するのに、日本の海産物を30年も禁止し続けるのか?そのうち貿易が再開されたら、どう説明すればいいのか」とコメントした。

 (翻訳・吉原木子)