北京の8つのダムと永定河が1日、一斉に放水したため、河北省の多くの地域が浸水した。一方、中国共産党(以下、中共)河北省委員会書記の倪岳峰(がい・がくほう)氏は先日、断固として北京の「お堀」を務めると述べた。一部の専門家は、涿州は上流からの洪水に加えて、下流の雄安新区の洪水も引き受ける必要がある。雄安新区は習近平の面子や政治的な問題が関わっており、それを浸水させるわけにはいかないため、涿州市が犠牲になければならないという。

 中国公式メディアの報道によると、中共河北省委員会書記の倪岳峰氏は1日から2日まで、保定市と雄安新区での洪水調節および救援作業を視察する際、北京の洪水調節の圧力を軽減するために、断固として首都の「お堀」を務めると述べた。

 倪氏のこの発言が一気に多くのネットユーザーの怒りを引き起こし、「涿州市の人々はまだ水の中で救助を待っているところなのに、彼は急いで北京にいる主人に忠誠を示すのか」と批判した。

 ドイツ在住の国土資源と水利の専門家である王維洛(おう・いらく)氏は、今年の北京の洪水は主に2つの大きな河川に集中している。1つは永定河で、永定河の洪水は北京の門頭溝区を経て河北省に流れていく。もう一つは拒馬河(きょばか)で、京の房山区を経て、河北省の涿州市に流れ、そして、保定市、雄安新区に至る。そして、複数の河川が通るため、涿州市が最も深刻で危険な地域となっている。しかも、上流の北京からの洪水だけでなく、涿州市は雄安新区に対する洪水分散の任務も担わなければならないと指摘した。

 王氏はまた、中国当局は6年をかけて、300億元(約5975億円)を費やして、雄安新区の北部、拒馬河の南岸に厚くて高い堤防を作った。しかし、上流の水が大きすぎると、この堤防も無力になるため、洪水が到来する前に、上流地域で一部を消化する必要がある。これにより、涿州市は現在非常に危機的な状態に置かれていると述べた。

 雄安新区は習近平総書記が推進している「京津冀協同発展」という国家重要戦略の一環で、「千年の大計」、「国家の大事」と位置付けられた。中国水利部の李国英(り・こくえい)部長は、1日に専門会議を主宰し、「雄安新区の洪水防止を絶対的に確保する」と強調した。

 当局は習氏の面子を損なわないようにするために、何百万もの人々の命を無視して、洪水を涿州市に無理やりに流し込むという行為に対して、多くのネットユーザーは、「彼(習近平)の面子と愛するおもちゃのため、何百万もの人々の家を水浸しにした。罪深い行為だ」と批判した。

(翻訳・吉原木子)