中国では現在、失業問題が深刻化しています。多くの元「ホワイトカラー」が家族に隠れて毎日出勤のふりをし、実際にはスターバックスなどで時間を過ごしているという状況が増えています。

 最近、中国のネット上で「スターバックスは失業者でいっぱいだ」という話題が炎上しています。

 これは今年以来、中国経済の低迷により、各業界で大規模な人員削減が行われ、ホワイトカラーも仕事を失った人々の中に多くいることによるものです。失業した人々は、家族に顔向けできず、スターバックスなどを自身の「避難所」として利用しています。彼らは毎日、カフェや図書館、書店のパブリックスペースで毎日時間を過ごし、インターネットを閲覧したり、履歴書を送ったり、時間を潰したりして、厳しい現実からの逃避を試みています。

 中国のネットユーザーが最近、この現象についてソーシャルメディア上で投稿し、多くの共感と関心を呼び起こしました。
WeChatアカウント「深燃財経」の筆者は最近、スターバックスなどを訪れ、カフェに「常駐」している複数の元ホワイトカラーの苦境や、毎日出勤のふりをすることによる苦悩と不安について、5月28日に記事を投稿しました。
 
突然の失業に対する無念な選択

 30歳になったばかりの李海さん(男性)は、以前は北京のインターネット企業で働いていました。今年の4月初め、会社はコスト削減の一環として、李さんが所属していた部門を廃止し、数十人の社員が一斉に失業することになりました。李さんには、上は高齢の両親を抱え、下には子供がいて、住宅ローンや車のローンも抱えている状況でした。突然失業により、彼は大きなプレッシャーに直面しました。

 しかし、家族にこの苦境を知られたくない李さんは、自身のプライドや家族のためを考え、毎日仕事に行くふりをしています。実際には、自宅近くにあるカフェで一日中過ごすことにしています。彼はそこで時間を過ごし、仕事をしているように見せかけることで、家族に安心感を与えようとしています。

 この選択は李さんにとって非常に無念なものです。彼は本当の仕事を失い、将来の不安や経済的な困難に直面しています。しかし、家族のために自分の苦境を隠し、毎日の生活を維持するために、彼はこの選択を迫られたのです。李さんのような人々は、失業によって追い詰められた苦境から逃れるため、非現実的な選択をせざるを得ないのが現実です。

 李さんは取材に対し、次のように明かしました。

 毎朝10時前にカフェに来て、午後6時か7時になって帰宅しています。カフェでは、まずネット上でさまざまなニュース情報を読み、午後には履歴書を編集して(メール)で送り出します。1日の終わりには、2、3時間空けて本を読んだり、蓄積した経験を書き留めたりしています。

 私はすでに1か月以上失業しており、数百通の履歴書を送りましたが、面接に進んだのは5、6社だけで、そのうちの1社だけが少し採用する意向があったものの、その会社が提供している給与は前職の約半分しかありませんでした。そして、最後にその会社からも採用通知をもらえませんでした。

 カフェで過ごす毎日は、焦燥感と迷いが少しずつ私を飲み込んでいくような気がします。カフェには自分と同じような状況の人はたくさんいます。以前はカフェに行くのは社交のためだったのですが、今では一人でパソコンを抱える人が増えています。

 李さんは失業後、カフェでの日々を過ごすことについて、自身の感情や困難さを率直に明かしました。長い時間を費やし、数百通の履歴書を送ったものの、面接のチャンスは限られ、採用まで至らなかったことに失望を感じています。カフェに集まる同じような境遇の人々との共感もあり、彼の心情は焦燥感や迷いに満ちています。カフェで一人で過ごす時間が、かつての社交から孤独な時間へと変わっていったことを彼は実感しています。

 李海さんはまた、妻が自身の状況に気づいているようで、「ただし、まだ妻には告げていないだけだ」と明かしました。
また、李さんは以前の安定した収入時に多くのローンをも申し込んだことに後悔していると述べました。適切な機会を見つけて家族と真剣に話し合い、支出を削減して現在の困難を乗り越えるつもりです。
 
カフェでの長い時間

 似たような状況に直面しているもう一人は、35歳の劉金眼さん(男性)で、北京市でマーケティング管理の仕事に従事していました。

 劉さんは、昨年12月に会社が大規模な人員削減を行った後、長い間適切な仕事を見つけることができず、これはここ数年で3度目の失業となりました。そのため、カフェにこもって働いているふりをする羽目になったのです。

 劉さんが以前勤めていた会社のマーケティング部門の従業員のうち、8割がリストラされました。失業後、家族にストレスや不安をかけたくなかったため、劉さんは家族に失業したことを伝えませんでした。その後、仕事に行くふりをする日々が始まりました。

 劉さんは次のよう語りました。

「最初は自宅の近くのカフェに行っていましたが、店員に何もしていない人と思われることを心配したため、頻繁にカフェを変えました。有料の自習室やシェアオフィス、ショッピングモール、広場、ファーストフード店など、さまざまな場所に行きましたが、中でもカフェが最も快適でした。

 最初は毎日カフェでコーヒーを一杯注文し、昼はカフェで食事をしていましたが、後に節約のためにコーヒーだけか昼食だけにするようになったのです。

カフェで一日中座っていることは、会社に行くよりも楽どころか、むしろより焦りを感じています。なぜ時間が経つのがこんなに遅いのか、なぜ「退勤時間」がまだ来ないのかと嘆くことさえありました。
毎日カフェに通う間に、何社もの面接を受け、ようやく前職よりも20%低い給料で仕事を見つけることができました。今回の求職活動は過去2回と比べてずっと難しかったです。市場の雇用機会が限られていることを嘆いていました」
 
さまざまなカフェで時間を過ごす

 IT業界で働いていた静京さん(女性)は、仕事のプレッシャーに耐えられずに辞職しました。家族に心配をかけたくないため、失業のことを伝えず、毎日働いているかのように振る舞うようになりました。

 静京さんは次のように語りました。

 「月曜日から金曜日までは、通勤時間に合わせていつものように出勤し、帰宅しています。時には図書館やカフェに行ったり、時には面接に行ったりしています。帰宅が遅くなった場合、残業していたと言ってごまかし、帰宅後に面接を受けた会社と交渉する必要がある場合や、友人と仕事探しについて話をする場合には、家族に『残業や会議』と言って、ごまかしています。

 ネット上でさまざまなカフェ情報を集めています。時には慣れ親しんだ場所に行き、時には新しい店を試してみます。オフィスワークに適したカフェにも行ったことがあります。そこではたくさんの人が集まっており、遅い時間に行くと席を確保するのが難しい場所もあります」

 また、今では書店のパブリックスペースやカフェに中年層の人が多くなったことに気づいた静京さんは、「私と同じく平日にカフェにいる人たちは、私と同じく仕事がない人たちなのだろうか?」と自問しました

 記事では、取材対象者の希望により、すべての取材対象者に仮名を使用しています。

(翻訳・藍彧)