オーストラリアに亡命した著名な法学者・時事評論家で、中国共産党上層部の内幕や動向をたびたび暴露する袁紅氷(えんこうひょう)教授にこのほど、独占インタビューをしました。

 袁紅氷氏の分析によると、習近平氏は台湾問題を解決するのに2段階の戦略を決定したといいます。第一段階は、2023年に台湾に対する統一戦線を全面的に展開し、2024年1月の台湾総統選に干渉することで台湾を掌握する。第二段階は、台湾総統選への干渉が失敗した場合、2025年に戦争を起こし、武力で台湾を征服する。

中国共産党、台湾総統選への全面介入

 ここ1年余り、中国共産党が台湾を挑発し続ける中、米台間の非公式な交流は減るどころか、より頻繁になっていると、複数の海外メディアが報じました。

 これに対して袁紅氷氏は次のように述べました。

 「台湾は今、来年の次期総統選を控えている。中国共産党の情報機関『統一戦線工作部』と中国共産党中央台湾工作弁公室(中台弁)は、2023年を流血せずに統一戦線工作のいわゆる平和的方法で、台湾問題を解決する最後のチャンスと見ている。2023年の中国共産党中央台湾工作弁公室の主な任務は、台湾総統選に全面的に介入し、頼清徳(らい・せいとく)氏が選挙で優位になることを全力で阻止し、台湾社会のあらゆる層に浸透している統一戦線勢力をフル動員して、国民党候補が勝利できるようにすることである。

 こうした中で、ロシアのウクライナへの侵攻戦争に対する習近平氏の態度は非常に明確である。それは、米国、NATO、ロシアを長期的に戦争による消耗状態に置くことである。ウクライナ危機を政治的に解決しようという中国共産党政権のいわゆる平和的提案は、単なる目隠しに過ぎない」
「ロシアが開戦して以来、中国共産党政権はロシアに国際的な政治や経済的な支援を提供してきた。また、ロシア軍に密かに軍事食糧を提供してきた。さらに、中国共産党政権は北朝鮮を通じて、中国国内に備蓄していた数えきれないほどの旧ソ連製弾薬をロシアに輸送し続けている。これは、ロシア軍がこれまで弾薬の不足を示さなかった根本的な理由だ」

台湾実業家・郭台銘(テリー・ゴウ)氏の発言で習氏が激怒

 袁紅氷氏はさらに、次のように具体的に明らかにしました。

 「実際、中国共産党中央台湾工作弁公室が台湾の次期総統選に介入するためには、すでに最新の措置があった。それは、中国共産党政権が台湾で扶植(ふしょく)したメディア、旺旺中時媒体集団(ワンワンチュウジバイタイグループ)を解き放ち、台湾の実業家・郭台銘氏に対する世論の火種を集中させることである。中国共産党は、台湾の総統選で郭台銘氏が国民党の代表となる可能性を潰し、侯友宜(こう・ゆうぎ)氏が国民党の候補者になることを確実にしようと企んでいる。

 中国共産党中央台湾工作弁公室が郭台銘氏の出馬を阻止しようとする理由は、習近平氏の発言にある。郭台銘氏はかつて、『中国共産党が私に懇願しているのであり、私が中国共産党に懇願しているのではない』と発言した。この発言は、習近平氏を怒らせたと言われている。習近平氏はかつて郭台銘を名指しして、『こんな身の程を知らない実業家を甘やかすわけにはいかない』と発言していた。

 中国共産党中央台湾工作弁公室が今、台湾新北市の侯友宜市長を支持している理由は、侯友宜氏が国際政治を分かっておらず、両岸関係に対しても定見を持っていないからだ。そのため、侯友宜氏は必ず国民党内の親中派政治家の影響を強く受け、ひいては国民党内の親中派政治家に頼って、米台関係と両岸関係を主導するだろう。

 国民党の夏立言(か・りつげん)副主席が代表団を率いて2月8日から17日まで 北京を訪問した際、王滬寧(おう・こねい)政治局常務委員と会談した。王滬寧氏は夏立言に対し、2024年の台湾次期総統選で国民党の勝利を支持するという中国共産党の立場を台湾の国民党に伝えるよう明確に要求した。同時に、王滬寧氏はある傲慢な実業家が国民党の代表として選挙に出馬するのを見たくないという態度を示した。王滬寧氏が言及した傲慢な実業家とは、郭台銘氏のことである」

台湾に対する中国共産党の2段階戦略

 袁紅氷氏はインタビューの最後に、中国共産党内の情報筋の言葉を引用して次のように述べています。「中国共産党第20回党大会後、中央政治局の拡大会議で、習近平氏は『激しい荒波のような偉大な闘争を迎えて、その喜びは尽きない』と発言した。習近平氏が渇望するその闘争は、台湾海峡のことだ」

 袁宏冰はさらに次のように分析しました。「実際、習近平氏はすでに、前述したように、台湾問題を解決するのに2段階の戦略にすることを決めたのだ。第一段階は、2023年に台湾に対して全面的な統一戦線攻勢をかけ、台湾総統選の主導権を掌握し、台湾の与党の交代を推し進めることを目指す。それによって国民党を政権に復帰させる。この戦略が成功すれば、中国共産党は国民党に強制的に、中国共産党による統一を目的とした平和協定を締結させるだろう。

 第二段階として、中国共産党の台湾総統選を操る努力が失敗した場合、2025年春に21世紀における共産主義全体主義の世界的拡大のための重要な戦い、すなわち台湾海峡で台湾を武力で征服する戦いを開始する」

(文・李静汝/翻訳・藍彧)