中国の地方政府が、地方財政の柱であるマンション用地の売却収入が減りかねず、8月から現在まで、約21都市が値下げ制限令を導入した。これは中国共産党(以下、中共)が不動産市場の下落が続き、崩壊につながるのを防ぐための動きだと考えている専門家もいる。

 今年下半期以降、中国の不動産市場は値下げ圧力に直面している。政府の不動産規制をきっかけにマンションが値下がりしているからだ。中国国家統計局によると、新築住宅の販売総額を総面積で割った販売単価は8月、前年同月比2.7%下落した。新型コロナウイルスがまん延した直後の2020年4月以来の下落だ。

 8月には6年5カ月ぶりに34ある省・直轄市・自治区の半数超で値下がりした。半数以上の地域がマイナスとなるのは景気が減速していた15年3月以来。最も下落幅が大きかったのは黒竜江省の21%で20年9月から下落が止まらない。中国南部の雲南省と貴州省、内陸部の寧夏回族自治区も10%を超す落ち込みだった。

 8月21日、湖南省岳陽市や河北省張家口市は、新築物件を当局に事前に届け出た価格より15%超値引きすることを禁じる新規制を発表した。これは、2021年に全国初の住宅価格の下落を制限することを目的とした規制である。

 8月31日、江蘇省無錫市の一部地域では、開発コストを下回る不当廉売などを禁止する通知を出した。

 また、雲南省昆明市、広東省恵州市、河北省唐山市など中小都市を中心に約21の都市が値下げ制限令を発動した。

 米サウスカロライナ大学エイケンビジネススクールの謝田教授は、「中共は、不動産市場が下落し続ける中で崩壊を防ぐように、このような規制を導入した。中国の不動産市場の実情は、供給が需要を上回り、物件が余っていることに加え、多くの不動産会社が財務危機に直面しており、銀行ローンの返済のために売れ残った物件の売却に躍起になっている。そうなると、不動産の価格下落は当然である。不動産バブルの崩壊、不動産市場の崩壊につながる可能性が高い」と述べた。

 中共は今、ジレンマに陥っていると謝氏は指摘した。不動産開発業者の値下げを認めれば、住宅価格が暴落し、中共の権力者層の資産が大幅に縮小する。一方、不動産開発業者の値下げを阻止すれば、不動産会社は住宅を売れず、ローンや借金の返済ができなくなって倒産し、銀行の不良債権を誘発して信用危機に陥ると述べた。

(翻訳・徳永木里子)