中国企業家 孫大午氏(Public domain, via Wikimedia Commons)

 中国の有名な企業家、河北大午グループの創業者である孫大午氏(67歳、男性)は、公判前整理手続の会議で中国共産党政権による残虐な迫害を暴露し、投獄されている家族や会社の従業員の自由を、自分の死と引き換えにしても構わないと訴えたことが、海外華人の独立系中国語サイト「民生観察」5月25日付の報道で分かりました。

 2020年11月に、孫氏の家族や大午グループの経営関係者など30人近くが、騒動挑発罪容疑や生産・経営を妨害した疑いで現地の公安当局に連行され、そのうち孫氏の妻、2人の息子、2人の義理の娘を含む20人以上が現在も拘束されています。

 同事件に詳しい関係者によると、当局が大午グループの経営関係者全員の逮捕を命じたのは、名目上は大午グループと河北省保定市の国有農場との間の土地紛争が理由であるが、実際には孫氏が中国共産党政権を公然と批判したことが許せなかったからだといいます。

 孫大午事件の公判前整理手続の会議は5月22日に終了しました。5日間半に及ぶ会議の中では、孫氏は泣きながら、「家族の大人が投獄され、5人の孫が家に取り残されている。自分の死で投獄されている家族や会社員の自由を引き換えたい」と訴えました。孫氏はまた、拘置所での生活は死んだほうがましだと訴えました。黒い帽子をかぶらされることが日常茶飯事で、部屋には窓も時計もなく、丸3ヶ月間日光を浴びることができておらず、自ら申し出てやっと漬物が食べられ、精神的なダメージを受けたと明かしました。

 報道によると、公判前整理手続の会議の現場では、弁護士の抗議の声や被告人の泣き声が響いていました。

 弁護士は、孫大午事件を楽観視せず、事件の決定権者は、7月1日の中国共産党創立100周年までに同事件の二審判決を完成させると考えているのではないかと推測しています。弁護士らが検察機関から収集した情報によると、孫氏は25年の懲役刑になる可能性があります。

 孫大午事件の背景

 孫氏は、1985年に1,000羽の鶏と50頭の豚養育からスタートした農家で、「トップ養鶏家」として中国で有名になった後、大午グループを設立しました。 孫氏は、かつて中国企業家の「良心」と呼ばれていました。

 ネットの公開資料によると、孫氏は、地元の村人や従業員に1元(約17円)で治療を受けられる病院や、地元の村人が無料で通える農民専門学校を運営しています。

 2003年、大午グループは会社のウェブサイトに「中国の現状と歴史に関する二人の民間ビジネスマンの対話」など3つの記事を掲載したことで、当局から警告を受けました。警察は、これらの記事が当局のイメージを著しく低下させたとして、同社に6ヵ月間の営業停止を命じ、罰金を科しました。

 2020年11月、孫大午氏とその家族、同社の上級管理職など20人以上が逮捕されました。2021年5月、孫氏らの弁護団は、裁判所から孫氏らが9つの訴因で起訴されたという通知を受け取りました。

(翻訳・徳永木里子)