367便の残骸の分布(パブリック・ドメイン)

 1970年代、ユーゴスラビアのある旅客機(JATユーゴスラビア航空367便)が、1万メートルもの上空で爆発し墜落しました。飛行機に乗っていた全員が不幸に見舞われたかと誰もが思っていた中、一人の客室乗務員が奇跡的に生還しました。このため、最も幸運の客室乗務員としてギネス世界記録を更新しました。

 1972年のあの墜落事故では、セルビア人の客室乗務員だったヴェスナ・ヴロヴィッチ(Vesna Vulović)さんが唯一の生存者でした。今現在、1万メートルの上空からパラシュートなしで自由落下したにも関わらず、生き延びた世界で唯一の人です。彼女はこの奇跡的な生還で一夜にして有名になりました。しかし、彼女はメディアの取材を拒否し、いかなる場合でも、あの事故について話すことを断り続けてきました。

 しかし、2007年になってから、彼女は初めてインタビューに応じ、その墜落事故で奇跡的に生き残った話を語りました。ヴェスナさんは、当時のフライトは自分の当番ではないはずだったと振り返りました。航空会社が、同じくヴェスナという名の別の客室乗務員と間違えてしまったため、そのフライトの当番になりました。あの日、機内の雰囲気はとても異様で、みんなの態度がいつもと違うように見えました。まず、機長が部屋に閉じこもって、ずっと出てきませんでした。普段は内気で無口な副機長も、柄にもなく、自分の家庭、子供と友人の話をずっとしていました。そして、もう一人の客室乗務員は、むやみにプレゼント用の商品を爆買いして、いつもとは全く違う様子でした。

 そんな違和感に満ちた状態で、飛行機はチェコスロバキア(現チェコ共和国)のある山岳地帯の上空に到達しました。その時、ヴェスナさんは、乗客への食事の提供を終え、自分の席に戻ったところでした。その瞬間、大きな爆発音とともに飛行機全体が引き裂かれました。ヴェスナさんはすぐに意識を失い、目を覚ました時にはすでにチェコスロバキアの病院にいました。彼女は周りの人たちの話から、何が起こったのかを知りました。

 テロリストが飛行機に仕掛けた時限爆弾が、チェコスロバキアの山岳上空を通過する際に爆発したため、この墜落事故が起こったそうです。搭乗していた乗客は乗務員を含めて合計27人でした。ほかの26人は、爆発の瞬間、急激に膨張した空気による肺の破裂で死亡したことが、検死の結果で判明しました。しかし、ヴェスナさんだけは、自分が座っていた座席ごと飛び出して、33,000フィート(約1万メートル)の上空から、時速200マイル(約322キロメートル)のスピードで雪山に落ちたそうです。

 ヴェスナさんの生還はまさに命の奇跡でした。彼女は回復後も、元の航空会社のデスクワークの仕事に復帰し、1991年まで働きました。

(翻訳・心静)