中国河南省南陽市で、公共の運動器具が人けのない荒れ地に設置されていたことが、住民が投稿した動画で明らかになりました。ネット上では、税金の無駄遣いではないかとの批判が広がっているほか「無人地帯に高速鉄道の駅を造るようなものだ」「役人のメンツを保つための見せかけの事業だ」といった皮肉の声も上がっています。
動画には、南陽市郊外の林の中に、ストレッチ器やウォーキング器具などの健康器具がいくつも設置されている様子が映っています。しかし、周囲には雑草が生い茂り、人影も建物も見当たりません。
「国の金がこんなふうに無駄に使われている。こんな荒れ地に運動器具を置いても、誰も使っていない。無駄遣いだ」と撮影した男性は話しています。ネット上でも、 「無駄遣いしなければ、どうやって懐に入れるんだ」 「予算を使い切りたいだけだろう」 「使わなければ損だと考えているのだと思う」 「上にアピールして、報告書の見栄えを良くしたいだけだろう」 といった書き込みが相次ぎました。さらに、 「うちの近所にもある。撤去するにも、また金がかかりそうだ」 という声もあります。
地元メディアによりますと、器具を受け入れた地元の担当者は、近くに設置できる広場がなかったため、林の中に置いたうえ、その後の管理をする人もいないと説明しました。そのうえで担当者は、 「盗まれなければそれでいい」 と話したということです。また報道では、運動器具の中にはコンクリートの土台やクッションマットが必要なものもあると指摘しています。今回のようなずさんな設置は、無駄遣いであるだけでなく、思わぬ事故につながるおそれもあるとしています。批判の高まりを受けて、地元当局は10月19日、器具はすでに撤去し、今後は別の場所に設置し直すと発表しました。これに対し、ネット上では「設置して、撤去して、運んで、また設置する。さらに壊れた分の修理や交換まで含めれば、一つの予算で5回稼げる。よく考えたものだ」と、皮肉る書き込みも見られます。
実は、こうした事例は中国では珍しくありません。以前、山東省青島市の農村でも、地元テレビ局の番組で同様の問題が取り上げられました。報道によりますと、十数種類の運動器具が畑の中に設置され、周囲はフェンスで囲まれたうえに、門には鍵がかけられ、中に入ることすらできなかったということです。設置場所は最寄りの村から1.6キロ離れており、周囲は一面の畑でした。器具は地元の役場が村に無償で配布したものでした。中国の官製メディアも、農村に設置された運動器具が雑草の中に放置されるケースは珍しくないと伝えています。
これは、ネットユーザーが「運動器具の設置は、無人地帯に高速鉄道の駅を造るようなものだ」と指摘する声も、決して誇張とは言い切れません。中国メディアの集計によりますと、完成しても使われていない、あるいは営業を停止した高速鉄道の駅が、全国に少なくとも26か所あるということです。いずれも営業停止の主な原因は利用客の少なさだとされています。
湖南省株洲市のある駅は、2016年末に開業しました。しかし、1日の平均利用者数は開業当初でも100人に満たず、2021年以降は10人未満に落ち込み、2022年から営業を停止しています。地元住民によりますと、駅は市街地から車で30分から40分ほどかかる山あいにあり、周辺は人口がまばらで、目立った産業もありません。この駅の建設には1億2500万元、日本円でおよそ30億円以上が投じられました。しかし、使われないまま4年が過ぎ、外壁のタイルがはがれ始めています。さらに、今年初めに住民がネット上で再開の可能性を尋ねたところ、地元の交通当局は 「今のところ再開は考えていない」 と回答したということです。
海南省儋州市のある駅も、同様の問題を抱えています。この駅は市街地から86.9キロ離れた場所にあり、4000万元、日本円でおよそ9億5000万円以上かけて建設されました。ところが、完成後も長く使われていない状態が続きました。その後、世論に押される形で2023年12月に切符の販売が始まりました。しかし、1日の利用者数は100人未満にとどまっています。人口およそ100万人の儋州市には、高速鉄道の駅が3つあります。広西チワン族自治区佳林市でも、2018年にようやく開業した駅が、2022年には閉鎖されました。地元住民によりますと、別の駅との距離が近いうえ、周辺は人けのない山ばかりで、利用者がほとんどいなかったということです。
こうした問題は、交通インフラに限った話ではありません。巨大な門やモニュメントで街を飾り立てるような事業も後を絶ちません。2019年には、中国の住宅・都市農村建設省が、こうした事業をめぐって2つの地域を名指しで批判しました。当時、国の貧困県に指定されていた甘粛省のある県では、市街地の入り口に、500メートルほどの間隔で、昔風の城門を2つ建設しました。高さ28メートル、幅145メートルの城門に、巨大なモニュメントや広場と合わせて、総額6200万元、日本円でおよそ14億7000万円が投じられました。これについて同省は、限られた財源を住民の暮らしの改善に優先せず、借金してまで街の入り口を飾ったと批判しました。一方、陝西省のある市では、高速道路の出口に「鯉の滝登り」を演出するため、巨大な築山や人工の滝、水路、ライトアップ設備を整備しました。総投資額は1億9000万元、日本円でおよそ45億円に上ったということです。
(翻訳・吉原木子)
