2人で来て、1人前を注文する。3人で来て、2人前を注文する。中国・杭州市のある飲食店の店主は、常連客が店に来る回数も、注文する量も減っていることに気づきました。それでも不満を口にせず、そっと1人前ずつ量を増やして出していました。店主がこのことを投稿すると、コメント欄には「年々厳しくなっている」という声が相次ぎました。これは、1軒の店だけの話ではありません。
一方、ネット上で拡散している動画には、中国各地で相次いで登場している激安の食事が映っています。約140円(6元)の鶏もも肉のせご飯、約117円(5元)の熱した油をかけた混ぜ麺、約94円(4元)の弁当、約70円(3元)の食べ放題。こうした店に、多くの人が列を作っています。「これでようやく食事ができる」という声がある一方、飲食店側からは「値下げは利益を増やすためではなく、まずはお客さんをつなぎ留めるためだ」という本音も聞かれます。まるで1990年代に戻ったかのような価格。その背景にあるのは、人々が食費まで切り詰めなければならない現実なのでしょうか。それとも、飲食業界の価格競争が、もう後戻りできないところまで来ているのでしょうか。
9月28日、中国のSNS「微博(ウェイボー)」で36万3000人のフォロワーを持つ「渔老板钓鱼」というアカウントの店主が、客が出費を切り詰める傾向が深刻になっていると投稿しました。杭州市で長年店を営み、多くの常連客に親しまれてきましたが、最近は、その人たちが店に来る回数が明らかに減っているといいます。
店主はこう話しています。「今年は、2人で1人前、3人で2人前を頼むお客さんも多い。そういうときは、たいてい量を増やしている。魚料理とご飯のセットを1人前頼まれたら2人前に、2人前なら3人前にして出している」。客は食べたくないのではなく、食事に使えるお金が減っているのだと受け止めています。
この投稿には、多くのネットユーザーが共感を寄せました。ウェイボーで117万5000人のフォロワーを持つ「大肥皂」というアカウントの投稿者は、今は以前のようなペースで稼げなくなっており、多くの店がそれを実感していると応じました。特に、接待などのビジネス利用が中心の店や、高級店では、その傾向が強いといいます。また、人々がより冷静にお金の使い道を考えるようになった表れでもあると見ています。
あるネットユーザーは、人々が全体的にお金の使い方に慎重になっていると指摘しました。割高なものを買うのを控え、貯蓄を優先し、ブランドや見栄のためにはお金を使わず、実用性を重視するようになっているというのです。消費を切り詰めるのは、先行きが見えない中で、一般の人々が自分の暮らしを守るための行動です。しかし、消費が縮小すれば雇用にも影響が及び、それがまた消費を冷え込ませるという悪循環につながります。
また、以前は有名ブランドの商品を買うことが自慢になりましたが、今の若者は成分表示を調べ、ブランド品と同じ工場で作られた商品を扱う店を探す、という声もあります。ある調査では、回答した若者の6割以上が、買い物の際によく価格を比較すると答えています。何を買うにも、比較してから決めるのです。こうした中、ディスカウント店や賞味期限の近い食品を扱うスーパー、会員制の店が人気を集めるようになりました。
ほかにも、こんな嘆きが寄せられています。「年々厳しくなっている」「みんな、商売が難しくなって、稼げなくなったと感じている」「自分も周りの人も、何に投資しても損ばかり。出費を減らすしかない」。
BBCなど複数のメディアも、中国の消費低迷を報じる中で、いくつかの典型的な現象を繰り返し取り上げています。最も目に見える変化は、食事に表れています。外食の回数が減り、店に行っても注文をできるだけ控えるようになっています。2人で1人前を分け合ったり、数人で数品だけを頼んで取り分けたりすることも、珍しくありません。買い物では、有名ブランドや高額商品が次第に敬遠され、代わりに、名前も知らないような安い商品が選ばれるようになっています。ディスカウント店や、賞味期限の近い食品も人気を集めています。見栄のためにお金を使ったり、広告やブランドのイメージにひかれて割高なものを買ったりすることを避け、実用性を重視しているのです。車や高級家電、住宅などの大きな買い物については、ひとまず様子を見て、手元の資金や貯蓄を守ることを最優先にする人が増えています。
中国国家統計局は、一定の売上規模以上の小売企業を対象に、2026年1月から8月までの売上高を集計しました。それによると、特定の種類の商品を扱う専門店、百貨店、ブランド専門店の売上高は、前年の同じ時期に比べ、それぞれ2.2%、3.0%、10.0%減少しました。一方、コンビニとスーパーは、それぞれ5.5%、3.8%増えています。
飲食分野では、「中国飲食産業発展報告2026」と飲食業界のデータサービス「紅餐ビッグデータ」によると、2025年の中国本土のデリバリー市場は、約33兆円(1兆4191億元)に達しました。前年比で11.7%増え、飲食市場全体のおよそ24.5%を占めています。ただし、デリバリーの注文は、さらに低価格帯へと集中しています。約350円(15元)以下の注文が占める割合は、デリバリーサービス各社が大量のクーポンや補助金を投入して価格競争を始める前は20~30%でしたが、その後は約40%に上昇しました。2026年には、この「デリバリーの価格戦争」に歯止めがかけられたものの、約350円(15元)以下の低価格の注文は、依然として約40%を占めています。これは、もはやデリバリーサービス側が値引きで誘導しなくても、人々が自ら安いものを選ぶことが日常になっていることを示しています。
さらに注目されるのは、大手飲食チェーンまでもが価格を引き下げ、約350円(15元)以下の市場に参入していることです。会社員向けの、約700~1170円(30~50元)で食べられる少し上質な軽食や定食の市場は急速に縮小し、約260~700円(11~30元)の低価格な食事が圧倒的な主流になっています。
経済の低迷とともに、若者の失業率も上昇を続けています。中国当局の公式データによると、7月の若者の失業率は17.9%に上がり、前の月より3ポイント上昇しました。昨年9月以来の高い水準で、7月としても、この3年間で最も高くなりました。
8月には、この数字がさらに上昇しました。中国の経済メディア「財新」によると、国家統計局が9月17日に発表した8月の都市部の年齢別失業率では、在学中の学生を除く16~24歳が18.9%となり、前の月より1ポイント上昇しました。同じく学生を除く25~29歳は7.5%で、前の月より0.3ポイント上昇しています。30~59歳は3.9%で、前の月と変わりませんでした。
公式データは、中国の本当の失業状況を反映しきれていないという分析もあります。仕事が見つからず求職活動を諦めた人や、出前の配達、配車サービスの運転手、単発の仕事で生計を立てている人たちの実情が、この数字には十分に表れていないという指摘です。
ここ2年ほど、中国共産党は「新しい就業形態」「柔軟な働き方」「就職を急がない選択」といった表現を頻繁に使い、厳しい雇用状況を別の言葉で包み隠し、失業や十分な仕事を得られない現実を目立たなくしています。「2025年中国現場労働者就業研究報告」は、当局の定義で「柔軟な働き方」に分類される人の数が、2026年には3億2000万人に達すると予測しています。2025年末の全国の就業者数7億2500万人を基準に計算すると、働く人の44%以上が、この「柔軟な働き方」に当たることになります。
海外のネットユーザーからは、こんな声が上がっています。「失業なら失業なのに、わざわざ『柔軟な働き方』と言い換える。結局、自分たちの政権を守れなくなるのが怖いんだ」「『柔軟な働き方』をしている人が3億人いると認めた時点で、実際はそれ以上いるということだ」「農村の失業者も加えたら、いったい何億人になるのか分からない」
(翻訳・藍彧)
