7月6日の午後8時、中国湖北省黄岡市の空が、何の前触れもなく暗くなりました。それに続く20分間、窓を閉めようとした人が窓ごと6階から吹き飛ばされ、庭で涼んでいた人が上空100メートルまで巻き上げられました。アメリカの基準でEF2、日本のJEFスケールではJEF2に相当する竜巻が、市の中心部を直撃したのです。わずか20分間の竜巻が、最終的に湖北省で11人の命を奪い、1人が行方不明、331人が負傷する大惨事をもたらしました。

 台風の残存する低気圧の循環と、梅雨前線が重なった影響で、その日の夜、湖北省の黄石、黄岡、鄂州、咸寧などで局地的に猛烈な嵐が発生しました。53の郷や鎮で雷を伴う突風が吹き荒れ、一部の地域では竜巻が突発的に発生しました。中でも黄岡の市街地を襲った竜巻は午後8時10分から30分まで続き、最大瞬間風速は毎秒50メートルを超え、公式発表でも歴史的にまれに見る規模とされています。

 最も深刻な被害が出たのは、鄂州市のマンションでした。

 6階には、4人家族が住んでいました。50歳の夫は小学校の教師、44歳の妻は専業主婦として2人の子供を育てていました。長男は14歳で今年高校受験を控え、9歳の次男はその日の午後、夏期講習のために祖父母の家から市内の自宅に呼ばれたばかりでした。夜になり、突然の暴風雨に見舞われた夫婦は、慌てて窓を閉めに向かいました。次男もそのそばにいました。しかし、窓が枠ごと壁から外れ、わずか数秒の間に3人は強風に煽られて外へ放り出されました。3人は3階のテラスに転落し、一緒に吹き飛ばされたソファや冷蔵庫の下敷きになり、帰らぬ人となりました。

 そのとき、長男は運良く別の部屋で窓を閉めていました。割れたガラスで怪我を負い、血だらけになって部屋を出ると、家には自分一人しか残されていませんでした。親族によると、他の家の窓はガラスが割れただけだったのに、この家の窓だけは壁から窓枠ごと外れ落ちていたといいます。2年余り前に購入した中古マンションには、まだ多額の住宅ローンが残っています。しかし、あの窓を誰が設置したのか、いまだに分かっていません。

 このような転落は、ここだけではありませんでした。

 黄岡の市街地で深刻な被害を受けた大規模マンションでは、わずか20分の間に、部屋の中のソファ、棚、ダイニングテーブルが100メートル先まで吹き飛ばされ、一部の棟は内部がほぼ完全に空になりました。12階に住む30歳の男性は、竜巻によって家の中から外へ投げ出され、下の緑地帯に転落しました。集中治療室での治療が今も続いています。一方、同じ家の中で、妻は1歳になったばかりの子供を抱きかかえて密閉された寝室に逃げ込み、ドアを固く閉ざしていました。母子二人は難を逃れました。わずか数メートルの違いが、二つの運命を分けたのです。

 地上の被害も目を覆うばかりです。黄岡市の中心部にあたる黄州区では、ある運送会社の経営者が入り口で人を見送っていたとき、庭で涼んでいた両親が上空100メートルまで巻き上げられ、転落していくのを目の当たりにしました。二人の遺体は翌日になってようやく発見されました。この地区では多くの戸建て住宅や工場が倒壊し、築10年の家の屋根が丸ごと吹き飛ばされ、建て直しを余儀なくされた住民もいます。近くの物流施設では、何台もの大型トラックが強風で30メートルも押し流されました。街路灯や電柱は次々と倒れ、100台以上の車が押し潰されました。

 竜巻は、現地の黄岡師範学院も直撃しました。南北のキャンパスが、まさに暴風の中心となったのです。

 その夜、文学部の女性教員が管理棟の10階で残業していました。突然停電し、設備の点検だと思ったといいます。しかしすぐに突風が巻き起こり、エアコンの室外機を置く鉄枠でさえ根元から引き抜かれ、建物全体が揺れ始めました。ガラスの割れる音とともに、恐怖のあまり床にへたり込んだと語っています。これまで何度も台風を経験してきたが、あの夜の風は渦を巻いていた、想像を絶する恐怖だった、と振り返ります。

 もう一人の教員は、ちょうど車で校門を出ようとしていました。門の柵が次々と倒れて車に倒れかかり、周囲の木々が車に向かって飛んできました。運転席と助手席のガラスがすべて割れ、後部座席に飛び移って身を伏せたといいます。数分後に風が弱まり、ようやく車から出ることができたとき、死の淵から生還したような感覚だった、と語りました。

 学生寮では天井板が崩れ落ち、窓が吹き飛ばされ、ガラスで怪我をした学生もいました。幸い期末テストの期間中で、ほとんどの学生が寮や図書館で勉強していたため、重傷者は出ませんでした。この竜巻で、キャンパス内の2000本以上の木が倒れ、校舎、図書館、体育館が広範囲にわたって破損しました。直接的な経済損失は日本円でおよそ36億円。1万5000人以上の学生が、予定を早めて夏休みに入ることになりました。

 公式発表によると、黄州区だけでも5975人が被災し、4万世帯以上が停電、100台以上の車が破損しました。直接的な損失は日本円でおよそ108億円に上ります。湖北省全体では1万4600人が被災し、5000戸近くの住宅が損壊しました。

 災害が過ぎ去った後も、現地の雨は止んでいません。来週末まで降り続くと予想されています。一夜にして両親と弟を失った14歳の少年は、この夏、高校受験を控えていました。今は、おばと父親の同僚の教員たちに世話をされています。

 わずか20分の竜巻が、多くの人の人生を永遠に変えてしまいました。そして、壁から窓枠ごと外れ落ちたあの窓の責任は誰にあるのか、その答えは、いまだに出ていません。

(翻訳・吉原木子)