(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 現代社会では、誰もが携帯電話を持っており、写真や動画を撮るのを好む人が多くいます。自分の日常生活、あるいは偶然に発生した事件を撮影し、インターネット上で共有することもできます。そのため、SNSを開けば、さまざまな情報を見ることができるので、何かあればすぐ写真を撮る習慣が身についている人も多いようです。でも、これは本当によい習慣なのでしょうか? 

 フランスの芸術家のオーギュスティン・リニエ(Augustin Lignier)氏は興味深い動物実験を行いました。2021年、リニエ氏はペットショップで2匹のネズミを買い、そのネズミのためにフォトブースのようなケージを作り、中にカメラのシャッターボタンを設置し、実験装置を作りました。 

 この実験装置は、アメリカの心理学者のバラス・スキナー氏の「スキナーボックス」からインスピレーションを得たものです。「スキナーボックス」は、空腹のネズミが餌薬が放出される操作レバーに触れるとどうなるかを研究しました。リニエ氏が作ったフォトブースも「スキナーボックス」によく似ていて、中にいるネズミがカメラのシャッターボタンを押すと、キャンディが1つ与えられます。これは、人間がソーシャルメディア上で写真を共有し、そこから得た喜びや報酬、そして中毒になる現象を再現しようとします。

 リニエ氏のボックスはあの「スキナーボックス」のネズミとよく似ています。最初、リニエ氏のネズミは偶然シャッターボタンを押すことで、すぐにキャンディが出現したので、ネズミはそのキャンディを楽しみました。一週間もすると、ネズミはシャッターボタンに作用があると分かり、シャッターボタンとキャンディの出現に関係があると分かるようになりました。

 これを見て、リニエ氏は写真ブースの中にいたネズミにキャンディの存在を忘れさせるために、仕掛けのないケージに移し、その後、ネズミを再びフォトブースのケージに戻しました。今度、キャンディがランダムに現れるようになり、シャッターボタンを押しても必ずしもキャンディが現れるとは限りません。しかし、この時点でネズミの脳内では、シャッターボタンとキャンディの出現の間に必然的な関係がとっくに形成されていました。そのため、たとえシャッターボタンを押したからといってキャンディが毎回現れるとは限らないにもかかわらず、ネズミは依然としてボタンを押し続けました。30秒も経たないうちにシャッターボタンに押しに行くこともありました。実験過程全体の中で、ネズミは百回以上押したことになります。これで、ネズミは写真撮影に中毒になったとも言えます。 

 リニエ氏によれば、このようにネズミを写真撮影に中毒になるまで惹きつける報奨は、今日のソーシャルメディアや出会い系アプリ企業が採用するビジネス戦略に似ていると述べました。「いいね!」や「コメント」を利用するやり方で、これらのアプリのユーザーに達成感や楽しみを与え、ユーザーは無意識のうちに利用頻度を高めるのです。ユーザーはこの様な変化によって、徐々に習慣を身につけ、これらのアプリに依存するようになり、毎日アプリを開けないと気が済まなくなります。

 アメリカでは少なくとも大衆の5%から10%がソーシャルメディア依存症だと言う心理学者もいます。「いいね!」を押したり、「シェア」したりする行為は、脳内にドーパミン(快感を司る神経伝達物質)を生じさせますが、このような快楽はコカインなどの中毒性薬物を服用した時の効果に匹敵するもので、人体への悪影響も軽視できません。 

 私たちが生まれながらにして備わったこの目とこの脳は、神様から授かったカメラでありフォトアルバムでもあり、真実の映像が常に私たちの心の中に存在しています。もし、すでにSNS依存症になっている方は、携帯電話からちょっと離れ、ご自分の両目でこの世界の素晴らしさを感じ、その記憶をいつまでも心に残してみては如何でしょうか。 

(翻訳・夜香木)