現在、中国は世界で最も多くのダムを有する国です。しかし、平均寿命を超えたダムは80%以上を占めています。2021年までに、年平均52.3基のダムが崩壊しており、巨大な人的被害が発生しています。

1954年から2021年まで、計3,558基のダムが決壊

 中国水利部副部長の劉偉平氏は、昨年12月28日に行われた、「2023年におけるダムの安全管理状況」に関する記者会見で、全国9.8万基のダムのうち、80%以上が50年代から70年代に建設されたものであり、多くが決壊の危機に晒されていると述べました。近年では極端な気象が頻発する中、ダム下流域にインフラや人口が密集しており、ダムの安全な管理が極めて困難であるといいます。

 中国に存在する大量の老朽化したダムについて、ドイツ滞在の著名水利専門家王維洛氏は「50年代に建設されたダムは、現在ではすでに70年以上が経過し、50年の平均寿命を超えており、すべて危険性がある」と指摘しました。

 昨年5月5日に中国中央テレビが報じたところによれば、2023年度に30億元の補助金が投じられ、1,890基の小規模ダムに対して安全対策と補強を講じましたが、これは中国の小規模危険ダムの5分の1に過ぎません。

 王維洛氏は、決壊リスクのあるダムはすでに常態化しており、安全対策を講じたところで、時間の推移によって新たな問題が発生し、決壊危機のあるダムは増える一方であるとの見方を示しました。

 昨年発表された水利部編集の「水利水運工程学報」によると、1954年から2021年まで計3,558基のダムが決壊し、年平均53.3基が決壊しています。近年は決壊率が低下したものの、重大な死傷者を出す事故の比率が高まっています。

中国共産党が狂ったようにダム建設

 中国の80%以上のダムは50年代から70年代にかけて建設されました。当時のダムは設計基準と建設品質が共に低く、多くの問題を抱えています。

 王維洛氏はその主な要因は3つあると述べています。「古来の中国は『人は天に合一すべきもの』と唱えられ、ダムは建設すべきものではないと昔の人は考えていたが、中国共産党が政権を握って以来、中国人の価値観は『人は天に勝つ』と置き換えられてしまった。それが第一の要因である。次に、中国共産党は治水とは、水をコントロールすることだと考えており、コントロールすることを最も重視している。第三は、ダムを建設する際にソ連の経験に基づいていることである。」

 中国のダムは70年代にはすでに決壊していました。1975年には、河南省の駐馬店板橋ダムの決壊事故が発生し、60以上のダムが連続して決壊しました。決壊したダムには2基の中型ダムも含まれ、24万人が死亡しました。2005年5月28日、アメリカのテレビ番組「ディスカバリーチャンネル」でもこの事件を取り上げ、「これは世界史上、最も悲惨な人為的過失による災害だ」といいます。

 大量の決壊危機にあるダムが根本的に解決されない一方で、中国最大の水利プロジェクトである三峡ダムの建設が始動しました。

 王維洛氏によると、三峡ダム建設プロジェクトが1992年の全国人民代表大会で可決された後、中国(共産党政権)は再びダム建設に狂奔する段階に入りました。

 この段階では基本的に東から西へ推移するプロセスです。 淮河と海河の流域から、ゆっくりと西へ、長江と黄河の上流へと拡張していきました。 漢族支配地域から少数民族地域へ、国内河川からメコン川などの国際河川へ。、西へ、さらに外へと拡大し続けるプロセスです。

 この建設プロジェクトは最初、黄河、海河、淮河と遼河から始まりました。黄河、海河では昨年洪水が発生しました。2023年7月、京津都市圏での暴雨とダムの放流による洪水は水利部に「特大洪水」と認定されました。

専門家:中国共産党はダムの安全性しか顧みない

 河北省ライ水県に住む張さんは、昨年7月13日に大紀元新聞に対し、「ライ水県の無予告放流によって、死亡した人と家畜がはかり知れません」と述べました。趙文蓮さん一家3世代6人も洪水に流されてしまいました。

 中国共産党水利部運行管理局の張文潔局長はかつて、「雨季には決壊リスクのあるダムは一律に放流を実施する」と述べたことがあります。

 一方で、水利部副部長である劉偉平氏は、海河の洪水に言及した際、決壊するダムがなかったので、「見事に雨季を乗り越えた」と表現しました。しかし、彼は洪水による人的被害や財産の損失には触れませんでした。

 王維洛氏は、中国当局はダムの安全性だけを考慮しており、「放水による安全問題や財産損失はまったく顧みない」と指摘しました。

 また、三峡ダムの安全性が議論された際、地震などのダムの安全性への影響について検討し、安全という結論が出たということに対して、王維洛氏は「彼らが安全という結論を出したのには1点間違っていました。安全の中心はダムではなく、ダムの影響を受ける人々、つまり市民の生命と財産が中心であるべきだ」と指摘しています。

 同氏は「中国の多くの洪水や地震災害は純粋な自然災害ではなく、人為的要因が大きい。人災は自然災害よりも恐ろしいことである。(中国共産党の支配下で)中国の人災は常に自然災害を上回っている」と述べています。

(翻訳・北条)