中国はすでに高齢社会に突入しており、介護の危機が目前に迫っています。中国民政部が発表した「2022年度国家高齢事業発展公報」によると、中国人はすでに高齢社会に突入しています。中国人は豊かになる前に年を取り、年金収入と支出の不均衡が拡大する傾向にあり、養老の危機が迫っています。

高齢化が進む7省、扶養比率が50%を超える

 同公報によると、2022年末までに、60歳以上の高齢者数は総人口の19.8%を占め、65歳以上の高齢者数は総人口の14.9%を占めます。 65歳以上の高齢者の扶養比率は21.8%です。

 扶養比率は扶養係数とも呼ばれ、非労働年齢人口と労働年齢人口(15~64歳)の比率を指しています。総扶養比率は、児童・少年と高齢者の扶養比率を合算したものです。

  中国国家統計局が編集・発行した「中国統計年鑑2023」によると、2022年の高齢者人口の扶養比率では、遼寧省、重慶市、四川省、江蘇省、上海市、山東省、吉林省、湖南省、黒龍江省、天津市が上位10省に入り、いずれも24%を超え、その中でも遼寧省は28.77%と最も高い扶養比を記録しています。また、河南省、広西チワン族自治区、貴州省、山東省、湖南省、河北省、安徽省の7省は扶養比率の合計が50%を超えています。

 高齢化とは、総人口に占める65歳以上の人口の割合が増加する現象を指します。高齢化は長期的な社会の傾向であり、往々にして社会経済の発展、医療の改善、生活水準の向上、出生率の低下などの要因と関連しています。

 一般的に社会学的に言えば、高齢化の度合いは以下の3つの段階に分けられます。

  総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は、高齢化社会、高齢社会、超高齢社会でそれぞれ7%から14%、14%から20%、20%超えとなります。超高齢社会では、経済、医療、社会保障の面において大きな課題がもたらされ、社会は、超高齢社会の変化に対応するために、政策や資源配分を調整する必要があります。

 高齢化は社会保障制度の調整、医療サービスの供給、介護サービスに対する需要の増加など、社会に多面的な影響を与えています。 高齢者がより質の高い生活を享受し、適切なサポートとケアを受けられるよう、政府、社会、家族は協力して高齢化の課題に取り組まなければなりません。高齢化はまた、経済や労働市場に多くの懸念をもたらしています。比較的多数の高齢者人口を比較的少数の労働者が支えているため、雇用促進、労働生産性の向上、社会保障制度や医療制度の調整の措置が必要です。

個人年金制度の課題

 中国の個人年金制度は2022年11月25日、北京、上海、西安など36の都市(地域)で一足先に導入されました。国家社会保険公共サービスプラットフォームなどの全国統一オンラインサービスポータルや商業銀行などを通じて個人年金口座を開設することができ、同時に商業銀行で個人年金基金口座を開設することができます。

 個人年金口座と個人年金基金口座が開設されると、年金の支払い、個人年金商品(貯蓄預金、資産運用商品、商業年金保険、公募基金を含む)の購入が利用できます。個人年金業務を受付している金融機関には、大手国有商業銀行6行、株式銀行12行、都市商業銀行5行、ウェルスマネジメント会社11社、証券会社14社、独立系ファンド販売機構7社、保険会社6社が含まれています。

 中国の公式メディアによれば、個人年金は基礎年金保険とは異なり、政府がサポートし、個人が任意で加入し、市場ベースで運営される補助的な年金保険制度であるとされています。しかし今のところ、ほとんどの年金対象商品は、赤字です。 年金対象基金のうち、設立以来収益率がプラスになっているものは2割に過ぎません。

基礎年金保険基金の収益率はわずか0.3%

 個人年金の収益率が低い一方で、中国公式が運営する基礎年金保険基金の収益率も楽観できません。

 基礎年金保険基金の委託運用は2016年12月以降、中国31の省・自治区・市と新疆生産建設兵団をカバーし、運用委託された基金権益総額は1兆6200億元に達しました。

 2022年の「社会保障基金委員会報告書」によれば、社保基金は51.05億元の収益を上げ、収益率は0.3%となっています。社保基金委員会(SSF)の責任者は収益率の低下は主に世界経済・政治情勢の変化と金融市場のボラティリティの上昇によるものだと述べています。

 また、中国人力資源・社会保障部と財政部が5月22日に発表した「2023年退職者基礎年金調整に関する通知」によると、2023年1月1日から、年金保険年金の支出は前年同期比で3.8%増加しました。つまり、支出と投資収益の差は拡大しつつあります。

 今年2月25日、周小川・前中央銀行総裁は、中国の年金はかなりのギャップを抱えており、国家年金基金は基本を守るだけで、あまり高くなることはない、政府の新しい個人年金制度のインセンティブは弱いと指摘しました。

 周氏は、年金問題は先延ばしにするチャンスがあると考えてはならない、将来的に調整することはより困難になるだろうと強調しました。世界的に見て、ほとんどの国は年金事前積立金がGDP総額の50%-100%を占め、いくつかの国は100%以上を占め、中国では、この割合は非常に低く、約10%以下です。

 周氏の見解通り、中国の年金危機が押し迫っていると言えます。

(翻訳・北条)