中国ではここ数週間、肺炎の流行が再燃しています。中国北部の複数の都市で児童の肺炎症例が急増し、病院は混雑しています。中国当局は再び、病気の予防と制御が可能であるとのプロパガンダを行っていますが、中国国民や国際社会はすでに中国当局の宣伝を信じなくなっています。そのため、「中国における肺炎の流行をどれだけ懸念するか?」というテーマ自体が、中国の特徴を持つ国際的、かつまた政治的および医学的な問題に発展する可能性があります。

中国の肺炎流行の医学的側面
 世界中が中国での新たな肺炎の流行に対して不安を感じている中、オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の4人の疫学者、C・レイナ・マッキンタイヤ教授、アシュリー・クイグリー氏、ヘイリー・ストーン氏、レベッカ・ドーソン氏は11月26日、「The Conversation(ザ・カンバセーション)」というウェブサイトで「中国における肺炎の流行をどれだけ懸念するか?」と題する共同記事を発表しました。

 これらの4人の学者は、全員がバイオセーフティ、疫学の追跡と早期警戒を研究している専門家です。彼らは中国における新たな肺炎発生について、医学界が現在把握している情報を世界に向けて発表し、不安を和らげるとともに、新たな不安を引き起こさないように努めながら、一般の人々に流行の新しい動向に注意するよう呼びかけました。

 4人の学者は、「この呼吸器疾患を増加させる原因となる可能性のある病原体は何か」というテーマから論じ始めました。彼らが挙げた可能性のある病原体には、マイコプラズマ、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSウイルス)、アデノウイルス、新型コロナウイルスなどが含まれています。

 4人の学者は、現在中国で発生している肺炎の病原体として考えられるものを挙げた後、次のように述べました。「今、もし肺炎患者急増の原因が特定されていなければ、より強い懸念が生じるだろう。しかし、いくつかの病原体はすでに発見されており、これにより私たちが直面している新型のウイルスは1つではないことが確認できている。私たちが最も懸念しているのは、パンデミックの可能性を持つ鳥インフルエンザウイルスである。これは変異する可能性があり、ヒトに感染しやすくなる可能性がある」

 「中国はこれまで、ずっと鳥インフルエンザの発生地であった。(高病原性鳥インフルエンザウイルス株)H5N1亜型ウイルスはすでにアメリカ、ヨーロッパ、アフリカに移って拡散している。それにも関わらず、今年も中国ではH3N8、H5N1、H5N6、H9N2を含む様々な鳥インフルエンザウイルスに感染した人々の報告があった」
4人の学者は記事の最後に、次のように述べました。「新型のウイルスの脅威は増大しており、呼吸器を通じて感染し、肺炎を引き起こすほど重症のウイルスがパンデミックを引き起こす可能性が最も高まっている。現時点では中国で新たなパンデミックの兆候は見られないが、未診断の肺炎患者のクラスターを常に認識し、注意を払う必要がある。早期警戒システムは、次のパンデミックを予防するための最良の機会を提供している」

医学問題と政治問題のもつれ
 4人の学者が共同で執筆したこの記事は、純粋に医学や生物学的観点から解説されています。しかし、医学や疫学を含め、政治がすべてを支配する今日の中国では、単に医学や生物学の観点から中国で発生している感染症を解説することは明らかに不足しているように思われます。

 明らかに、これらの4人の学者または彼らの記事を掲載したウェブサイト「The Conversation」の編集者は、この不足に気づいたようで、彼らの記事の中には、アメリカの研究機関であるニューイングランド複雑系研究所の疫学者、丁量(てい・りょう)博士がX(元ツイッター)で発表した一連の投稿の内容を加えました。

 丁量博士もXでの投稿で、ニューサウスウェールズ大学の4人の学者の文章を引用し、今日中国で発生している肺炎の病原体の可能性を列挙する一方で、中国の公式メディアの明らかに誤導とも考えられるニュース報道に対する懸念を表明しました。「中国の公式ニュースメディアは、現在流行している肺炎の原因をアデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ライノウイルスに帰している。彼ら(中国当局)は未知の疫病の感染源を認めていない。本当にこの3つのウイルスだけなのか、それとも他の何かを隠しているのか?」

 丁量博士はまた、「中国当局が中国の医師に対して、いかなるデータも報告しないように、患者を検査しないように、そしていかなる検査の報告をも出さないように指示していると、(中国の)多くの内部関係者から聞いている。これは非常に聞き覚えがある」と述べました。

疫病を統治する政治力
 現在、中国の病院は混雑していますが、新型コロナウイルスが初めて発生した4年前と比較して、今回の中国当局の情報統制の手法は異なるようです。今回の当局は、噂の出所を追査したり医師を戒めたりはしておらず、中国のネット上でもこの話題について発言したことで有罪判決を受けた者もまだいないようです。

 著名な中国民主活動家で、カナダに逃亡した中国系カナダ人作家、盛雪(せい・せつ)氏は、現在中国で流行している肺炎について、まだ多くの未解決の疑問が残されているが、1つだけ疑いの余地のないことがあると述べました。それは、中国当局があらゆる敏感な話題をすべて政治化していることであり、もちろんコロナや今流行している肺炎のこともその中に含まれています。

 今回の中国共産党の情報封鎖に対し、異なる手法を用いていることについて、盛雪氏は、中国共産党が国民の知る権利を恣意的に奪う姿勢は一切変わっておらず、手法の変更は単に都合の良いものになっているだけだと考えています。彼女は次のように述べました。「今回の中国共産党の世論統制は、2019年や2020年初頭に行ったような直接的かつ暴力的な手法を用いていない。当時、そのような手法の使用はかなり多くの国際的な批判をもたらした。そのため、今回はまずもっと柔軟な手法を使い、とりあえず抑制できるなら抑制し、コントロールできるところはコントロールしようとしている」

 盛雪氏は、中国共産党が情報の流れを操る能力について、「周知のように、中国共産党は自らが重視する情報をまったく漏らすことなくコントロールすることができる。また、情報への遮断は全面的に行っていることを人々が知るべきだ」と述べました。

 1つ典型的な例を挙げましょう。中国当局が2019年末に「噂を広めた」という名目で、武漢市の李文亮医師を含む8人の医師を召喚・厳重警告した後、全国の医師に対し、中国当局の許可なしに公に新型コロナウイルス感染症について話してはならないとの内部指令を出しました。その内部指令が出された後、新型コロナウイルスの起源を研究している学者と外国の学者との共同研究はすべて中断され、未だに再開されていません。

(翻訳・藍彧)