2023年7月、中国の銀行機関による為替手形の手形不渡りが急増し、中国A株上場銀行が8月31日に発表した2023年中間報告書によると、中国の銀行業界では近年、純金利マージン(純利ザヤ)が持続的に低下しています。

 上海証券取引所が2023年8月に発表した2023年7月の為替手形の手形不渡りデータによると、7月31日までに合計2851の為替手形支払人(引受人)が手形不渡りとなり、これは2023年1月の1554から約8割増加しています。手形不渡りのうち、271行は国有銀行の支店と地方都市・農村商業銀行の支店でした。1か月間で、手形不渡りの件数は6月の33件から239件増加し、前月比で356%増加しました。

 手形を不渡りにした271の銀行支店のうち、中国工商銀行、農業銀行、中国銀行、建設銀行、郵政儲蓄銀行の五大国有銀行は167行を占めています。残りの104行は、主に倒産の危機に瀕している都市部・農村部の商業銀行、一部の株式銀行、外資系投資銀行(外銀)の支店が大半を占めています。

 支払人の手形不渡りとは、支払人が手形の支払い日に口座残高が不足しており、時間通りに支払うべき現金を支払えないことを指します。上海証券取引所が支払人の手形不渡りを「支払人の延滞」と呼び、これは手形不渡りが3回以上発生し、月末に延滞残高があるか、当月に手形不渡りの遅延が発生した支払人を指します。

 7月以降、271件の銀行で為替手形の手形不渡り記録が集中的に発生し、これは中国の信用リスクが不動産、投資融資プラットフォームから銀行システム全体に広がっていることを示しています。

 有名な経済・金融ブロガー「老蛮(ろうまん)」はかつて、自身のソーシャルメディアプラットフォームで、銀行システムの純金利マージンがあまりにも低すぎて、地方債と不動産市場の支えとしての重荷を支えきれない可能性があると警告していました。今ではその結果が明らかになっています。銀行自身が発行した為替手形ですら手形不渡りに陥るとは、誰が予測できたでしょうか?

銀行の収益難が金融リスクを悪化させる
 銀行の収益性を判断する重要な指標の一つである純金利マージン(貸出金利と預金金利の差)は、過去数年間ずっと圧迫され続けてきました。純金利マージンは銀行の生命線と見なされ、この指標が高ければ高いほど、銀行の収益も増加します。通常、純金利マージンは銀行総収益の6割から7割を占めます。中国の銀行の純金利マージンの低下は既に事実となり、銀行の収益に直接影響を及ぼしています。

 8月31日、中国A株上場銀行の中間報告書が発表されました。その統計結果によると、上場銀行42行のうち、20行の純金利マージンが1.8%の警戒ラインを下回っています。今年上半期、中国の国有銀行は純金利マージンの減少が最も大きく、平均純金利マージンは1.71%でした。

 また、データは銀行の純金利マージン収入が深刻で、警戒ラインを下回って危機的状況に入っていることを示しています。この状況は、銀行の為替手形の手形不渡りが急増している現象と一致しています。

 2022年9月から現在まで、中国の銀行は基準金利を5回連続で引き下げました。今年はこれまで、6月の利下げに続き、8月15日に再び大規模な利下げを行い、主に定期預金と大口預金に焦点を当てました。さらに、9月1日から、商業銀行を含む18行が再び預金金利を引き下げました。

 これらの急激な利下げの動きは、中国当局が資本コストを削減するために金利引き下げを繰り返さざるを得なかったことを示しています。同時に、当局の利下げが消費を刺激する効果がほとんどないことも示唆しています。

預金者「誰を信用できるか?」
 ここ数年、中国の不動産大手企業が頻繁に破綻し、地方銀行は倒産するなど、富裕層に人気のあった中融国際信託(中国の信託大手)も最近、何の前触れもなく投資商品で支払い遅延・停止となりました。

 中国の金融セクターにおける信用リスクが、投資や資金運用に対する人々の信頼を何度も損なうにつれ、人々は比較的安全で安心な銀行預金を選択するようになったが、今や銀行に対する信用はかつてないほど低下しています。

 深セン市に住む王楠さん(仮名、女性)は、1100万元(約2.2億円)を投資した中融国際信託の投資商品が支払い停止され、彼女と他の15万人の投資家は一夜にして財産を失い、当局の管理対象となりました。王楠さんは大紀元とのインタビューで、現在、チャットグループ内の投資家の総意は、政府の金融機関を一切信用せず、銀行を含むいかなる金融機関の商品も購入しないと述べました。

 王楠さんは8月23日、大紀元の取材に対し、「私たちは銀行預金を四大国有銀行に分散させている。各銀行には49.9万元(約1,000万円)を超えないようにしている。他の銀行は検討しない。残りのお金は金塊を購入して、自宅のベッドの下に置いている。誰が信頼できるのか?これは信用崩壊だ」と述べました。

 中国の預金保険法では、同一銀行の預金の元本と利息が50万元以下の場合、全額が保証されると定めています。50万元を超える部分については、預金者が一定のリスクを負うことになります。

高齢者の「取り付け騒ぎ」
 高齢者たちは中国の銀行預金の主な預金者です。最近、広東省などの地域で、銀行の前に高齢者たちが預金を引き出すために長蛇の列を作る光景が見られます。一部の評論家によると、高齢者たちが相次いで銀行から預金を引き出すことは、彼らが金融リスクを心配し、銀行に預金を預けることに不安を感じ、預金が凍結されたり失われたりするのを恐れていることが示唆されています。

 あるネットユーザーは、「(私の)父は亡くなる前に銀行にお金を預けたが、今でも引き出せていない」と述べました。

 中国メディアはこれまで、高齢者が亡くなった後、その家族が預金の引き出しを銀行に拒否された事例や、子供たちが預金を引き出すために、仕方なく半身不随になった高齢者を銀行まで担がなければならなかった事例、94歳の高齢者が顔認証のために銀行に担ぎ込まれた事例などを報じました。これらの事例はますます多くの高齢者とその家族に不安を抱かせています。

 これに対し、アメリカ在住の政治・経済評論家である廖仕明氏は、9月5日に大紀元とのインタビューで次のように語りました。
 「これは中国の銀行に大きな影響を与えるだろう。皆が預金を引き出すと、銀行にある資金がますます減少し、銀行の流動性リスクが増大し、銀行の経営危機を引き起こす可能性が高まり、中国経済にも影響を及ぼすだろう。最近の270以上の銀行の為替手形の手形不渡りから、高齢者が銀行を信用せずに預金を引き出す騒ぎまで、これらの側面を総合的に見ると、中国社会の金融危機がまさに始まろうとしている」

(翻訳・藍彧)