8月初め、台風5号が中国の北部地域を通過し、集中豪雨をもたらしました。中国当局は北京と雄安新区を守るために警告なしに洪水を放水し、その結果、河北省で壊滅的な洪水が発生しました。中国当局は救助のゴールデンタイム(72時間)に何もせず、被災者の命と財産に大きな損害をもたらしました。

 8月23日、中国語版の大紀元は、ペンネーム「新州」と署名した評論記事を掲載しました。新州氏は今回の放水について、中国共産党が国民に対して「補償を語る資格がない」と指摘しました。

 地方政府は民衆の怒りを恐れ、被災者への損害賠償を約束しました。しかし、この約束を中国当局は果たすことができるのでしょうか?彼らにはこの損害を補償する余裕があるのでしょうか?そして最も重要なことは、このような大規模な人災を引き起こした中国当局が、被災者に対して損害賠償について語る資格を持っているのかということです。

 法的観点から見ると、政府を含む個人や団体が他人や集団の利益を損なう行為を行った場合、それは民事事件または刑事事件となり、相応的な法的責任を負う必要があります。

 重大な責任事故、特に死傷者が出る場合、加害者は被害者との補償交渉の資格を持たず、法によって裁かれることになり、その加害者は犯罪者または容疑者となります。

 政府が公的権力を用いて意図的に国民を危害する行為を行い、生命や財産への損害を引き起こす場合、行政的な訴訟の成立はともかく、事件の性質上、その政府は刑事付帯民事責任を負う必要があり、同時にその政党の継続または交代を決める民意の審判を受けなければなりません。

 では、今回の河北省で発生した洪水災害は、どのような責任事故に該当するのでしょうか?中国当局はどのような責任を負うべきでしょうか?当局の行動を見る限り、この災害は完全に巨大な人災です。

 台風が接近する際、中国当局の最高指示は、北京と雄安新区を守るために洪水を放水することであり、河北省の党委員会書記も公然と「首都の守りに堅く立つ」と発言しました。

 当局の計画は、北京と雄安新区の安全を確保するために被災地の国民の生命と財産を意図的に犠牲にすることにあります。放水の是非を別として、中国当局が自ら現代的な緊急事態対応能力の持ち主と自負していますが、台風が接近し放水が行われる前には十分な時間があり、住民を安全な地域に避難させて被害を最小限に抑えることは完全に可能であったはずです。

 驚くべきことに、当局は住民を避難させる意図がまったくなく、放水も予告なく行い、逆に放水を阻止しようとした市民を逮捕するなどの行動を取っていました。その結果、一般市民は大災害が迫っていることをまったく知らされないままでした。

 洪水が都市や町村を襲い、人々が助けを求めて絶叫する中、常に「人民を親とする」と称している党の幹部たちは、驚くべき静寂の中に姿を消していました。実際には、彼らは電力や水道、インターネットを遮断し、政府要員を保護するために奮闘していたのです。

 一方、他の地域からの救援隊が到着した際には、招聘状の提示が求められ、救援資格の有無が問われるなど、救援活動が妨げられました。一部の救援隊は失望して引き返すしかない状況に直面しました。これらが災害への対応を難しくしました。

 このようにして、放水により河北省保定市などの地域が水浸しになりました。家屋や車両、人畜、工場などが洪水によって流されたり埋もれたりし、その数は数えきれないほどです。とりわけ、涿州市だけでも死者が10万人以上に達すると地元の人々が推定しています。これは史上稀に見る大規模な洪水災害を引き起こしました。洪水が引いた後、災害地域の生存者は家を失い、飢えや不安の中で暮らし、悲嘆の声が広がりました。

この状況下で、中国軍と党幹部たちが次々と姿を現し始めましたが、彼らの目的はあくまでショーや宣伝活動でした。しかし、その行動は国民によって真相が暴かれ、演じることができなくなると、中央テレビが明確に放水ではなく、台風の集中豪雨が洪水を引き起こしたと報道し、民衆の抗議を招きました。

 国民の怒りがますます高まる中、当局は急遽被災者への補償を約束しました。しかし、奇妙なことに、当局は警察を各災害地域の交差点に配置し、警戒態勢を取っています。これが災害救援の一環なのか、それとも社会の安定を維持するためなのか、言わなくても分るでしょう。

 今回の洪水災害おいて、中国当局は被災地の市民に避難をさせず、通知や警告を出さず、救援措置を講じなかったことが、この特大事故の主な原因となっています。これは明白な中国共産党政権による人災であり、中国当局は全責任と最大限の責任を負うべきです。

 また、中国当局が被災地の人々に重大な生命と財産の損失をもたらしたため、刑事付帯民事責任を負わなければなりません。同時に民意による審判の前で、中国当局はすでに執政する資格がなく、何よりも補償の問題について話す資格もなく、国民に対して謝罪し、法的な制裁を受け入れるべきです。故意の殺人犯は罪を償わねばならず、繰り返し故意の殺人を行う政府は、解散して崩壊する以外に選択肢はありません。このような政府には、被害者との交渉や賠償について話す資格はありません。

 しかし、現在もなお中国共産党は政権を保持しており、被災地が救援を切望している重要な時期において、救援活動を怠るばかりか、さらには水害対策で大きな成果を収めたと突然発表し、恥知らずの極みを見せています。

 国民の怒りの中で、中国当局は被災者への損害賠償を約束せざるを得ませんでしたが、果たして本当にその損害賠償を実行できるのでしょうか?

 まず何よりも、中国当局はそれを補償する能力を持ちません。現在、中国国内の経済は崩壊寸前で、財政は赤字に陥っています。被害者の巨額な財産を補償する余裕がない上、さらに、数十万人の命を補償することなど、その規模は想像を絶するものです。

 次に、中国当局は補償する意思すら見せていません。本来ならば、この災害を利用してショーを演じ、被災地が太平で繁栄しているかのような偽りの姿を外界に見せるつもりでした。しかしその計画は被災者によって真実が暴露され、面子が丸つぶれになりました。結果として、被災者は中国当局からを敵視される可能性が高いです。では、中国共産党は敵対者の損害を補償する意志があるのでしょうか?

 保定市政府の公式文書はこの点を裏付けています。保定市政府が8月11日に発表した文書によると、洪水で亡くなった人々の遺族には2万元(約40万円)、家屋が倒壊した農家には最大4万元(約80万円)、家屋が倒壊しなかった農家には5千元(約10万円)、作物が全滅した農家には1ムー(約666平方メートル)あたり9元(約180円)の補助金が支給されることが明示されています。

 驚くべきことに、世界第2位の経済大国である中国が、急に非常にケチな姿勢を見せ、さらに中国当局が認定する死者数が数十人にすぎないことから、洪水によって数十万人の命を失った被災者は一銭も補償されないことを意味しています。

現実的に中国共産党は被災者の損失を本当に補償する意思があるとは考えにくいでしょう。では、中国当局は今後どのような行動を取る可能性があるのでしょうか?中国共産党の歴史を振り返ると、2つの緊急対応策があることが分かります。1つは「柔軟策と強硬策を同時に実施する」ことです。つまり、微小な補償金をエサにして、国民に政府の責任を追及しないように強制することです。もう1つは、国民の声を封じ、真実を隠ぺいすることです。

 現在、中国当局はまさに1つ目の対応策を実行しており、国民に「私的な和解」を強制しようとしています。もし国民がこれを従わない場合、中国当局は凶暴な面を露にし、極端な手段をとる可能性があります。暴力行使や国民の沈黙化のために殺人さえ辞さない可能性も考えられます。

 中国には「官逼民反、民不得不反」という諺があります。これは政府が国民を限界まで追い詰めることで、国民が抵抗せざるを得ない状況を指しています。おそらく、歴史に繰り返し見られる反乱や大きな変革のドラマが、再び中国の大地で繰り広げられる可能性があるのかもしれません。

(翻訳・藍彧)