上海最大の中米移民仲介会社「外聯出国」のオーナー何梅(女性、54)が8月7日、上海警察に逮捕され、これまで取り扱ったすべての移民顧客データを提出するよう求められました。上海市公安局は10日、何梅など5人が不法な外国為替取引を行った疑いで捜査し、事件に関連する金額は億単位の人民元(約20億円)を超えていると発表しました。警察の発表によると、2016年以来、「外聯出国」は仲介サービスを提供する過程で、不法な外国為替取引を行い、国内で人民元を受け取り、海外で外貨を提供していたとされています。

公安当局が移民顧客の情報提供を要求

 公安当局が逮捕した何梅に対し、すべての顧客情報を提出するよう要求することは、移民手続きを行った人々の財産状況、身元、将来の動向を把握することに等しいのです。

 これは、どのような人々にとって大きな脅威となるのでしょうか?官僚や国営機関の幹部の家族が、密かに移民手続きを行い、資産を移転させた場合、不忠な表れと見なされます。研究機関、軍、政府プロジェクトを請け負うテクノロジー企業など、機密性の高い組織の従業員やその家族の場合も、不忠と見なされます。また、大手企業のオーナーが移民した場合、資金の流出や多くの人々の失業を引き起こす可能性があります。そのため、これらの人々が、現在、当局が取り締まろうとしている対象となっています。

「外聯出国」社

 公開情報によると、「外聯出国」は上海最大の移民仲介会社であり、海外移民、投資、教育などのサービスを提供しており、グリーンカードの申請数では8年連続で国内1位となっています。同社はアジア太平洋、北米、ヨーロッパ、オセアニアの主要都市に24の子会社や関連会社を持ち、中国内にも複数の都市に子会社を展開しています。また、アメリカにはペンシルバニア・コンベンション・センターやフィラデルフィアのコムキャスト本社、タイム・ワーナーなどを含む100以上の投資プロジェクトが存在します。

 同社は、「移住しない移民」というライフスタイルを提唱しています。つまり、移民手続きを行いますが、その国に居住しないことです。また、移民手続きがスピーディーにできることを宣伝しています。

 例えば、アメリカへの移住は最短2日でビザを取得することができ、オーストラリアへの移民は最短1日でビザを取得ができ、カナダへの移民は最短1ヶ月でバンクーバーに入国ができます。また、ヨーロッパの投資ビザは最短5日で取得することができるとされています。

 「移住しない移民」というのは、外国のパスポートを取得しながら、中国でお金を稼ぎ、何か問題が起きた際にはいつでも国外に逃れることができるということです。要するに、「外聯出国」が主に対象としているのは、中国の富裕層、家族が海外に移住している「裸官」、中国と海外のビジネスで成功している商人などです。富裕層は自身だけでなく、資産も海外に移していることが多いのです。

 多くの国の移民ビザには投資や起業移民があり、移民仲介業者は顧客の資産を海外に移す手助けをする必要があります。そのため、上海警察が外国為替の不法売買で告発したのも無理はありません。

何梅が逮捕される内幕

 民間からは、何梅の逮捕に関するさらなる内幕が明らかにされています。

 中国の元メディア関係者である趙蘭健は、ツイッターで「中国最大の移民仲介のオーナーが逮捕された。20年に遡って捜査することで、すべての移民手続きを行った汚職官僚や富豪の情報が調査されるだろう。移民仲介業者とその顧客は壊滅的な打撃を受けることになる。海外に逃げたが、国内にまだ膨大な資産を持っている人は今回、もうおしまいだ。出所不明の莫大な財産は、政府の支出を維持するために、当局によって没収される」とツイートしました。

移民を阻止する理由

 有名な経済・金融ブロガー「老蛮(ろうまん)」は、中国の半数以上の移民仲介業者が資金の転送サービスを提供しており、特に地下銀行の金融業者への取引の紹介や資金移転を行っていると述べました。これらの行為は、調査されていなかったときには問題とされていないのですが、マネーロンダリングと移民仲介業者が厳密に調査される今では、移民手続きを行った富裕層や中国共産党の権力者たちが、「クロ」でないケースは一人もいないでしょう。

 中国当局は常に外国為替取引を厳格に管理しており、特に「私的」な外国為替取引には容赦ない姿勢を取っています。しかしながら、中国からは未だに多額の資金が地下銀行などを経由して転送されています。2016年には、中国メディアがその年だけで9000億元(約18兆元)が中国から流出したと報じました。

 近年、中国を離れる富裕層がますます増えています。ロンドンの投資移民コンサルティング会社であるヘンリー・コンサルティングが6月に発表した、「2013年中国私人財富報告」によると、今年、1万3500人の百万長者が中国から海外への移住を見越しているとされています。

中国からの資金流出

 中国から資金を海外に移送させる方法は主に3つあります。

一、仮想通貨

 最近では、国際的な資金移動手段として仮想通貨が注目を集めています。この方法では、中国国内の暗号通貨取引所を利用して電子通貨を購入し、その後海外で合法的に銀行口座を開設し、海外の仮想通貨取引所でビットコインなどを売却して、その資金を海外の銀行口座に送金するという流れです。

 二、偽造取引

 この種の偽造取引は、必ずしも偽の取引ではなく、実際に商品などの移転が行われている場合もありますが、目的は資金の移動です。
例えば、2015年に中国の大都市で深刻な大気汚染が問題となり、中国はカナダから空気を輸入することがありました。カナダから輸入した空気の缶詰が当時話題になりました。1缶あたりの容量は7.7リットルで、価格は約100元(約2000円)でした。中国の購入者はコスト、手数料、税金などを差し引いた後、利益をカナダの指定口座に入金し、このように合法的な貿易の形で資金を海外に移動させることが行われました。なお、中国の購入者は確かに空気を詰めた缶詰を受け取っています。

 三、国際送金プラットフォーム

 オンライン上の国際送金プラットフォームの登場により、資金の転送がより簡単に行えるようになりました。例えば、あなたのビジネスパートナーがオンラインショップをいくつか展開し、極めて低コストで海外の特産品を販売し、その価格を実際の価値よりもはるかに高く設定します。あなたは定期的にオンラインで購入することで、資金を海外に送金する仕組みです。こうした購入によって得られる収益は、合法的なビジネス活動の利益と見なされ、その後何らかの方法で海外のあなたの口座に送金されます。

 中国共産党中央党校の蔡霞元教授は8月9日、ツイッターで「中国の情報筋情報によると、警察は何梅に対し、数十年にわたる移民手続きを行ったすべての顧客情報を提出するよう求めているとのこと。同情報筋は、グリーンカードを申請中、または米国のパスポートを持つ中国人に対し、自身の安全を考慮し、直ちに中国を離れるか、またはしばらく中国に戻らないようにするよう忠告している」とツイートしました。

(翻訳・藍彧)