2023年に入ってから、世界各国は新型コロナから徐々に回復しつつある。しかし、中国と日本では、中小企業の倒産が増加しており、コロナ下の時よりも深刻という思いがけない現象が現れた。

 2020年以来、日本政府は国内の中小企業を支援するために「ゼロゼロ融資(新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組み)」を実施した。これによって、多くの中小企業は3年間のコロナ禍を乗り越えることができた。一方、経済産業省によると、民間の「ゼロゼロ融資」の債務返済が2023年7月から2024年4月にかけて集中することがわかった。しかし、物価、電気、ガス料金の値上げや人手不足などが原因で、多くの企業が赤字になっている。そのため、債務を返済できず、破産申請をする企業が続出している。

 また、元々競争力を失い、市場から撤退すべきだった企業の中には、「ゼロゼロ融資」のおかげで、一時的な生き残りを果たしたものもある。しかし、政府などの公的機関の援助が薄くなっていくと、これらの企業は再び倒産の危機に直面しなければならない。

 東京商工リサーチによると、「ゼロゼロ融資」の返済開始がピークを迎えた7月の全国企業倒産は758 件に達し、前年同期比53.44%増となったという。また、倒産件数は、2022年4月から16カ月連続で前年同月を上回ったことが分かった。

 一方、中国でも中小企業の倒産が相次いでいる。中国のネット上で出回っている情報によると、中国で上半期に倒産した民間企業は504万社に上るという。この数字は確認されていないが、ネット上に出回っている多くの動画によると、全国各地で民間企業が相次いで倒産しているのは事実であると分かった。しかし、中国の問題は日本よりずっと複雑だ。

 日本も含めて世界の多くの国は高いインフレ率と戦っている中、中国はまったく異なる問題に直面している。それは潜在的なデフレーションである。

 公式データによると、中国の2023年6月の消費者物価指数は昨年同月比でほとんど上昇せず、変動の大きい食品とエネルギー業界を除くと、インフレ率は年間0.4%に過ぎなかった。同時に、生産者物価指数 (せいさんしゃぶっかしすう)は前年同月比で大幅に5.4%下落した。商品価格の下落は消費者にとっては嬉しいことのようだが、企業にとっては利益が低くなるだけである。さらに人々は価格の下落を見れば、来週か来月にはより安い価格で購入できると知っているので、消費を遅らせる可能性が高くなる。そうなれば、企業の存続はますます厳しくなる。

 また、中国の経済回復は経済的な要因だけでなく、政治的な要因も影響している。新型コロナが拡大して以来、中国当局は厳しい「ゼロ・コロナ」政策を実施したため、企業の生産は非常に不安定となっていた。地元政府は企業が全く備えのない状況でいつでも操業停止を要求することができる。これにより、多くの中小企業は海外からの受注を失った。これらの受注が一度失われると、短期間で回復することはほぼ不可能である。これが2022年末に中国当局が「ゼロ・コロナ」政策を一転したとしても、受注がなく倒産する企業が続出する理由である。

 さらに、中国の人権、南シナ海での紛争、ロシア・ウクライナ戦争などの問題により、国際社会で多くの中国の製品に対するボイコットが起こっている。

 このほか、中国で頻繁に発生する自然災害も各地の企業に影響を与えている。中国応急管理部が発表した2023年7月の全国自然災害状況によると、7月には洪水、台風、地質災害、干ばつなどが主要な自然災害で、これらの災害は合計で約1601.8万人にさまざまな程度の被害をもたらした。直接的な経済損失は411.8億元(約8204億円)に達したという。

 中国と日本は、経済の回復にまだまだ道のりは長いが、中国の道はより険しいものがあると言えるだろう。

(翻訳・吉原木子)