中国では先月、新しい「反スパイ法」を実施し始めた後、全国各地でスパイの摘発が広がっている。中国河南省の地方警察署はこのほど、国民同士が互いに摘発するよう呼びかける映像を撮影し、スパイ容疑者を「歩ける50万」と呼んでいる。

 河南省桐柏県の公安当局が投稿した映像には、公安の制服を着た女性警察官が、身近に潜伏しているスパイを積極的に探すよう呼びかけ、摘発に成功すれば、最大50万元(約1000万円)の報奨金がもらえると強調している。

 多くのネットユーザーは、当局が国民に密告を促す行為は人々の信頼関係を壊し、人間の悪を増幅させ、お金のために手段を選ばない人々も現れるかもしれないと批判した。

 近年、中国では悪意のある密告事件が増加している。2019年7月、成都電子科技大学のある学生は、論文が先生に却下されたことに不満を抱いて、故意に罠を仕掛けて、先生を怒らせ、過激な発言を引き出してから密告した。2021年、湖南都市学院の教師である李剣氏は授業中に「日本人はりっぱな上にもいっそうりっぱにする」と言っただけで、学生に密告された。2023年3月、南京航空航天大学の陳賽彬先生は、授業中に「不適切」な発言で学生に密告された。

 一部の分析家は、中国では近年、新型コロナ、経済の低迷、天災や人災が相次いでいる。多くの国民は不満を抱えている。そのため、友人や同僚に、またはオンライン上で愚痴をこぼすかもしれない。しかし、これは中国当局に許されていないことだ。したがって、政府は高額な報奨金を用いて、国民同士が監視し合うよう仕向け、いわゆる「過激な発言」があるとすぐにスパイとして密告される可能性があると分析した。

 近年、中国当局の専制統治がますます北朝鮮に近づいており、中国は北朝鮮の西側に位置しているため、ますます多くの中国人が中国を「西朝鮮」と自嘲している。

(翻訳・吉原木子)