今年、中国各地の寺院は賑わいを見せ、寺院のある観光地へのチケット予約者の半数以上が若者でした。同時に、中国では宝くじも飛ぶように売れています。

 データによると、昨年と比べて、今年の寺院を訪れる人の数が4倍以上に増加し、宝くじの売り上げもここ10年で最高水準に跳ね上がっています。

 一方、これとは対照的に、4月の若者の失業率は20.4%と過去最高を記録しました。様々な指標は、中国当局の「ゼロコロナ」政策の緩和に伴う景気回復が勢いを失いつつあることを示唆しています。

 中国経済の低迷により失業率が上昇している中、若者たちは仕事や昇進よりも寺院を訪れ、お参りをすることを選択しています。若者たちが寺院の繁盛を支える力となっています。

 また、宝くじの人気も、人々の失望と無力感を反映しており、中国経済が長年抱える根本的な問題が再び表面化していることを示しています。

 富裕層や投資家は特定の銘柄株式を買い漁っています。峨眉山(がびさん)の運営会社「アーメイシャン・ツーリズム(峨眉山旅遊股份有限公司)」と九華山(きゅうかさん)の運営会社「アンキ・キュウカサン・ツーリズム・ディベロップメント(安徽九華山旅遊発展股分有限公司)」の株価が急騰しています。この二つの山のいずれも、中国の仏教の聖地であり、中国で最も有名な仏教遺跡の一つで、毎年数百万人もの観光客が寺院を訪れています。スポーツくじの事業を展開する国有上場企業である「中国体育産業集団」の株価も連続して上昇しています。

 特定の業界の収益は、市場全体とは異なる動きを見せています。中国の主要な株価指数である上海・深圳のCIS300指数は、昨年11月に再び上昇し始めたものの、その後、大部分の上昇幅を取り戻しています。その原因は、経済の回復が予想に達せず、地政学的な緊張状況が悪化したことによるものです。

 一方、富裕層はより安全な投資に移行しており、債券の大量購入や貯蓄の増加などが見られます。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の中国語版5月30日の報道では、中国経済の回復勢いの低下がより深刻な経済的な困窮を明らかにしていると指摘しました。ここ10数年、経済成長の推進力となってきた不動産業の繁栄と政府の過剰投資は、過去のものとなっています。家庭や地方政府は巨額の債務に苦しんでおり、将来に不安を抱える一部の家庭は現金を蓄えています。

 さらに、中国と西側の関係悪化は、外国からの投資を阻害しています。中国当局が国際的なデューデリジェンス及びコンサルティング会社に対する新たな措置を取っていることは、この関係の悪化の証拠となっています。

 一部のエコノミストは、これらの悪化し続ける構造的な問題が中国の経済成長を妨げていると指摘しています。中国の年間経済成長率は、過去によく見られた6〜8%の成長水準ではなく、近いうちに2%または3%にまで低下する可能性があります。人口の高齢化と労働力の減少も、中国経済の苦境に拍車をかけています。

 HSBCホールディングスのアジア経済調査共同責任者フレデリック・ノイマン氏は、中国の景気回復が期待外れであることは、確かにいくつかの構造的な抵抗力が働いていることを示唆していると述べました。

 中国の経済成長の重要なエンジンであった投資と輸出が低迷していることから、今年の大きな期待のひとつは、国民が消費を大幅に増やすことでした。しかし、3年近く続いた「ゼロコロナ」の厳しい封鎖政策が解除された後、国民の消費は増加しましたが、他の国がパンデミックの影響から脱却した際に見られたような急激な消費の急増は中国では起こっていません。

 消費者の意欲の低さは一因ですが、より重要なのは、北京当局が長年にわたり中国人の消費よりも貯蓄を優先するという習慣を変えることができていないことです。このような習慣は、ある程度は社会保障制度の脆弱さに起因しており、家庭は医療費やその他の緊急事態に備えてより多くのお金を蓄えなければならないということです。

(翻訳・藍彧)