中国の電気自動車(EV)「愛馳汽車(Aiways)」が倒産の危機に瀕していると伝えられた後、同社の上海本部テナントビルは完全に空っぽとなり、各階の入口が施錠されていると、中国メディア「第一財経」の報道で分かりました。

 ビルの管理業者によると、愛馳汽車はすでに1週間以上も休業しており、オフィスも貸し出されているとのことです。

 愛馳汽車の内部関係者によると、同社がオフィスの賃貸料、管理費、水道光熱費を支払えないため、従業員は現在、在宅勤務状態にあり、「実質には休暇中」であると、「第一財経」が報じました。

 また、同社のサーバーも料金未払いにより停止され、サーバーに依存している愛馳汽車の公式アプリも現在、正常に作動してない状態です。

 中国メディア4月の報道によると、「他社が毎月10日に前月分の給与を支払うのに対し、愛馳汽車は10日に給与が遅延する通知をメールで送っている」とのことです。愛馳汽車は数か月間にわたり従業員への給与支払いを滞らせており、同社が給与遅配で注目を集めるのは、分かっているだけでも今回が4回目であるとのことです。

 同社の社員によると、愛馳汽車は社員の労働契約を自動車販売会社に変更し、社会保険を自己負担させ、会社が「後で返金する」と言ったとのことです。しかし、法律専門家は、この行為が違法である可能性があると指摘しました。

 複数のメディアによると、今年に入ってから、愛馳汽車のオフィスビル周辺では、多くのサプライヤーが未払いの債務を求るために横断幕を掲げる事件が多発しており、社員の退職が相次ぎ、労働契約権をめぐる紛争まで起こっています。

 愛馳汽車は2017年に設立され、これまでに9回の資金調達を実施しました。出資者には、中国テック大手のテンセント(騰訊控股)や車載電池大手のCATL(寧徳時代)などの有名企業が並んでいます。現在は、「愛馳U5(Aiways・U5)」と「愛馳U6(Aiways・U6)」の2車種だけを発売しています。

 同社は2020年6月に正式に納車を開始して以降、年間3000台前後を販売してきました。しかし、2023年に入ってからは販売台数が急激に減少し、1月は29台、2月は26台、3月は37台で、3カ月合わせても100台に届かない数字となりました。
 
著名なEVメーカー、相次ぎ倒産

 最近、中国のEVメーカーの倒産および破綻事件が頻発しています。

 愛馳汽車に先立ち、15年の歴史を持つ新興マイクロEVメーカー「雷丁汽車(レティン)」が倒産したと、複数のメディアが報じました。

 2012年に創業した「雷丁汽車」は、かつては低速EVのトップ企業でした。2016年から2018年にかけて、それぞれ15万、21万、28.7万台の販売実績を残し、年間売上高は120億元(約2343億円)を突破しました。これらの輝かしい成績により、雷丁汽車は中国市場の3割を占め、3年連続で低速EVの販売台数の1位を獲得しました。

 しかし、その過程で、雷丁汽車は自身の問題点を露呈し始めました。同社の2021年の販売台数は約3万台にとどまり、2022年は2万台にも届きませんでした。背景には製品の競争力不足に加えて、同社の資金繰りの悪化があったとみられます。

 さらに、雷丁汽車のコア技術不足により新製品の開発が遅れ、品質も不安定であり、問題が山積みであったため、低速車から高速車への転換は不可能でした。これが雷丁汽車の没落を促しました。

 倒産した他の中国EVブランドには、2013年11月に設立されたスタートアップの「漢騰汽車(ハンテンオート)」がありました。

 中国の複数メディアの2022年4月20日付け報道によると、漢騰汽車は2022年4月25日までに破産再編手続きを終えて、第1期工場を中国大手自動車メーカーである「長城汽車(グレート・ウォール・モーター)」に売却しました。

 しかし、長城汽車も12年間の赤字経営を経験した後、2022年7月に裁判所によって破産再編が承認されました。

 また、EVを開発・製造するベンチャー企業「游侠汽車(ユーシャ・モーター)」は2015年に設立され、巨額の資金提供を受けたものの、その後の5年間において一台の電気自動車も生産できず、工場の休業や大規模な解雇、賃金未払いなどの不祥事が繰り返し報じられました。同社はまだ正式に倒産を宣言していないにもかかわらず、会社の株式はすでに全面凍結されています。

 新エネルギー車(NEV)メーカーの「雲度新能源汽車(ユンドゥ・ニュー・エナジー)」も同様に2015年に設立されましたが、コア技術や競争力の不足により徐々に低迷し、社内の幹部が続々と退職し、株主も次々と撤退し、企業の資金チェーンが断裂しました。雲度新能源汽車はまだ倒産を公式に認めていませんが、会社はすでに債務超過で完全に停止しています。

 2016年に創業した中国の新興EVメーカーの「拜騰汽車(バイトン)」は、予定していた5億ドル(約571億円)の資金調達に失敗して経営が回らなくなり、2020年6月末から事業活動の停止を余儀なくされ、2021年に倒産を宣言しました。
 
中国におけるEVの異常な発展

 中国のEV市場の発展には、「大躍進」の痕跡が見られます。EVの生産を奨励するため、中国当局は2010年に自動車の購入補助金を導入し、2012年にメーカーに高額の補助金を提供し始めました。走行距離250キロメートルに達する純電気自動車の場合、メーカーは政府から最大6万元(約120万円)の補助金を受け取ることができます。走行距離が80キロメートルしかない純電気自動車でも、メーカーは3.5万元(約70万円)の補助金を受け取ることができます。

 これにより、中国のEV産業は短期間で急速に拡大しましたが、補助金の不正受給問題が浮上しました。

 中国当局の財政部は2016年、40.1万台の新エネルギー車を審査した結果、補助金を不正受給した新エネ車メーカーを90社以上確認したと報告しました。例えば、蘇州市のあるメーカーは、自動車を1台も生産せずに5億元以上の補助金を不正受給していました。
 
電気自動車の墓場

 一連の補助金政策の刺激により、中国のEVメーカーの数とEV車の生産量は急増しました。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、2022年には中国でEVを生産する企業は300社を超え、年間生産台数は705.8万台に達しました。中国のEVの生産量は8年連続で世界一に輝いていました。しかし、中国のEVメーカーはEV生産のためのキーテクノロジーを掌握していません。

 車載用バッテリーなどのキーテクノロジーを掌握していないため、中国製のEVは国際市場で競争力に欠けています。

 今年3月、広州市、重慶市、杭州市などの大都市郊外で、多くの「新エネルギー車の墓場」が現れました。数千台もの新エネルギー車が広大な土地を占めて、長期間にわたりそのまま放置されています。一部の車は防塵用ビニールシートも取り外されていない新車です。

中国のEV産業は、半導体チップ産業の後を追い、行き詰まりの道をたどっているようです。

(翻訳・藍彧)