(イメージ:看中国/Vision Times Japan)

 私たちが何気なく使っている漢字は、実に不思議な力を持っています、今回は次の3つについて取り上げてみたいと思います。

一、 情報を明確に伝達する素晴らしい力

 例えば、「こんき」と言われたら、何を思い浮かべますか?

 結婚適齢期の女性は自分の「婚期」を考え、社長であれば「今季」の収益が気になり、受験生だと「根気よく頑張ろう」と思うかもしれません。

 また、「はしをとってください」と言われたら、「橋を撮ってください」なのか、「箸を取ってください」なのか、平仮名だけでは、はっきり分かりません。
しかし、漢字を書けば一目瞭然となります。

 「うらむ」という言葉を漢字で表す場合、「恨む」、「怨む」、「憾む」等がありますが、その時の自分の気持ちはどれに当たるでしょうか?
このように、漢字は私達の複雑な感情を正確に表現してくれるのです。

二、 未来を予測する不思議な力

 このような中国の昔話があります。

 ある若者が科挙試験を受ける前に、「測字」(部首やつくり、画数等を用いて吉凶を占うこと)をしました。その場にもう1人の若者もいました。

 若者は「串」という字を書き、それを見た占い師は、「あなたは連続して試験に合格するでしょう。「串」には「中」が二つもありますから(「中」は合格の意味がある)、おめでとうございます! おめでとうございます!」と祝ってくれました。

 もう1人の若者は真似をして、同じく「串」と書きました。すると、占い師は「あなたは落第ですね。しかも、大病になるでしょう」と、悪い結果を告げました。

 若者は納得が行かず、「同じ文字を選んだのに、どうして結果がこんなにも違うのですか」と聞くと、占い師は「1人目の人は何も考えずに『串』と書きました。『下心』がありません。ですから「中」が二回重ねて来るという良い結果になりました。しかし、あなたは下心がありました。『串』の下に心があれば、『患う』となりますね。だから、あなたは病気になるでしょう」と言いました。結局、2人とも占いの結果通りになりました。

 中国の伝統文化は「天人合一」と言う宇宙観に基づいており、漢字も同じように、易や陰陽、五行に通じ、天、地、人、物、事等の複雑な情報を反映する特性を持っていると考えられています。長い歴史の中で、漢字は何度も変化を遂げて来ましたが、そのような内包が消えることはありません。それは中国古代に「測字術」が生まれた理由でもあるのです。

三、 人間としての道理を教えてくれる力

 漢字はそれぞれの部首、形、発音などには意味があり、私達に様々なメッセージを伝えてくれています。

 例えば、「徳」と言う文字は、「彳」の部分と「十」+「目」+「心」からなっていますが、それは十方世界から人の心を見つめている、つまりは「人は物事を行い、神様はそれを見逃さない」と言う意味になります。

 「信」と言う文字は、「亻」の部分と「言」からなっています。つまり、人間が発した言葉は信用、信義、信実のあるもので、偽りのないものでなければならないという事を表しています。

 「怒」と言う文字は、「奴」と「心」からなっていますが、それは人間の心が魔性にコントロールされ、魔性の奴隷となってしまった状態のことを意味します

 「休」と言う文字は、人間が体を棒のようにして心身共に休息することを表し、また「臭い」は「自我」、「自分」が大きくなり過ぎると、傲慢に、横柄になるため、「人間はだめになってしまうのよ」と戒めてくれているのです……。

 このような例が沢山あるので、興味のある方はぜひ自分でも調べてみて下さい。心を静め、耳を傾けてみれば、漢字はきっと私達に多くの事を語ってくれるでしょう。もっと漢字を大切に感じて、漢字の奥深い世界を楽しみましょう。

(文・一心)