アイルランドのダブリン市にあるサミュエル・ベケット橋(Neuköllner, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

  アイルランドの移民投資家プログラムが、2012年に開始されてから10年、1000人以上の大富豪がアイルランドの永住権を取得した。そのうち9割以上が中国人だった。

 移民投資家プログラムは、欧州連合(EU)圏外の富裕層が老人ホームや公営住宅などの地域インフラに投資することを奨励するために、2012年にアイルランド政府によって正式に開始されたプログラムだ。海外の富裕層は、投資を通じて永住権を取得し、一定の条件を満たした後にアイルランドの市民権を申請することができる。

 現地メディアのNewstalk(ニューストーク)が10月14日に発表した最新のデータによると、世界中から1400人の大富豪がアイルランドに投資しており、そのうち94%が中国人であることが分かった。

 それに比べて、米国からの投資家は約1割で、ベトナムからは9人、サウジアラビアからは5人となっている。ロシア出身の投資家も3人いるが、ロシアによるウクライナに対する侵攻戦争が始まった後、アイルランドの司法省はロシア人の申請を受け付けないと発表した。

 移民投資家プログラムでは、申請者の素行が良好で犯罪記録がなく、純資産は少なくとも200万ユーロであることを要求している。このプログラムにより、投資家は通常6ヶ月以内に永住権を取得でき、配偶者や25歳以下の子供をアイルランドに呼び寄せ、就労や就学をさせることができる。アイルランドで年間24時間滞在するだけで、5年後に移住のための居住要件を満たすことができる。

 アイルランドと同様、ヨーロッパ諸国でも投資誘致のため、資格のある申請者に居住権(市民権)を与える国が多くあるが、近年は身元調査を厳しくする声が高まっている。

 アイルランドの左派の野党シン・フェイン党は今年6月、投資型移民制度の停止を求めた。

 今年3月、アイルランドの欧州議会議員13人を含む欧州議会議員の過半数が、加盟国がゴールデンパスポート制度を廃止することに賛成し、ゴールデンビザの申請者の身元調査を厳格に行うよう求めた。「ゴールデンパスポート」は、投資によって市民権を得ることを指す。EUの組織がこれらの制度を批判し、廃止しようとしたのは今回が初めてではない。2019年に入り、欧州委員会は加盟国に対し、投資によってパスポートを取得する非EU市民に対する身元調査を強化するよう求める報告書を発表した。

(翻訳・藍彧)