チェコ共和国、デチンのエルベ川にある飢餓石(Norbert Kaiser, CC BY-SA 3.0 DE , via Wikimedia Commons)

 今年の夏、欧州が深刻な干ばつに見舞われていた。ヨーロッパのいくつかの川底でここ数ヶ月、文字や数字が刻まれた非常に珍しい石が相次いで出現した。これらの石は昔の人々が川底に残した飢餓を警告する碑文「ハンガー・ストーン(飢餓石)」であることを知った人々は驚いた。

 2022年の夏、ヨーロッパのほとんどの地域で過去500年以来の最悪の干ばつが発生した。欧州干ばつ観測所(EDO)のデータによると、欧州域内の47%で土壌が水分不足となっている「警告レベル」にあり、17%で植生がストレスを受ける「警戒レベル」に達している(2022年8月19日時点)。あまりの暑さに多くの農作物が枯れ、多くの川の水位が下がったため、「ハンガー・ストーン」が相次いで姿を現した。

 ハンガーストーンとは中世ヨーロッパで一般的だった水文学的遺物で、干ばつが起きた際に警告文を刻んだ石を川底へ埋め込み、将来の干ばつでこの石が見えた時に警告を発するというもの。主にドイツやその他ヨーロッパ諸国のドイツ人入植者によって作られており、中には20世紀以降に作られたものも存在している。

 最も有名なハンガーストーンは、チェコ北部のデチェン市内のエルベ川で見つかった12個の石である。チェコのマサリク大学らの研究チームが2013年5月に発表した研究論文によると、「ハンガーストーン」は1616年に作られたとみられる。「私を見たら泣け」を意味する文がドイツ語で刻まれており、干ばつによって凶作となり、食料不足や物価高、飢餓がもたらされることを警告している。

「私を見たら泣け」を意味するドイツ語の文字(Norbert Kaiser, CC BY-SA 3.0 DE , via Wikimedia Commons)

 これらのハンガー・ストーンは一般に日付が刻まれており、今見ることができる最も古いものは1616年のものである。1900年以前に起こった干ばつとして、1417年、1616年、1707年、1746年、1790年、1800年、1811年、1830年、1842年、1868年、1892年、1893年が記録されている。最近では、2018年8月にも「ハンガーストーン」が出現した。

 中央ヨーロッパの川には、過去の干ばつを記録した石が何十個も置かれている。 エルベ川に多く見られるが、ライン川やドナウ川などでも石は見られる。

 数百年来、川底に堆積したこれらの石が顔を出すと、食糧不足、さらには飢餓の日々が来ることを予告していることが多い。ロシアによるウクライナへの侵攻や、世界の気候異変を背景に、食糧問題は近い将来、人類が直面しなければならない厳しい試練であるように思われる。

 昔の人々が災害や疫病などに見舞われた時、後世の人々に向けた警告を碑文などに残すことがあり、日本でも津波を警告する碑文などが東北地方の沿岸部などに残されている。 

(翻訳・藍彧)