安倍晋三元首相(Prime Minister of Japan Official, CC BY 4.0, via Wikimedia Commons)

 中国四川省の女性医師・徐可佳氏が12日、個人のウィーチャット(微信、WeChat)で「安倍氏の死去に哀悼の意を示す」という内容を投稿したため、「愛国ネットユーザー」によって通報され、中国共産党(以下、中共)政府から厳しい処分を受けたことが明らかになった。

 四川省瀘州市公安局納渓区(のうけいく)支局は12日、徐医師がウィーチャットのモーメンツ(タイムライン相当)で「不適切な言論」を発信し「社会に悪影響を与えた」とし、その行為が「騒動挑発罪」に当たり、行政拘留5日間を科されるという通達を発表した。

 13日、中共公式メディアが同事件を報じた際、徐医師が安倍元首相を弔ったために拘留されたことには触れず、徐医師の以前のウェイボー(微博、Weibo)での「醜い中国人」「劣等民族」などの発言を大々的に取り上げた。

 実際、削除される前の徐医師のウェイボーアカウントのスクリーンショットによると、これらのコメントは、中国広東省英徳市(えいとくし)の洪水の際、「英徳」をイギリス(中国語「英国」)とドイツ(中国語「徳国」)と勘違いした一部の中国人「愛国ネットユーザー」がネット上でほくそ笑んでいたからだという。これに対して徐医師は、「英徳は広東省清遠市に位置する英徳市であり、イギリスでもドイツでもない。中国では、欧米日韓が災害に見舞われるたびに、一部の人が災難を喜ぶ。中国人、醜い中国人、劣等民族は滅びるべきだ!」とモーメンツで書き込んだ。

 現在、徐医師は中国国内のネットから姿を消され、「好医師」などの医療サイトも徐医師に関する紹介が削除された。

 安倍元首相の銃殺事件を受け、中国外交部の趙立堅報道官は記者会見で「一部の中国人が安倍氏の銃殺を私的行為として祝っているが、政府とは関係がない」と発言した。さらに、日本のジャーナリストの取材を受けた北京の名門大学の教授は「一部の中国人が安倍氏の銃殺を祝うのは、まさに中国の言論の自由を反映したものだ」と発言した。安倍氏の銃殺を祝ったのは、民衆の自発的な行為であり、本当に中共政権が意図的に仕組んだものではなかったのか。中国には本当に言論の自由があるのか。その答えは、徐医師の一件から得られるのではないか。

(翻訳・徳永木里子)