孫立平(そん・りつへい)氏(Twitterより)

 中国経済の不況によって、より多くのチャンスとよりよい資源が富裕層と権力者の子供の手に握られ、貧困層や農村家庭の出身者はますます出世が難しくなっている。中国の著名な社会問題専門家である孫立平(そん・りつへい)氏は、「共同富裕」は「共同貧困」になり、結果として、さらに極端化が起こると述べた。

 ウォール・ストリート・ジャーナル15日の報道によると、中国での富裕層や政治的人脈が厚いエリート層の子供たちがより多くの機会と資源を独占しており、貧しい家庭や農村出身の子供たちの出世はより困難であるという。

 シンガポール国立大学と香港中文大学の研究者が発表した論文によると、1980年代に中国社会の底辺の家庭に生まれた子供たちは1970年代に生まれた子供より出世の可能性が低いことが分かった。学者たちはこれを「世代間貧困の罠の拡大」と呼んでいる。

 世界銀行(World Bank)のエコノミストによると、中国の社会的流動性が失速している。特に女性や貧困地域がもっとも深刻であるという。

 社会的流動性の失速につれて、中国で不平等が深刻化している。1978年、中国の所得上位10%の人口と下位50%の人口は、それぞれ全国総収入の4分の1を占めていた。世界銀行のデータによると、2018年までに、所得上位10%の人口が総収入の40%以上に達し、所得下位50%の人口が総収入の15%未満となっている。2020年には、中国の最も裕福な1%が、全国の富の約30%を占めていた。

 イギリス人のルパート・フーゲワーフ氏が中国で創立した民間シンクタンク「胡潤研究院」のデータによると、昨年、世界の億万長者番付の新人の半数以上が中国出身で、中国は米国を抜いて世界で初めて1000人以上の億万長者を有する国となった。一方、李克強総理は昨年、中国で6億人(人口の40%以上)が月平均1000元(約1.8万円)未満の収入を得ているとも述べている。

 習近平主席が最近提出した「共同富裕」は広範な討論を引き起こし、経済学者の張維迎(ちょう・いげい)氏は、「共同富裕」は最終的に「共同貧困」になると直言した。

 清華大学社会学科の孫立平教授は、共同富裕は最終的に共同貧困をもたらすと称する学者がいるが、共同貧困の特徴は平等主義的な「大鍋飯(ダーゴーファン」(注1)である。しかし、大鍋飯と言っても、一つの鍋ではなく、いくつかの鍋があり、しかも大鍋飯のほか、特別料理があるのは、中国では既に経験したことである。つまり、大鍋飯や平等主義が普遍的に存在すると同時に、明らかに深刻な社会的不平等も存在していると述べた。

 同氏はまた、世界には、普遍的貧困は存在しないと述べた。どの貧しい国も普遍的貧困ということではなく、貧困であればあるほど、貧富の差が大きいということである。従って、「共同富裕」は「共同貧困」をもたらし、結果として、貧困の上で貧富の差を極端化すると指摘した。

 注1:元々大躍進の時代に農民が農村食堂へ行って食べることを指していた。現在は機械的に均等の待遇を受けることを意味している。

(翻訳・吉原木子)