(出典:科兴公司Webサイト)

 中国ではこのほど、新規感染者が増加し続けている。17億回分のワクチンを接種したにもかかわらず、なぜ「デルタ変異種」を防げないのかと疑問視されている。専門家は、中国で感染が急増しているのは、ワクチンの防御力が低いことや、不活化技術を用いたワクチンは他のワクチンと比べて抗体の濃度が低いことが原因だと述べた。

 香港大学の疫学者ベンジャミン・カウリング氏、ガブリエル・レオン氏、及びウイルス学者マリク・ピーリス氏が医学誌『ランセット微生物』に発表した論文によると、独ビオンテックワクチン(BNT)とシノバックワクチンの有効性を分析した結果、合計93人の被験者のうち63人はBNTワクチンを接種し、1回目の接種で、抗体濃度が「著しく」増加し、2回目の接種でも同様な効果が見られたと判明した。計算上で中和抗体価の幾何平均値は90%以上が113となった。

 シノバックのワクチンを接種した残りの30人の被験者は、同様な方法で統計され、1回目の接種後に、抗体濃度が「極めて低い」と示され、2回目の接種後には「中程度のレベルまでわずかに上昇した。中和抗体価の幾何平均値は90%が8.4であり、BNTワクチン接種者の抗体濃度はシノバック接種者の13倍以上であることを示している。また、ウイルス増殖抑制効果は、シノバックの1回目の接種では0%に近く、2回目の接種で初めて60%近くまで上昇したのに対し、BNTの効果は、1回目の接種で65%、2回目の接種で95%と大きな差があった。

 毒物学者で中原大学生物学部の准教授である招名威氏は、「不活化ワクチンの欠点は、変異種ウイルスに対し、体内の免疫システムがウイルスの変種を識別できず、効果が限られている。そのため、中国では17億回分の接種が実施され、ほとんどの人が1回目の接種を受けたにもかかわらず、感染の急速な拡大により、不活化ワクチンはデルタ株に抵抗できない」と結論づけた。

(翻訳・徳永木里子)