ラスコー洞窟壁画(イメージ:Wikimedia Commons / パブリック・ドメイン)

 20世紀に入ってから、ヨーロッパにおいて、洞窟壁画が相次いで発見されました。その中にはフランスの「ラスコー洞窟」、「ショーヴェ洞窟」、スペインの「アルタミラ洞窟」等が有名で、それらの壁画が描かれたのは約3.5万年前から1万年前だと思われています。

ラスコー洞窟

 ラスコー洞窟は、フランスの西南部ドルドーニュ県、ヴェゼール渓谷の南東の丘の上に位置しており、1940年9月12日、村の少年らが穴に落ちた飼い犬を救出した際に発見したものです。洞窟の全長は200メートル程で、洞窟の側面と天井面には、数百もの馬、山羊、羊、野牛、鹿、カモシカ、人間、幾何学模様の彩画、刻線画が描かれており、人間の手形が500点も押されています。これらの壁画は約2万年前の後期旧石器時代に描かれたものだと言われています。

ラスコー洞窟壁画(イメージ:Wikimedia Commons / パブリック・ドメイン)

ショーヴェ洞窟

 ショーヴェ洞窟は、フランス南部アルデシュ県のヴァロン=ポン=ダルク (Vallon-Pont-d’Arc) 付近にあり、1994年12月18日に3人の洞穴学者によって発見されました。ショーヴェ洞窟は発見者のChauvetさん に因んで名づけられました。ショーヴェ洞窟壁画には、現在判明しているだけで260点の動物画があり、描かれている動物は、現在、ヨーロッパでは既に絶滅した野生の牛、馬、サイ、ライオン、鹿など13種類もあり、約3.2万年前に描かれたものだと考えられています。

ショーヴェ洞窟壁画(イメージ:Wikimedia Commons / パブリック・ドメイン)

 アルタミラ洞窟

 アルタミラ洞窟は、スペイン北部、カンタブリア州の州都サンタンデルから西へ30キロメートルほどのサンティリャーナ・デル・マル近郊にあります。

 アルタミラ洞窟壁画は、野牛、イノシシ、馬、トナカイなどの動物を中心に描かれており、約1.8万年〜1万年前のものだと考えられています。

アルタミラ洞窟壁画(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 アルタミラ洞窟壁画は、1879年にこの地の領主であり、法律家で、アマチュアの考古学者でもあるマルセリーノ・サンス・デ・サウトゥオラ侯爵(Marcelino Sanz de Sautuola)の5歳の娘マリアによって偶然に発見されたものです。しかし、旧石器時代の壁画であるとの侯爵の考えは、当時の学界から否定されました。侯爵が亡くなった15年後の1900年に入ると、科学的な調査が進み、ようやく、これらの洞窟壁画は間違いなく旧石器時代のものだと確認されました。

 これらの壁画は、いずれも生き生きと力強く描かれ、動物が躍動感に溢れ、迫力があり、とても魅力的で芸術性の高いものと思われ、旧石器時代の人が描いたものとはとても思えません。一体、これらの壁画は何時の時代に、誰が、何の目的で描いたものなのか、謎が深まるばかりです。

 ダーウィンの進化論の推計によれば、人類は文化と思想を持つ現代人類に進化してから1万年しか経っていないはずです。1万年前の人類はまだ旧石器時代に当たり、主に石を道具として使っていました。当時の人々は、何故これだけ芸術性の高い壁画を描くことができ、加えて、長い年月が経過しても、鮮やかな色が保たれる顔料を使えたのだろうか、と疑問を持つ人も多いかと思います。

 もし、先史文明という概念で考えれば、その疑問が容易に解かれます。先史文明の考えでは、人類の文明が一回だけではなく、それが輪廻しており、毎回人類の文明が崩壊してから、僅かな人が生き残り、少しの先史文明が残され、そして、新たな人類が生まれ、次の文明期に入るということです。聖書に書かれたノアの箱舟と大洪水も中国の歴史書にある大禹の治水の話も、人類の文明が大洪水によって完全に壊されたことを記しています。

 これらの洞窟壁画は今回の文明のものではなく、先史文明の痕跡でしょうか?皆さんはこの問題について、どのようにお考えですか?

(文・一心)