「看中国」は世界各地で新聞を発行しているが、ここ日本においても「真の中国の姿を知りたい」という人々の声は高まる一方だ。日本の有識者は、いまや大国となった中国をどのように捉えているのだろうか?看中国日本(Vision Times Japan)は、中国の抱える様々な問題について専門家に意見を伺い、日本と中国の関係について鋭い評論を紹介したいと考えている。

今回インタビューを試みたのは、中国の人権問題に関する著書もあるジャーナリスト・野村旗守氏だ。彼は言論の世界のみにとどまることなく、多方面で社会活動を行っていることでも知られており、Vision Times Japanはぜひ詳しく話を聞きたいと考えていた。今回お届けする記事では中国共産党が抱える問題についてお伝えする。

看中国記者:野村さんは、これまでも著書「中国は崩壊しない」をはじめとして中国共産党の現状を鋭く分析されてきました。実際に、同書の中で「中国の若者は(党から利益を得るために)共産党に入党する」と指摘していますね。その一方、最近では一部報道機関が中共からの脱党者がついに3億人を突破したと報じています。この状況をどうご覧になりますか。

野村旗守氏(以下、野村):かつて7,400万人いたと言われている共産党員は、現在は9,000万人まで増えていると言われています。一方、一部のマスコミが報道するように、脱党者が増加しているのも事実でしょう。

看中国記者:では、中国人は共産党についてどのように考えているのでしょうか。また、中国人に心境の変化があったと思われますか?

野村:私は「民主主義」に目覚めた中国人が増加している点に注目しています。最近では、観光で日本を訪れる中国人が増えているだけでなく、日本に帰化する中国人も多くなっています。日本での生活を経験した中国人は、「共産党が言っている日本と自分が経験した日本は全然違うではないか」と気付くのです。そして、やがて「中国よりも日本の方が暮らしやすい」と考えるようになります。

看中国記者:それでも共産党に入党を希望する中国人は増えている訳ですよね。いったい何が中国人を共産党に向かわせるのでしょうか?

野村:中国本土での金儲けのことを考えるなら、共産党員という身分は非常に有利なのです。そのため若い世代を中心に入党を希望する者は絶えず、今後も減ることはないと思います。しかしながら、以前と異なり、中国人の意識は変わりつつあります。中国共産党という組織を心から信望している中国人はいまや少数派となりました。党を利用して既に十分な利益を得た人や、外国籍を取得できた一部の中国人は、共産党を見限り脱党していく傾向が見られます。上流階層を中心にこうした傾向は今後も続いていくでしょう。

看中国記者:中国共産党は自国民に対する監視を強めていますし、習近平国家主席は更なる権力の集中を図っているとの指摘もあります。ビジネスの面は別として、中国の国民は党による支配をどう感じているのでしょうか。

野村:数十年前まで、中国国民の多くが「中国はやがて民主化されるだろう」と言っていました。しかし現在、その民主化の兆候はほとんど見られなくなっています。「金盾」と呼ばれるインターネット統制のためのファイアウォールに加え、ウイグル等の地域では、住民全員に精密血液検査が強制されているなどの調査報告もあります。さらに政権側は国民に向けて「中国は世界一の偉大な国である」というプロパガンダを流しており、中華思想を植え付けられた中国の国民は正常な思考能力を奪われてしまったのです。

そこで台頭してきたのが、「金儲けのためなら何をやっても許される」というイデオロギーです。長い歴史と高度な文明を有していた中国の国民が、こうした考えに支配されてしまっているのは大変嘆かわしいことです。

看中国記者:「金儲けのためなら何をやっても許される」とは、具体的にはどういった事ですか。

野村:中国共産党政権による「臓器狩り」がその典型です。諸説ありますが、中国共産党は臓器を収奪するため、最大で年間10万人以上の自国民を殺害していると言われています。
「臓器狩り」という行為は、利益のために人々を虐殺する「営利虐殺」です。人々がカネのために殺されるなどという事態は、近代の歴史を振り返っても前代未聞です。

看中国記者:そうした行為が本当に行われているとは驚きです。信じられない日本人も多いと思いますが。

野村:私も、デービット・キルガーとデービット・マタスによる著書「中国臓器狩り」(アスペクト社)を読むまでは同じような認識でした。詳しくは同書を参照して頂きたいのですが、中国の政府が臓器を摘出するために自国民を虐殺した明らかな証拠があるのです。中国の隣国たる日本はこの問題に無関係ではいられません。また、時には隣国に対しても「悪いことは悪い」と遠慮せずに言わなくてはなりません。

繰り返しますが、臓器狩り問題に見られるように、中国共産党は「金儲けのためなら何をやっても許される」というイデオロギーに支配されています。これは中国人にとっても大変不幸なことです。このような現状を日本国民だけでなく世界の人々にもっと知ってほしいですね。

看中国記者:野村さんは中国の人権問題に対して、今後どのような活動を行っていく予定ですか?

野村:私が事務局長を務める「中国における臓器移植を考える会(SMGネットワーク)」およびその傘下の「SMG地方議員の会」では、インターネットを中心にこうした問題を広くお伝えしているほか、日本の地方議員たちによる「医療ツーリズム」に関する意見書の採択についても知恵を出し、この問題が政治的な問題として取り上げられるよう様々な支援活動を行っています。今後は「中国臓器狩り」に関するポスターを作成し、議員を中心に配布するなどして、この問題を日本全体に訴えていく予定です。

(今野秀樹)