中国の李強総理は、今年の全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(全国政協)の政府業務報告の中で、債務危機と経済減速に対処するため、今年から数年連続で超長期特別国債を発行することに言及しました。

 満期が10年以上の国債は「超長期国債」と呼ばれます。超長期国債は普通国債に比べ、債務返済の負担やプレッシャーを軽減することができます。また、「特別国債」とは、特定の目的のために発行され、明確な用途を持つ国債です。李強氏の政府業務報告によると、今回言及された超長期特別国債の目的は、経済の持続的な回復を促進することです。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙3月7日の報道によると、中国当局は今年、1兆元(約20兆円)の超長期特別国債を発行する計画です。この動きは地方政府の負担を軽減する一方で、中央政府の負債負担をより重くさせることになります。

 中国の金融情報サービス大手・万得信息技術(ウインド)によると、2023年末まで、地方政府の未返済有利子債務残高は5.5兆米ドル(約800兆円)です。ただし、この数字は公表された債務のみであり、地方政府の膨大な隠れた債務は含まれていません。

超長期特別国債

 中国当局はこれまで、超長期特別国債を3回発行したことがあります。

 一度目は1998年、アジア金融危機(アジア通貨危機)の拡大に対処するため、中国当局が国有の四大銀行に向けて2700億元(約5.5兆円)の特別国債を発行しました。

 二度目は2007年、当時の世界金融危機に対処するため、中国当局が15500億元(約32兆円)の特別国債を発行しました。

 三度目は2020年、新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)のパンデミックに深刻な打撃を受け、コロナ禍に対処するため、中国当局が1兆元(約20兆円)の特別国債を発行しました。

 三回の特別国債の発行は、いずれも中国が重大な経済危機に見舞われた、あるいは経済危機の衝撃を受けた後に行われました。中国当局は、現在の中国経済が大きな危機に直面しているかどうかに触れていないが、特別国債の発行を通じて、中国当局が現在直面している経済的苦境がどれほど深刻であるかがうかがえます。

 李強氏が述べたように、このような超長期特別国債の発行に頼れば、中国経済を回復させることができるのでしょうか?明らかに、中国当局さえもそれを信じていません。

金融機関の破綻危機

 最近、中国の中央銀行(中国人民銀行)が重要な通知を発表しました。その核心内容は、各商業銀行が預金を受け入れる際、預金者に預金の金利、期間(満期)、リスクなどに関する情報を明確に知らせる必要があるというものです。

 中国の大手銀行はすべて国有銀行であり、中国国民はこれらの銀行が破綻することはないと信じているため、これらの銀行に預金を預けるのにリスクが伴うことについて考える人はいません。しかし、中央銀行の新しい通知では、預金者が預金のリスクを考慮する必要があると明確に指摘されています。これは、中国当局が必要な場合には国有銀行の破綻を容認する可能性があるということを意味しているのでしょうか?

 中国の国有銀行が現在破綻の危機に瀕しているかどうかは、外部の人間にはわかりません。しかし、現在複数の国有銀行ではすでに預金者が銀行から引き出す額を制限しています。

 あるネットユーザーが3月1日、ウェイボ(微博)で、中国建設銀行で送金する際、銀行カードからの引き出せる額が制限されていると投稿しました。銀行のスタッフは、中国当局の厳格な金融管理の要請を受け、銀行が一定期間内で、預金者の引き出し額を集計した後、預金者に通常の引き出し額の上限を自動的に設定する自動プログラムを設定した、と説明しました。

 たとえば、ある預金者の通常の引き出し額が1万元以下の場合、このプログラムはその預金者の引き出し上限額を1万元に設定します。通常の引き出し額が千元以下の場合は、上限額が千元に設定されます。銀行は預金者に上限額を設定したことを通知せず、預金者がその上限を超えて引き出しをしようとしたときに初めて、自分に設定された上限額がいくらであるかを知ることになります。預金者が自分の引き出し限度額を引き上げたい場合は、さまざまな証明書を用意した上で銀行に行って手続きを行う必要があります。しかし、手続きの更新は3か月に1回しか申請できず、1回の申請で1つのレベルしか引き上げることができません。

 中国農業銀行のある預金者が、現在1日に引き出せる金額が500元に制限されていると述べました。一部のネットユーザーは、すべての商業銀行が取り付け騒ぎを防ぐためにこのような措置をとっており、金融システムは今にも崩壊しそうだと投稿しました。

 在米華人エコノミストの李恒青氏は以前、「大紀元時報」とのインタビューで、中国の銀行システムはすでに多くの問題があり、今は取り付け騒ぎの発生だけがまだ起きていない状況で、それが発生すれば、銀行が破綻するだろうと述べました。

 しかし、中国当局は、民主主義国家が採用しない特別な手段を使って金融危機の発生を防ぐでしょう。例えば、支配を維持するために国民の利益を犠牲にすることです。

大規模な預金凍結

 中国当局は1978年までに4回の大規模な預金凍結を行いました。

 一度目は1950年11月です。中国当局は数十万もの軍隊を朝鮮半島に派遣した後、物価上昇の圧力を緩和するため、政府機関、軍隊、団体の預金を1ヶ月間凍結しました。当時、米国は中国の朝鮮戦争への参戦を抑制するため、中国に対して全面的な貿易禁止を行っていました。報復として、中国当局は米国政府、企業、個人の中国におけるすべての預金を凍結しました。1979年以降、中国当局は凍結された米国の個人および政府の中国における資産の元本のみを返還し、利息は支払われていませんでした。

 二度目は1960年12月です。中国当局は170億元(約3500億円)の財政赤字を解消するために貨幣を増発し、インフレを引き起こしました。中国当局は銀行預金の凍結を命じ、資金源が国家の規定に違反しているという理由で多額の預金を没収しました。

 三度目は1968年2月です。文化大革命によって全国的に政治・経済が混乱し、財政赤字が引き起こされました。当時、中国当局は全国で79億元(約1600億円)の預金を凍結しました。

 四度目は1976年10月です。10年間の文化大革命によって政府の財政がほぼ完全に破綻しそうになった時、中国当局は緊急措置として銀行預金を凍結しました。それによって、財政赤字の拡大を減速させ、市場における商品供給の緊張を和らげることができました。

 中国当局が政府の財政を正常に維持できなくなった場合、銀行預金を凍結することは必然的な選択肢になっているようです。

(翻訳・藍彧)