中国天津市は昨年秋に財政危機を迎えました。最近、天津市の負債比率が500%に達し、財政破綻したというニュースが再び伝えられ、ネットユーザーの間で熱い議論が巻き起こっています。

天津市の財政破綻が再び話題に

 2022年末に天津市の共産党書記に就任した中央政治局委員の陳敏爾(ちん びんじ)は就任後三つの措置を発表しました。1)公務員の附加積立金(附加積立金は天津独自のもので、平均的な会社員の収入よりも多い)の支給を停止する。2)公務員の成果給を大幅に削減する。3)財政支出を削減するために公務員をスリム化する。

 これは以前重慶でも行われ、公務員の選択肢は耐えるか辞職するかでした。 陳書記は就任後の最初の会議で、天津市の負債比率は500%に達し、すでに財政破綻していると指摘し、最初にメスを入れるのは公務員の給与であると述べました。

 この情報は2022年末に海外のSNSで伝えられましたが、あまりにも衝撃的だったため、当時は誰も信じようとしませんでした。 最近、SNS「X」で再びこのことが言及され、ネットユーザーの間で熱い議論が巻き起こっています。

 ネットユーザーからは様々なコメントが寄せられています。

 「天津は中国でも最悪の都市で、平均的な二線都市よりも劣り、成都にも及ばない。成都は少なくともアグリツーリズムやインターネットに力を入れているが、天津は公務員だらけだ。人々の思惟はまだ文化大革命時代から抜け出しておらず、一日中政治の話ばかりで、経済にはまったく関心がない。公務員の職をたくさん設け、自分たちのことしか頭になく、中央政府に金を要求するだけだ」

 「今や、国にとって公務員にかかるコストは、まるで癌のような存在で、国全体の栄養を吸い上げて、国を死に至らしめるようなものだ。私は十数年も前からこれに気づいた」

 「天津だけでなく、全国の8割の都市が破綻している」

天津  昨年秋の「ショック」

 昨年来、天津市の財政資金が枯渇し、2022年以降、天津市の学校、政府機関および一部の公務員が給与の未払いや減額に苦しんでいると度々報じられました。2023年以降は、さらに多額の給与未払いが発生しています。

 中国のネット上では、天津市の公務員給与の未払いが度々伝えられています。昨年3月以来、天津市公共交通集団の給与未払い問題は、市のQ&Aプラットフォームでも取り上げられています。 「天津市政府と市民との交流」掲示板には3月14日、「天津公共交通集団は毎月25日が給料日だが、今は翌月の15日まで遅れている 」というメッセージが残されていました。

 2023年6月5日と8月23日、天津公共交通集団が給与と積立金を支払っていないため、従業員は住宅ローンを組めないとのメッセージが書き込まれました。

 2023年9月、天津市バスの運転手を名乗る人物がSNSに、2023年6月から、天津公共交通集団は賃金を支払っておらず、従業員保険も停止していると投稿しました。

 中国メディア『界面新聞』が昨年9月13日にこのことを報道し、天津市バスの運転手の家族が、「今年6月から現在まで、給料が支払われておらず、医療保険も停止されており、2022年8月の社会保険も支払われていない 」と述べたと報じました。

 また、「大皖新聞」は、天津公共交通集団の顧客サービス部門従業員によると、市バスの運転手だけでなく、顧客サービス部門も含め、多くの従業員の賃金が支払われていないと報じました。 この従業員は、天津公共交通集団に勤めて10年目になるが、ここ2年間は賃金の支払いが遅れることが多いといいます。

 このほか、昨年9月、事情に詳しい天津の有名な企業家は、ラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材に対し、天津市の財政はとっくに破綻しており、税金を増収するしかないため、企業はその負担に耐えられないと語りました。さらに、政府の末端幹部の企業への揺りはますますひどくなっているといいます。

 中国の元ジャーナリスト、趙蘭健氏によると、天津市河北区政府は昨年3月から給与支払いのために地元の寺(大悲院)から数億元の借金をしていたそうです。7月まで何とか持ちこたえましたが、再度財政難に陥り、再び大悲院に借り入れを申し入れたものの拒否されたといいます。

 昨年9月、天津のバス運転手の賃金未払い事件は数日にわたり騒がれ、ネットユーザーによって天津の「秋のショック」と表現されました。

 あるネットユーザーは、「中国共産党の体制下で、直轄市である天津市は、比較的多くの利益を得ることができたが、2020年の天津市のGDPは依然として全国トップ10から脱落した。天津市はすでに衰退し、直轄市としての地位は剥奪されるべきだ」と示しました。

政府高官の責任は免れない

 「天津の財政破綻」に対して、独立評論家の蔡慎坤(さいしんこん)氏は2月27日の文章で、「天津の巨額の債務に対して誰が責任を取るべきか?真っ先に矢面に立つべきなのは、絶対的な忠誠を叫んでいた李鴻忠(りこうちゅう)だろう。李鴻忠は天津市共産党委員会書記を6年間も務め、政治業績を上げるために、政府の負債をひたすら増やし、天津市に莫大な負債を残した」と指摘しています。

 粤開証券の2023年4月のマクロ研究報告書によると、近年、天津市の債務問題が頻繁に市場の懸念を引き起こし、主に債務率の高さ、債務構造の不均衡が際立っています。2022年、天津市政府債務残高は8,645.5億元に達し、債務比率は295.1%で全国1位となりました。

 報告書によると、債務残高の構造から見ると、天津市の特別債務が占める割合が比較的高く、2022年の特別債務残高は6650.8億元(約14兆円)に達し、天津市の地方政府債務残高の76.9%を占め、全国2位となりました。 しかし、特別プロジェクトの収入はわずか14.8億元(約310億円)で、特別債務残高の0.2%でした。

 蔡慎坤氏の文章によると、天津市政府の負債は2兆6000億元(約54兆円)を超えているが、一般公共予算の年間収入は2000億元(約4兆2000億円)に過ぎません。

 李鴻忠の前は、元中央政治局常務委員の張高麗が2007年から2012年まで天津市の党書記を務めていました。 在任中、張高麗は建設に大々的に投資し、多くの不良プロジェクトを残しました。

 一方、天津市党書記に就任した陳敏爾(ちん びんじ)は、天津市の財政破綻の責任を取りたくないため、わざと天津市が破綻したという情報を流したという見方もあります。

 蔡慎坤氏の文章によると、陳敏爾は貴州と重慶で責任者を務めていた時も莫大な負債を残しており、それが後任者の頭痛の種になっているといいます。

(翻訳・銀河)