不動産市場の低迷、消費者信頼の低下、輸出の不振により、中国経済は現在、デフレ状態に陥っています。一部のエコノミストは、中国経済が債務とデフレの悪循環に陥るのではないかと懸念しています。
 また、中国特有の「豚肉経済学」も中国経済の悪化を示唆しています。

中国特有の「豚肉経済学」について

 カナダ在住のユーチューバーである文昭氏は、自身のユーチューブチャンネルで、豚肉の価格は中国経済を観察する上で特に重要な指標であり、そのため中国では「豚肉経済学」という言葉があると述べました。

 土地、飼料、文化などさまざまな影響を受けて、豚肉は、中国人が動物性タンパク質を得るための主要な源の一つとなっています。中国の豚肉消費量は世界全体の約50%を占めています。そのため、豚肉の価格は中国の消費者物価指数(CPI)にとって非常に重要です。かつては、中国のCPIにおける豚肉の割合は最大で10%に達していました。中国の統計局は近年、CPIに占める豚肉の割合を2%前後に調整しているが、それでも豚肉を上回る商品は他にありませんでした。

 豚肉価格の下落は、物価全体が下落する兆候であり、豚肉価格の継続的な下落は中国経済全体でのデフレの兆候です。通常、中国の旧正月前には需要が増加するため、豚肉価格が上昇し、旧正月明けに価格が再び下がる傾向があります。しかし、例年とは異なり、今年の旧正月前には、豚肉価格が大幅に下落しました。

 中国のメディアによると、今年1月の第3週に、中国の豚肉の平均価格は前年同期比で16.5%下落しました。別の報道によると、2022年から始まったこの豚肉価格の下落は比較的長期間続くとされています。

 文昭氏は、今年の中国における豚肉の供給量と価格を分析した結果、今年の豚肉価格下落の原因は豚肉の供給過剰ではなく、むしろ消費者の購買力不足にあると結論付けました。したがって、今年の豚肉価格の下落は、今年の中国経済の暗い見通しを示唆していると言えます。

 文昭氏は、中国経済の衰退状況をもっと分かりやすくするために、中国が改革開放を行ったばかりの1984年を参考にして説明を行いました。

 1984年、中国の一人当たりの肉類消費量は12キログラムであり、その大部分が豚肉でした。2022年、中国の一人当たりの豚肉消費量は26キログラムであり、1984年の約2倍以上です。もし2024年に、中国の一人当たりの豚肉消費量が半分に減少した場合、中国人の生活が1984年の水準に戻ったと言えるでしょう。

中国の融資増加率が史上最低水準に低下

 ブルームバーグ1月12日の報道によると、需要の低迷により、中国の融資は、昨年12月に増加ペースが過去最低となりました。中国人民銀行(中央銀行)のデータによると、人民元建ての融資は同月に10.4%増加し、2003年以来の最低増加率でした。

 エコノミストの予測は1.4兆元(約30兆円)でしたが、中国の金融機関は当月、新規融資が1.2兆元(約25兆円)にとどまりました。そのため、外部では、中国中央銀行がさらなる緩和的な金融政策を採る必要があると見られており、中央銀行が銀行金利をすぐに引き下げるだろうと予想されています。

中国1月CPI、09年以来の大幅下落

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙1月12日の報道によると、中国の消費者物価指数(CPI)は2023年12月までに、すでに3か月連続で下落し、2009年以来最長のデフレ状態が発生しました。この持続的なデフレの圧力の下で、中国当局は経済の再建に重大な課題に直面しています。

 物価の下落は企業の収入減少をもたらし、それによって賃金や利益に悪影響を与える可能性があります。また、デフレは債務負担を増大させ、消費者が緊急に必要でない商品の購入を先延ばしにする可能性があります。

 中国国家統計局が2月8日発表した1月のCPIは前年比0.8%下落し、4カ月連続のマイナスとなりました。生産者物価指数(PPI)も下落し、デフレ圧力の強さを示しました。

 過去25年間で最低のインフレ率に対し、資産運用会社のピンポイント・アセット・マネジメント(保銀資本管理)の首席エコノミストである張智威(ちょうちい)氏は、「CPIは中国が持続的なデフレ圧力に直面していることを示している。消費者の間にデフレ期待が定着するリスクを回避するため、中国は迅速かつ積極的に行動を起こす必要がある」とし、不動産市場が経済を引き続き悩ませると述べました。

 2024年1月のCPIは前年比2.5%下落し、下落率は前月の2.7%、市場予想の2.6%よりわずかに低くなりました。前月比では0.2%下落、12月は0.3%下落しました。

 また、中国のデフレは、他国との貿易摩擦の拡大につながり、内需低迷の結果、企業が余剰商品を海外に売ることになります。

 欧州連合(EU)は昨年の秋、中国がEU市場に廉価な電気自動車をダンピングしているとして非難し、中国の電気自動車企業に国家補助金を提供していることについて中国政府に対する調査を開始しました。

 イギリスの調査会社アブソリュート・ストラテジー・リサーチのエコノミスト、アダム・ウルフ氏は、「中国における持続的なデフレや極めて低いインフレは、中国の対外貿易黒字の拡大や他国との貿易摩擦の激化につながる可能性がある」と述べました。

 昨年の中国の対外輸出は、世界的な各種商品の需要低迷により、2016年以来初めての減少となりました。2023年、中国の輸出額は3.38兆ドル(約507兆円)で、前年比4.6%減少しました。これにより、中国経済成長の強力な支柱を弱体化させました。

中国経済は悪循環に陥るか

 中国国家統計局が1月12日に発表したデータによると、昨年12月のCPIは前年同月比で0.3%下落し、11月の0.5%から減少しました。変動の激しい食品とエネルギー価格を除いたコアインフレ率は前年比0.4%上昇と、12月の0.6%上昇から減速しました。

 これに対し、多くのエコノミストは、デフレ圧力が逆転するのは難しいと考えています。

 フランスのソシエテ・ジェネラル銀行のアジア太平洋地域・中国チーフエコノミストである姚煒(ケリー・ヤオ)氏は、2024年末までに中国のCPI上昇率が1%まで回復する可能性があるものの、物価の下落圧力がすぐに緩和されることはないと予想し、同銀行の見解では、内需の低迷が引き起こす中国のデフレ圧力はかなり長期間続く可能性があると述べました。

 一部のエコノミストは、中国が債務とデフレの悪循環に陥る可能性を懸念しています。このような状況では、価格の下落が企業に賃金削減を促し、消費者が支出を控えることにつながり、結果的に需要がさらに低迷し、価格がさらに下がるという悪循環に陥ると考えられます。

 シティバンクのエコノミストは、先月発表した顧客向けの報告書で、デフレ懸念の影響を受けて、中国が今年第2四半期から政策金利の引き下げに踏み切る可能性があると述べました。

 報告書の中には次のように書かれました。「政策を逡巡(しゅんじゅん)している時間はない。デフレ、信頼、および経済活動の間に生じる悪循環を防ぐ必要がある」

 オーストラリア・ニュージーランド銀行グループ(ANZ)の中華圏最高経営責任者チーフエコノミスト、レイモンド・ヨン(楊宇霆)氏は、「中国のデフレ圧力は依然として高い。企業は販売価格を引き下げ、労働者は求職時に賃金への期待値を自ら引き下げている」と述べました。

(翻訳・藍彧)