中国の不動産危機が勃発し、中国の中産階級の購買力が明らかに減少しました。中産階級を主なターゲットにした商品、例えば新型のアイフォーン、ピアノ、高級車、ブランド時計などの販売量が急落しています。

 2024年最初の週に、アップルの中国での販売量は、前年比で30%も大幅に減少しました。多くの電子商取引プラットフォームでの値下げに続き、1月15日にはアップル中国公式サイトが珍しく「春節限定セール」を行いました。アイフォーン、アイパッド、マックブックなど様々な製品が含まれており、中にはアイフォーンは最大500元(約1万円)、マックブックは最大800元(約1.6万円)の割引がありました。

 アメリカに本部を置く投資銀行ジェフリーズ(Jefferies)の報告書で、アップルが中国市場で大打撃を受けており、iPhone 15 ProやiPhone 15 Pro Maxを含む多くのモデルが中国の主要な電子商取引プラットフォームで大幅な値下げが行われ、これまでにないプロモーションが展開されたにもかかわらず、販売量の急落を食い止めることはできませんでしたと指摘しました。

 同時に、中国のピアノ業界も「氷河期」に入りました。

 20年以上にわたって中古ピアノの販売に携わってきた範さんは、2023年に中国のピアノ代理商やピアノ販売店の大半が倒産し、通常営業ができるのはごくわずかだと述べました。

 範さんによると、ピアノ業界の衰退は2019年から始まり、パンデミックの3年間は特に厳しかったが、2023年4月からはさらに悪化したとのことです。範さんの推測によると、「現在、以前の30%の販売量を維持できるのは、特に優れた販売店のみだ。平均的には約15%で、特に厳しい状況では以前の販売量の10%に過ぎず、さらに悪い場合は店を閉めるしかない」

 範さんは、この現象の主な原因として中産階級の所得減少と将来への希望の喪失の二つを挙げています。

 中国で最大のピアノ製造業者であり、世界最大のピアノ工場を有している広州珠江ピアノ集団(以下、珠江ピアノ)は昨年8月に公表した報告書で、昨年上半期の収入が前年比60.62%減少したことを明らかにしました。業績不振について、珠江ピアノは報告書で具体的な理由を述べていませんが、楽器市場の低迷、市場競争の激化、経済回復の遅れ、輸出貿易の継続的な低下を挙げています。

 ピアノ業界の下流に位置する音楽教育機関も苦境に立たされています。2022年初めの中国音楽教育機関は約65万校あったとされますが、年末までに約30%が閉鎖されました。

 アップルやピアノの他、高級車やブランド時計などの消費市場は崩壊に近づいています。特に中古の高級車と中古のブランド時計は、中産階級の主要な消費品です。

 中国メディア「爆角追跡」が1月15日に発表した記事で、現在の中国の高級車市場は、新車であれ中古車であれ、大幅な値下げにもかかわらず、販売量が大幅に減少していると明かしました。

 記事では、中古高級車市場は新車市場よりもさらに悲惨な状況で、車両が山積みになっており、すべてのブランドの価格が崩壊状態にあり、販売業者はもはや車を買い取ることを恐れ、委託販売のみを受け入れていると指摘しています。

 中古のブランド時計に関しても、2023年は市場が完全に崩壊し、5月から取引量が顕著に減少し、年末にかけて価格が急落し、半減したものが多く見られます。
中国の中産階級の崩壊は、不動産市場の暴落と、中国全体の経済危機と関連しています。

 不動産危機が勃発した後、多くの中国人の家庭資産が奪われ、ローンを背負った中産階級が借金まみれになりました。

 中国の不動産情報サービスプラットフォームによると、中古高級住宅市場は2023年、登録物量が増加し、登録価格が下落するという特徴があります。北京、上海、広州、深センの4大一線都市で、総価格1,000万元(約2億円)以上の中古住宅は、年間で1万4800戸取引され、前年比34%増加しました。このうち北京、上海、広州の高級住宅の掲載価格は、おおむね5%から15%ほど下がっています。

 北京、上海、広州、深センのような一線都市では、多くの家庭の主要資産は不動産です。これらの家庭の資産は、高い不動産価格に基づいています。不動産市場の不振に伴い、多くの不動産が価格を下げて販売されています。中産階級は貧困状態に陥っており、なぜなら、彼らの住宅はローンで購入されているからです。

 例えば、1,000万元の不動産があるとし、頭金は300万元(約6.1千万円)で、ローンは700万元(約1.4億円)です。しかし、この不動産が300万元下落し、700万元の価値しかなくなった場合、頭金は実質消失します。数千万元の資産を持っているとされる家庭は、最終的に700万元の負債を抱えることになります。万が一、買い手が失業したり給料が下がったりすると、ローンの返済がさらに難しくなります。このような恐怖と懸念が、中産階級が消費を控える原因となっています。

 一部の海外経済研究所によると、中国の不動産市場の危機は、この国の中産階級に深刻な打撃を与えています。家庭資産の70%が不動産と関係しており、不動産価格が5%下落するごとに、住宅資産は19兆元蒸発すると言われています。

 不動産価格の下落だけでなく、多くの中産階級は株式投資の縮小にも直面しています。上海総合指数は昨年10月下旬に3000を割り、今年1月上旬に2900を割り、1月18日に2800を割りました。

 一般的に、「中産階級」とは、良い教育を受け、専門知識を持ち、一定の職業能力と消費能力を持ち、安定した収入と良好な社会的地位を持つ社会集団のことを指します。

 中産階級は社会発展の安定力としての役割を果たしています。中産階級が多ければ多いほど、社会は安定します。逆に、中産階級が減少すると、社会の貧富の差が広がり、社会矛盾が続出することを意味します。

(翻訳・吉原木子)