西遊記(北京・頤和園の回廊絵画)(shizhao, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons)

 2023年の神韻芸術団の巡回公演の中で、『西遊記』を題材とした舞踊劇『経典を求めて朱紫国へ』が上演されました。公演では、それぞれの俳優たちの卓越した演技と演劇に込められた哲理によって、観客は素晴らしいパフォーマンスを楽しみながら、同時に多くのものを得ることができました。
 この舞踊劇は『西遊記』の第71回を題材にしています。この回では作者の呉承恩が、人類が病気に罹る原因について語っています――。

 さて、朱紫国の王は、王妃が三年間も妖怪に連れ去られていたため、昼夜悲しみのあまり病気になりました。告示を出して医者を募集した時、偶然朱紫国に来た唐僧の師弟の一行に出会ったのです。王が出した告示を見た孫悟空は、国王の病気を治しました。
 一見、すべてが何の変哲もなく、世間の常理に符合しているいきさつに見えます。しかし、観音菩薩が妖怪を捕まえに来た時、国王が病気になった理由である以前の原因を話しました。
 実は、朱紫国の王はまだ王子だった頃、狩猟が好きで、孔雀大明王菩薩が産んだ雌雄の二羽の雛を矢で射殺したことがありました。国王が病気に罹ったのは、二羽の雛を射殺した罪業を償うためだったのです。それから三年が経ち、贖罪が終了したタイミングで悟空が現れ、国王の病気を治し、さらに妖怪を捕まえるために観音菩薩はわざわざ現れました。もともと王妃を連れ去った妖怪は観音菩薩の乗り物でした――。

 『西遊記』は、現代人の言う「神話の物語」という形式で描かれています。無神論の角度から立って、神仏の天理と因果応報を否定すれば、『西遊記』の中の道理を全く理解できません。実際、『西遊記』はこの世の多くの迷いを解き明かしてきました。第71回では三つの真相を明らかにしました。

 一つ目は、人心が正しくなければ、妖怪を招いてしまうかもしれません。以前、王は孔雀の雛を射殺したことで、悪因を蒔いていたのです。
 二つ目に、国王が病気になったのは、王妃が妖怪にさらわれたことで、王は昼夜王妃を思い、悲しみから病んでしまいました。これは世の中の常理に符合するものですが、表面的な原因「王妃思い」が人々を迷わせ、この表面的な原因だけを見るようになり、深い原因「孔雀の雛を射殺した罪」を考えなくなってしまいます。
 三つ目は、国王が回復したのは、表面上は孫悟空が治したからということになっていますが、実際の真相は三年間の贖罪が終了し、孔雀の雛を射殺した罪業を完済したために、国王の病が治ったのです。

 この世は迷いの世なので、いかなる超常のものも、超常の表現をすることができず、常理に合った表現をしなければいけないので、人を迷わせるのです。
「瓜を植えれば瓜がなる、豆を植えれば豆がなる」という因果応報の諺があるように、この世のあらゆるものには原因と結果があります。良い原因を蒔けば、良い結果を得ることができます。悪い原因を蒔けば、悪い結果を得ることになります。
 中国五千年の伝統文化は、神仏が天理を創ったと信じられており、善良な生活を送り、至る所で善い結果を得るための種を蒔くよう人々に教育し、将来の人生に幸福をもたらす基礎を築くよう教えているのです。一方、中国共産党の党文化は明らかに偽、悪、闘で人々を惑わし、人の欲望を放縦し、闘争心を強め、至る所に悪い結果を招く種を蒔き、生命の未来に悪報や壊滅の基礎を築いています。
 三年間に渡る新型コロナウイルスの猛威。人々がその根本的な原因が見えないのは、神を信じない「無神論」を植え付けられ、欺かれたからなのです。上記の朱紫国の王の方法に従えば、人が苦しみを受け、罪業を償い終えれば、病気は自然と良くなるでしょう。しかし、これは一般的な罪業です。もし、より大きな、さらに邪悪な罪を犯してしまえば、最終的に償いきれず、その後に訪れる悪報はきわめて重大なものとなることでしょう。

 実は、伝統文化において別の方法もあります。それは徳を積むことで疫病を避けるのです。時代を超えて、徳を積むことの重要性を教え、それによってその後良い結果がもたらされた話もたくさんあります。
 清王朝期の劉奎の『松峰説疫』の中に記載されている話があります。
 ある日、街に疫病が大流行しました。ある白髪の老人が富豪に「薬を買って街の人々に与えるように」と教えました。するとその後、感染者が治癒しただけでなく、その富豪の一家全員も疫病から免れることができたという話です。
 その話によると、ある人が二人の疫病神が富豪の家の前を通りかかるのが見えました。そして、その二人の疫病神は互いに顔を見合わせ、「この富豪には無量の徳があり、善神に護られているのに、われわれはどうして入る勇気があろうか?」と言ったというのです。
 このことに対し、劉奎は「『無量の徳』こそが、本当に疫病を取り除く最善の治療法です。世の人は心して覚えるべきです」と言いました。

 人が病気になるのは悪因を蒔いたせいで、人間にとって災難ですが、解決策がないわけではありません。真相を理解し、問題の根源を突き止め、神仏を心に抱き、伝統文化を復興させ、真に善良な人になり、絶えず自己の思想境地を高めることができれば、人はだんだんと多くの福報を得られ、健康になり、円満で幸せな家庭を築くことができるでしょう。

出典:
『西遊記・第七十一回<行者仮名降怪犼 観音現象伏妖王>』
『松峰説疫・巻之一<述古>』

(文・平凡/翻訳・夜香木)