「裸官(らかん)」という言葉は2008年に誕生した造語です。裸官とは、中国で不正に資産をため込んで、妻子(時には愛人)と資産を米国、カナダなど先進国に移し、タイミングを見計らって本人も中国から逃げ出そうとする腐敗官僚・中国共産党員のことです。「裸官」の目的は投資ではなく、逃亡です。

 これまでの「裸官」全体の人数や不正蓄財・送金金額について、正式な統計はないが、中国社会科学院が2011年に発表した資料では、1990年代中期以降に海外逃亡した腐敗幹部の人数は「裸官」を含め1.8万人で、8000億元(約16兆円)を持ち出したとされます。

 初めて「裸官」と呼ばれ、代表とされるのは、龐家鈺(パンチァユ)・元陝西省政治協商会議副主席でした。その腐敗ぶりもさることながら、地方の名誉職にあった人物が、容易に不正蓄財を行い、国外逃亡を企てることのできるルートが確立されていることに、衝撃が走りました。

 中国当局は資金の流出を抑制するため、「裸官」を防ぐ対策を講じてきたが、これが一向に阻止されず、その外流資金の規模は膨大です。

 習近平政権は、腐敗撲滅に大鉈を振るい、「トラ(大物)もハエ(小物)も叩く」は、あまりに有名なスローガンとなりました。その一環として、「裸官」ら海外逃亡した犯罪者の身柄引き渡しと、送金された資金の返還を受け入れ国政府に求めようとするなど、追及の手が緩む気配はありません。

 広東省を例に挙げると、大規模な裸官取り締まりの取り組みで、1000人以上の裸官がリストアップされ、そのうち866人の裸官が職位を異動させられました。

 最近では、新たに一部の高官が暴露されています。例えば、四川省政治協商会議の楊克寧(ようこくねい)前副主席、中国の政策的貸付を行う政策性銀行である国家開発銀行の周清玉(しゅうせいぎょく)元副行長、青海省の駱玉林(らくぎょくりん)前副省長、江蘇省公安廳の左鎖粉(ささくふん)前党委副書記、重慶市の熊雪厳(ゆうせつげん)前副市長などが挙げられます。

 中国当局の捜査チームによると、これらの党幹部の多くは裸官または半裸官であることが調査で判明しました。彼らは、資産と家族や一部の親戚を海外に移し、引退するのに十分なお金を稼いだら、即座に海外に移住する計画を立てています。また、中には在職中の官僚が大金(たいきん)を持って海外に移住している者もいます。

なぜ裸官がこれほど多いのか?
 なぜ中国共産党にはこれほど多くの裸官がいるのでしょうか?それは、中国の官僚たちは、中国共産党が崩壊する危機に瀕していることを国民よりもよく知っており、これらの党幹部は、中国共産党と「一心同体」である者は一人もいないからです。

 なぜ中国共産党が随時に崩壊する危機に瀕しているのでしょうか?歴史的に見ると、政権が崩壊する際、多くの決定的な要因があるが、最も重要な要因の一つが人心の激変です。

 最近逮捕された中国高官のうち、公式が発表した罪状には中央当局を妄議(ぼうぎ)し、禁書を国内に持ち込み長期間にわたって閲覧することなどが含まれています。これらは本来、法的に保護されるべき国民の言論自由や知る権利が、中国共産党によって犯罪打撃の罪状と見なされてしまっています。これは一方で中国当局の法制度が非常に荒唐無稽であることを示し、他方で多くの中国の官僚が共産主義への信仰を喪失していることを示しています。

 官僚だけでなく、国内外の多くの中国人が中国共産党の崩壊に備えています。来年3月にはワシントンで初の「国是会議」が行われるため、多くの民主活動家が11月11日、米国のサンフランシスコで、「国是会議」の記者会見を開催しました。この会議では、中国共産党の暴政に終止符を打ち、民主的な中国を築くための過渡的な計画が協議されるそうです。

 これに呼応するように、習近平が米国のサンフランシスコに到着した11月14日、台湾、香港、チベット、民主活動家などの抗議団体が一斉に「共産党は退陣しろ」、「習近平は退陣しろ」、「共産党を終結せよ」などの抗議スローガンを掲げ、その規模もやり方も前例のないものでした。

 このような背景の中で、なぜ多くの中国共産党の官僚やその親族が海外に移住するかが理解しやすくなるでしょう。

資金転送の手法
 官僚やその家族が資金を国外に移動させる手段はさまざまです。これが近年、地下銀行が雨後の筍のように台頭する原因となっています。

 ニューヨーク大学上海校のジョエル・ガロ特任教授は、「これらの地下銀行は準銀行のように機能しているが、規制を受けずに運営されており、巧妙にグレイゾーンに立って規制網をかいくぐっている」と述べました。

 大量の現金や金塊を香港に直接輸送するのは比較的単純な方法です。香港の羅湖(ローウー)関税は各個人や車ごとに検査を行わないため、10〜20人に委託して現金や金塊を香港に運び、その後香港で米ドルに両替します。

 しかし、ほとんどの資金は地下銀行を介して海外に転送されます。基本的な手順は、依頼人が国内の銀行口座から地下銀行の銀行口座に資金を送金し、その後、地下銀行が海外の銀行口座から米ドルを依頼人の海外の銀行口座に送金するものです。この操作は銀行を介する必要がなく、双方が互いに清算するだけで済みます。この方法によって数百万ドルを海外に送金することができます。

 地下銀行の規模は巨大だと、中国の公式が報じました。中国国家外為管理局(SAFE)は2021年、甘粛省の地下銀行が5つのネットワーク組織を有し、20以上の省で8000以上の銀行口座を使用し、総額756億元(約16兆円)を移転していたと明らかにしました。

 地下銀行は香港だけでなく、中国人のいる世界各地に存在しています。英国家犯罪対策庁(NCA)の2019年の報告書によると、中国人留学生の口座が時折、マネーロンダリングに使用されています。英国家犯罪対策庁によると、100人以上が1.4万以上の銀行口座に現金を預け入れたとのことです。

 フランスの投資銀行ナティクシスのアジア太平洋シニアエコノミスト、ゲイリー・ンは、今年だけでこれらの手法を介して約1500億ドル(約22兆円)の資金が海外に流れると推定しています。

 資金の転送が巨額である場合、海外で決済された輸入契約を改ざんしたり、取引を完全に偽装したりするのがよく見られる手法です。中国共産党の権力者は「一帯一路」投資を通じて、インフラ投資や鉄道などの一連の合法的な手段を利用しています。例えば、名目上1億元の投資でも実際には7000万元しかなく、これにより、3000万元の資金が海外に送られることになります。

 米国在住の中国の富豪孟軍は、メディアの取材に対し、富裕層はみな逃げ出しており、今は海外に出られれば、それでいいという状況になっており、多くの中国の富裕層は海外での身分を持っており、米国のビザ取得が難しい場合でも、カナダ、シンガポール、タイなど他の国に移住することができると述べました。

(翻訳・藍彧)