恒大グループの許家印会長が逮捕された後、彼との権力やカネの取引があった多くの中国共産党の官僚について供述したという報道がネット上で広まりました。その供述には中国共産党政治局の常務委員9人、政治局員およびその家族19人、省レベルの幹部88人、市レベルの官僚670人以上が関与していると許家印が自白したとされています。これらの人々は、関連するカネ取引の合計額が約1.6兆人民元(約33兆円)に達しているとされています。

中央紀律検査委員会、許家印を政敵脅迫に利用
 アメリカ在住の中国の民間企業家である孟軍は、新唐人テレビの「菁英論壇(エリートフォーラム)」番組で、中国でビジネスを行う場合、企業を大手に育てたいのであれば、関連する政府部門や官僚とのつながりが不可欠であると述べました。許家印の恒大グループは既に2.4兆元(約49兆円)もの負債を抱えており、事業拡大の過程に、全面的に許可を与えてくれる多くの部門や官僚が存在するに違いないでしょう。例えば、許家印はある土地を手に入れた後、その土地を使って銀行で繰り返し抵当に入れ、それによって巨額な資金の融資を受けることができました。いわば「なりふりかまわず、ハイリスク・ハイリターンの商売をする」ことです。許家印がこれを成し遂げるためには、カネや利益の供与が行われたでしょう。特定の官僚レベルの人がコネを作る手助けをし、それらの官僚は一定の報酬を得ることができるでしょう。

 現在、許家印が多くの高官について供述したとの報道があります。恒大グループの権力とカネの取引には、約1.6兆人民元(約33兆円)の資金が絡んでいます。この不動産関係のカネに汚れていない中国共産党の官僚がいるのでしょうか?実際にはほとんどの官僚がこの問題に関与しているでしょう。許家印の供述により、最高位の指導層である「正国級(政治局常務委員相当)」および「副国級(政治局委員相当)」の高官、各省の幹部が関与していることが明らかになり、多くの高官は怯えているでしょう。実際、中国共産党中央紀律検査委員会(中央紀委)は、これらの官僚に対して「気をつけろ、中央紀委はあなたたちの証拠を掴んでいる」という警告を発しているのです。これは中国共産党が内部の異議者を打撃する一貫の手法です。

 大紀元時報のエディター兼チーフ・ライターの石山は、中国の市場経済(社会主義市場経済)の特徴の一つは、企業が政府の官僚と何らかの関係(コネ)を持たなければならないことだと述べました。悪く言えば、結託しなければならなりません。小規模のビジネスを行う場合、工商局(工業・商業の企業を監督する検査機関)や警察署と結託する必要があります。大規模なビジネスを行う場合、許家印のように大きなビジネスを展開する場合、当然、最高レベルの高官と結託する必要があります。

 福耀玻璃工業グループ(福耀集団)の創業者である曹徳旺氏(70歳)も、恒大集団の許家印の創業秘話を公開し、「中国商業銀行は不動産に資金を供給できる。過去に会社を登録し、ある土地を繰り返し抵当に入れることができた。許家印は自己資本が全部で39億元(約800億円)しかないにもかかわらず、2兆元(約40兆円)もの融資を受けることができた。2兆元は、2022年の中国のGDPの約2%に相当する」と述べ、「これは単なる許家印一家の事例に過ぎない。中国には他にどれだけの不動産デベロッパーがいるのだろうか?張家、李家、劉家、王家など、さまざまなものが混在している。これこそが『中国式金融』だ」と語りました。

政府と国有企業が債務の9割を占める
 孟軍は「菁英論壇」で、中国では企業が公平に競争できる環境が存在しないと指摘しました。民間企業が今日まで発展したのは非常に難しかったのです。民間企業が一定の規模に成長すると、国有企業にニラの収穫のように刈り取られ、買収されることが一般的です。一方、国有企業や中央企業は異なり、それらは国有資産の背景を持っています。

 孟軍は、「国有企業の経営者であれば、どこに行っても規制されることはない。国有企業が地方に進出すると、地方政府の官僚は国有企業の幹部の顔色を窺(うかがう)。国営企業が融資を希望する場合、必要な金額はいくらでも手に入ることができる。どの銀行にも担保を提供する必要がない。しかし、民間企業が銀行から融資を受ける場合、多くの資産を抵当に提供しなければならない。さらに、民間企業の経営者が政府官僚と結託していない場合、融資を受けること自体が不可能だ。たとえ融資を受けることができても、融資の金利は国有企業や中央企業よりもはるかに高くなる」と述べました。

 石山は「菁英論壇」で、最近、人々は恒大の債務が2.4兆元(約49兆円)で、碧桂園の債務は1兆元(約20兆円)以上に達していると言っていますが、実際には中国の民間企業の債務は国有企業の負債に比べれば雀の涙だと述べました。ネット上には、中国社会科学院金融研究所のデータを分析した記事があり、それによれば、多くの地方政府の隠れ債務額が地方歳入の数倍に達していると明らかになりました。最も多いのは江蘇省で、隠れ債務額が年間歳入の10倍に上ります。その記事によると、中国の民間企業の場合、国の債務全体に占める割合は約10%しかないとされています。

不動産が破綻、株式市場が崩壊中
 孟軍は、中国の経済状況が悪化した後、不動産市場や金融・信託商品の破綻が中国の株式市場に深刻な影響を及ぼしていると述べました。国内全体のA株市場で、上海と深センの約4000社の上場企業のうち、不動産業や金融業に関連する企業は数百社存在します。3年間のパンデミックの後、たとえば貴州茅台酒(グエヂョウ・モウタイ)の株式は100万元時に購入し、今では60万元から70万元ほどになっており、これはかなり良い方でしょう。株主の8割は100万元が50万元に減少しているでしょう。ほとんどがそのような状況です。一部の個人投資家は、100万元が20万元になることさえ幸運と考えています。

 孟軍は、中国の公式はこれまで、ブルマーケット(強気相場)が到来したと吹聴し、経済が回復していると言い続け、さまざまな良いデータを提供してきましたが、実際はそうではないと述べました。国内の人々は他に真実の情報を知る手段がないため、彼らは国営のテレビニュースや新華社の報道を信じ、国内の経済が回復していると考え、希望を抱きます。特に深刻な状況に陥った人々は、希望に満ちており、借金をし、資産を担保にしたり、不動産を売却したりします。彼らは今が最安値であると感じ、さらに株式を購入しようとしています。

 孟軍は、株式市場には最安値がなく、さらに下がるだけだと考えており、この株式市場は不動産や企業経営よりもっと危険な場所だと指摘しました。孟軍は、今年の年末以降、この株式市場は引き続き下降すると予想しています。株主は早めに株式市場から離れるべきであり、来年になると、おそらく元本の10%すら取り戻せないかもしれません。

(翻訳・藍彧)