中国経済の不振が続いている中、国内の消費需要も非常に低迷しています。時事評論家の王赫氏は、飲食業の倒産の波から中国経済の衰退を分析しました。

 最新の統計データによると、全国民の銀行預金は前年同期比で11.91億元(約237.48億円)増加し、6月における16〜24歳の失業率は過去最高の21.3%に達しました。これは、消費者の消費への不安が高まり、雇用と所得の増加に対する期待がマイナスに転じ、多くの人が貯蓄を増やして消費を控えていることを示唆しています。中国当局の経済成長を消費で牽引しようとする願望は叶えず、金融政策の効果も乏しいようです。6月末の広義マネーサプライM2(マネーストックの一種で、市場全体に供給される通貨の量を測る指標)は前年同期比11.3%増、社会融資規模の残高は同9.0%増、人民元の貸付は同11.3%増となったが、上半期のGDP成長率はわずか5.5%にすぎません。昨年の上半期の成長率が非常に低かったため、中国経済はデフレの瀬戸際に立たされているようです。

 これらのデータを見ると、経済の衰退は既に紛れもない事実となっています。では、より直感的なデータ「中国飲食業の発展報告書2023」を見てみましょう。2023年上半期において、飲食関連企業の登記抹消・登記取消の件数が47.19万件に達し、これは2020年全体の数を超えています。

 また、この傾向を裏付けるような報道も韓国紙「朝鮮日報」にあります。本社は北京にあり、規模が中国のトップ3に入る業務用中古厨房器具を販売するA社の社長は、2022年までに北京と上海にしか中古のレストラン用厨房器具の倉庫を構えていませんでしたが、最近では南京市や杭州市など他の4つの都市にもそれぞれ1000坪(約3300平方メートル)の大型倉庫を新たに設け、急増したレストラン用中古厨房器具を保管しています。これらの厨房器具は約4万軒のレストランに使用するのに十分な量です。

 なぜ短期間に急増したのでしょうか?A社の社長は次のように述べています。コロナの流行が収束後の3月から、経済の再開と「報復性消費」への期待から、中国各地で商売を始めようとする多くの中年層の人々が現れました。これらの人々の年齢は主に35歳以上50歳未満で、不動産、IT、教育関係者の「三大失業グループ」から来ています。彼らは個人事業主として、レストランを開業して大量の中古厨房用具を購入しました。その結果、A社の倉庫の在庫は一時的に完売してしまいました。しかし、経済の不安定さや消費の緊縮により、3、4か月後には、彼らが経営する多くのレストランが閉店を余儀なくされ、結果的に中古厨房用具が過剰になったのです。

 A社の社長が話した内容は、飲食業界や中国の経済状況と非常に合致しています。周知の通り、3年間にわたるコロナの流行と中国当局の「ダイナミック・ゼロ」政策により、飲食業界に大きな打撃を与え、閉店の波が連続しています。表1からもわかるように、飲食業界の売上変動率は小売業全体の売上変動率より大きく上回っており、経済状況の変動に対して相対的に敏感です。

表1:2019年~2022年の小売業の売上総額と飲食業の売上(億元人民元)

年度 社零总额 增长率 餐饮收入 增长率
2019 411649 8.0% 46721 9.4%
2020 391981 -3.9% 39527 -16.6%
2021 440823 12.5% 46895 18.6%
2022 439733 -0.2% 43941 -6.3%

 コロナ流行の3年間で、中国全国では170万以上の飲食関連企業が倒産し、過去10年間の倒産総数を上回っています。具体的には、中国の企業データベース「企査査(中国最大級の企業情報アプリ・サイト)」によると、2020年には32万件以上の店舗が倒産、2021年には93.5万件の店舗が倒産、2022年には51.9万件の店舗が倒産しました。

 中国経済の衰退に関するトレンドは、社会心理的に広く認識されています。例を1つ挙げましょう。「上海がこのような状況になり、私たちはとても悲しい」という投稿がネット上で話題になり、反響を呼びました。この投稿者は、外地から来た友人の上海ツアーに同行したことで、虹橋駅、南京路歩行者天国、上海駅の現状、つまり飲食店を含む多くの店舗が閉店し、景気が低迷している様子を目のあたりにしました。

 上海駅の小さな店舗は個人事業主のオーナーが経営しており、虹橋駅の大型店舗は中堅企業が経営しており、南京路の大型商業施設は大企業や大手グループが所有・運営していますが、現在はどの場所も閉店や廃業、事業調整中などという状況になっています。これは上海の経済状況の縮図なのでしょうか?

 上海は中国のビジネス業で最も発達している都市であり、上海でさえこのような状況になっていると考えると、他の都市の状況がどれだけ深刻か想像するのは容易でしょう。

 2023年に中国の多くの地域で高温が続き、110の気象観測所で最高気温が極値に達している中、経済は長い「寒冬」に向かって進んでいます。

(翻訳・藍彧)