中国経済が低迷し、若者の失業率が上昇し続ける中、最近、新たに知識の路上販売が出現したのです。多くの大学生が仕事を見つけるのが難しく、起業の資本もないため、彼らはやむを得ず街頭で露店を出し、有料の相談などのサービスを提供しています。このような「知識の露店」という新たな現象が話題となっています。

「熱帯魚」の知識の露店

 最近、中国南部の雲南省大理古城では、ネット上のアカウント名が「熱帯魚」という中山大学哲学系の女性大学院生が「学術の露店」を出しました。彼女は古い町の石造りの階段に座り、「哲学修士で、実存主義に精通している」という宣伝文句を黒いマーカーで書いた古い厚紙を掲げました。

 「北京青年報」によると、アカウント名「熱帯魚」という学生はメーデーの大型連休中にこの古い町にやってきました。彼女は小物を売るのではなく、「哲学的な相談、癒し、おしゃべり」を提供しています。「最初は、1人あたり88元(約1700円)で、好きなだけおしゃべりができる」。このアイデアは、学校で受けた「哲学的ヒーリングとカウンセリング」の授業から着想を得たと彼女が述べました。

 初めて相談に訪れたのは、新疆ウイグル自治区からきた40歳の男性でした。彼は「人生の意味は何か?」と尋ねました。約1時間おしゃべりの後、「熱帯魚」は、「人生には意味があらかじめ与えられているわけではなく、私たちは自ら意味を見出す必要があるのだ」と答えました。初めての相談客であったため、「熱帯魚」は66元(約1300円)の割引料金を受け取りました。

 その後、彼女はオリジナルのポストカードの販売を増やし、1枚あたり15元で提供しています。また、オリジナルの詩集も販売していますが、価格が定まっていません。さらに、露店の商品を一つでも購入すれば、相談は無料で受けられるとのことです。

 「熱帯魚」は「収入は非常に不安定だ」と述べました。顧客が少ない日は、1日の収入が100元(約2000円)に満たないこともあります。しかし、ある日だけ、「ある若いお兄さんがポストカードを3枚購入し、333元(約6500円)を支払ってくれた。その日の総収入は600元(約11500円)に達した」

 露店を始めて5日目、熱帯魚はネット上で話題となり、ソーシャルメディアプラットフォームを通じて彼女の名前を知った観光客たちが彼女のもとに押し寄せました。彼女は「自分が他人によって消費される風景になった気がする」と述べ、一時的に露店を休止しました。

「拙木」の心理相談露店

 応用心理学専攻の「拙木」というアカウント名の学生も、大理古城で心理相談の露店を開いています。彼の露店には「OHカード」、「カラーカード」といったアイテムがたくさん並べられています。紙ボードには、「心理学」「癒し」「疑問解消」といった言葉が書かれています。

 「拙木」は、3月中旬から4月中旬までの間、露店からの収入は基本的な生活費をまかなう程度であったと述べました。そのため、露店の仕事以外に別の仕事を見つける必要があったのです。

ネットユーザーのコメント

 大学生の「知識の露店」に関する話題は、ネット上で熱い議論を引き起こしました。「これは占いとあまり変わらない」
 「研究や人生経験を積むことなら、これは良い経験となるのだが、生計のためにそれを行うのはつらい」
 「親が18年間苦労して子供を育ててきたのに、子供たちが自分の知識を使って一生露店を出すなら、結局は親の社会的階層に戻ってしまう。だとすれば、勉強する意味はないのではないか?最初から直接露店を始めれば良いのではないか」

政府の緩和措置

 中国の経済が明らかに衰退している中、大都市では「露店経済」を促進する動きが広がっています。道路の使用規制が緩和され、屋台などの出店が奨励されるようになりました。「ゼロコロナ」政策の終了で景気が持ち直している割に、雇用の改善ペースは緩慢です。政府は以前、治安対策などを目的に取り締まりを強めた露店経済を再び容認し、雇用や所得の改善に結びつける狙いです。広東省深セン市はこのほど、都市の景観や衛生に関する条例を改正しました。9月から露店の出店規制を見直し、末端の行政機関である街道弁事処が定めたエリア内での出店を認めることにしました。

 上海も時間を区切った歩行者天国や夜市での屋台出店を促す方向で検討しています。また、首都の北京や甘粛省の省都である蘭州も同様の規制緩和方針を打ち出しています。

学者の評論

 ベテランのコメンテーターである王赫氏は、新唐人に対して、「中国共産党が都市の整備に重点を置いてきたが、現在はその方針を緩和していることから、経済状況や雇用状況が非常に厳しいことが示唆されている」と述べました。

 王赫氏は、「北京や上海、深センなどの地域では、多くの人々が仕事を見つけることができず、消費も減少している。このような状況下で、中国共産党が露店に対する規制を緩めることで雇用の圧力を緩和し、人々の生活困難を解決しようとしている」と述べました。ただし、これは一時的な戦略的な調整であり、中国共産党が民生を重視しているわけではないと指摘しています。

 米国在住の経済学者・鄭旭光氏は、中国当局の露店経済の自由化は安定維持策の一つであると指摘しました。「もし資本や就職の機会がなく困っている人がいるなら、露店を開くことでその問題を解決できる」

 新型コロナウイルスによる3年間の封鎖措置は、中国経済に大きな打撃を与えました。現在、中国の雇用情勢はますます厳しくなっています。今年6月には社会に出る大卒者が1160万人であり、昨年よりも82万人増加しています。また、中国国家統計局が5月に公表したデータによると、4月の都市部の若者の失業率は20.4%と過去最高を記録し、全体の失業率5.1%を大きく上回りました。

 別のデータによると、コロナ発生以来、多くの大学生が就職を延期するために進学を選択しています。しかし、大学院生の失業率も上昇し続けています。

(翻訳・藍彧)