中国では、3年間の新型コロナウイルス感染症の流行で経済が停滞し、就職も厳しい中、今、「専業子女」という新しい職業が流行しています。

 「専業子女」は、フルタイムで家で両親の世話をし、両親から給料をもらう息子や娘のことを指します。

 新卒者を対象にした調査報告書によると、回答者の13.3%が親の「専業子女」であることを認めています。

 中国ではこれまで、「コウ老族(こうろうぞく)」(スネかじり族)という言葉が象徴するように、大人になっても、ひいては結婚しても、親に頼り続け、場合によって親を徹底的に搾取するような人が急増しています。中国老齢科学研究センターが公表したデータによると、中国では65%の家庭にスネかじり族がいること、約30%の成人者が高齢者によって扶養されています。状況はかなり深刻です。

 スネかじり族に続き、最近では「専業子女」も増え始めています。

 中央テレビ網は16日、中国の大卒者数は過去3年間増加し続けていると報じました。2022年の大卒者数は過去最高の1076万人に達しました。同時に、景気の下押し圧力が強まり、就職が苦境に陥る中、自分の専攻に合った仕事や、きちんとした給与を得られる仕事を見つけるのはますます難しくなっています。たとえ仕事が見つかっても、収入の減少などの不安要素を抱えなければなりません。

 こうした就職難の中、中国ではフルタイムで両親の世話をし、両親から給料をもらう新しい職業「専業子女」が流行し始めています。

 機関紙「北京青年報」によると、中国の人材サービス会社「前途無憂」が発表した「2023『公務員試験』就職活動観察報告」から、新卒者という身分は「見えない枷」になっているようで、回答者の13.3%が親の「専業子女」であることを認めているといいます。

 網易(ネットイース)15日の記事によると、卒業したばかりの若者たちが、再受験のために実家に帰ったり、仕事が見つからなかったりして、「専業子女」になってしまったといいます。中国の大手ソーシャル・カルチャー・サイト「豆瓣(ドウバン)」の「専業子女就業交流センター」というグループには、高学歴を中心に2948人がいて、雇用状況が悪いために「専業子女」になってしまったといいます。

 3月12日、「数百万元(数千万円)の費用をかけて留学したが就職できず、専業子女になった」と題した記事によると、これまで、海外から帰国した留学生の方が競争力があり、就職活動でより優位に立てれると思われていたが、状況はとっくに変わっていたとのことです。留学から帰ってきて「専業子女」になることがますます一般的になっています。

 記事では、息子がより良い将来が持てることを願い、多額の費用を払って留学させた父親が紹介されています。しかし、まさか留学から帰ってきた息子が、「専業子女」になるとは思わなかったのです。この快適で居心地の良い生活から、息子は「親をとことんまでかじり続ける」という考えを芽生えさせました。それから10年間、息子は就職活動をせず、「専業子女」として家にこもっていました。

 中国ウェブメディア「トップニュース」6日の記事は、211大学の23期生でマーケティングを専攻した新卒者の自伝を掲載しました。彼の実家は2級都市にあり、両親は国有企業で働いており、家には3つの物件があり、50万元(約1000万円)の車が1台あります。しかし、彼は月収5000元(約10万円)の仕事も見つからず、両親と相談した結果、実家に帰って「専業子女」になったといいます。

 上記のネット記事は、親が提供する一見安心に見える生活の裏には、「専業子女」の問題なども多くあることを指摘しています。結局、子供と両親には世代間の溝があり、生活習慣や価値観が異なっているため、意見不一致に遭遇すると、親を頼っている息子や娘が「人は軒下にいるから、頭を下げざるを得ない」、「人に食べさせてもらったり、人から物をもらったりすると、相手に頭が上がらなくなる」ことにほかならないのです。

 中国教育部の統計によると、2022年に大卒者の規模が1076万人に達し、就職していない人が約7割います。2023年には大卒者の規模が1150万人を超えて、より就職難に直面しています。

 スネかじり族や専業子女の問題は決していま急に出てきたものではありません。特に都市部では1980年代からすでに顕著になりました。市場経済への移行期にあって労働雇用制度は大きな変革を余儀なくされたのにつれて、多くの若者が就職できず、住居、生活費、精神面などにおいて親に頼らざるを得ない状況に陥っています。

 スネかじり族や専業子女の急増は、やがて大きな社会問題になるでしょう。

(翻訳・藍彧)