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 ここ数か月で爆発的に話題となっている対話型人工知能ツール「ChatGPT」。その高度な技術で日本でも注目を集めているが、中国になるとどうなるのか。このほど、「ChatGPTの中国バージョン」と思われるチャットボットとの対話を試みた中国人は、「1989年6月4日、北京で何が起こったのか」と聞くと、「処理できない敏感詞がある」と答えられた。

 米紙「ニューヨーク・タイムズ」のコラムニスト詹涓(せん・けん)氏は、中国四川省在住の友人が遭遇した事を語った。友人は中国バージョンの「ChatGPT」で「1989年6月4日、中国・北京で何が起こったのか」と質問すると、「ご質問の中には処理できない敏感詞があるので、お答えできません」との回答があった。「中国のゼロ・コロナ政策についてどう思うか」と質問すると、返ってきたのはゼロ・コロナ政策を大いに評価するような回答だった。

 一方、詹氏は本物の「ChatGPT」で同じ質問をすると、中国バージョンと全く違う回答が返ってきたという。

 詹氏は、このように中国の検閲を積極的に受けようとするチャットボットは「ChatGPT」の中国海賊版だそうで、微信(ウィーチャット、WeChat)で有料で提供されているという。海賊版のロゴは本物とほぼ同じだが、カラーが異なっており、登録された会社情報から見ても、OpenAPI社が開発している本物の「ChatGPT」とは無関係だとも述べた。

 中国当局が敏感に反応する言葉は「敏感詞」と呼ばれる。似たようなチャットボットは微信で複数存在するが、これらの「海賊版」は例外なく、「数はとても多く、そして日ごとに増えている『敏感詞』という禁忌に触れてしまったら、チャットボットとそのプラットフォームが封殺され禁制される可能性」という問題に直面していると、詹氏は述べた。

 詹氏は、中国のユーザーが本物の「ChatGPT」を使用することの難しさが、ある程度海賊版の開発を助長していると見ている。加速する米中競争を背景として、人工知能ツールの分野で勝利を得る利益を見出し、中国は中国版の「ChatGPT」を開発したいと思っていると、詹氏は分析した。百度(バイドゥ)、アリババ、京東、テンセントなどの中国ネット大手企業が類似するチャットボットの研究開発に大いに注力しているという情報も、この分析を証明している。

(翻訳・常夏)