「臓器濫用及び移植ツーリズムについて考える」国際シンポジウム(写真撮影:看中国/黎宜明)

臓器濫用に関する対策

 韓国延世大学校医学部特任教授で、パン・ギムン研究センター研究員である李東炫氏は、臓器移植を倫理学の側面から述べた。商業化した移植手術の場合、患者、ブローカー、移植医、ドナーなど、業界全体にわたる隠蔽がみられるという。また、商用臓器取引におけるドナーは、違法に榨取されたケースが多く、金銭を使って自発的なドナーになるよう迫られる場合もある。そこで、倫理面において、臓器売買、移植ツーリズム、商用化された臓器移植手術の問題は、生命倫理の4つの理念(「自主性」「公正」「非犯罪性」「慈善」)から取り上げなければならないとした。

 韓国水原地方裁判所裁判官である金松氏は、臓器移植に関する韓国の法律改正の動きについて語った。現在、韓国では臓器移植ツーリズムに対応する法律の改正案が検討されている。この改正案は2つの要点がある。1つ目は、臓器移植患者(海外で手術を受けた患者を含む)の状態を定期的に報告することを全ての医師に義務づけること。2つ目は、医師の報告書がある臓器移植患者にのみ、健康保険の適用を認めることだ。

 台湾の弁護士である朱婉琪氏は、台湾における人体臓器移植法改正の例(2015年7月1日に改正・公布)を紹介した。台湾の法律の改正は、イスタンブール宣言(2008年)、イスラエルの臓器移植法(2008年)、スペインの移植ツーリズムに関する刑法改正(2010年)を参考にしたという。台湾の人体臓器移植法改正は、2つのマイルストーンを作ったとした。台湾以外の国での臓器移植に対する強制登録制度と、臓器移植ツーリズムや関連する違法な仲介業者を有罪とすることだ。

 ジャーナリストでSMGネットワーク事務局長である野村旗守氏は「年毎に厳しくなっている国際社会の監視体制のなか、先進国のなかで唯一、日本だけ、国会も、メディアも、この問題に目をつぶり続けている」と言及した。

 野村氏は、移植ツーリズムに日本の政治とメディアが沈黙を守る原因を分析した。その一つは、日本の各界に対する中国共産党政権の地下工作だという。野村氏は、現在米国に亡命している中国の実業家、投資家である郭文貴氏の報告を引用して、中国共産党政権が様々な手法(お金、サイバーテロ、色情スパイ、政党の幹部に臓器移植サービスを提供するなど)で日本社会に影響を与えていると語った。

 台湾国立大学医学部教授で台湾大学倫理センター長の蔡甫昌氏は、東アジアの臓器移植ツーリズム問題に対応するネットワークや特別委員会の設置を提案した。

イスタンブール宣言(Declaration of Istanbul):
 イスタンブール宣言は、臓器移植および臓器提供のための国際的な医学界の倫理的ガイドラインである。この宣言は、2008年4月30日から5月1日まで国際臓器移植協会がトルコのイスタンブールで開催した会議の後に正式に発表された。この宣言は、移植ツーリズム、臓器提供、ビジネス行為などの問題を明確にしている。宣言が可決された後、世界100か国以上が臓器提供に関する国内法を強化し、商業臓器移植と臓器移植ツーリズムに反対した。

この国際シンポジウムに関する動画:

「移植ツーリズムを停止する関連法律の早期の制定を」国会で報告会開催:

中国の臓器狩り:動かぬ証拠(日本語吹き替え版) 鐵證如山 ドキュメンタリー:

(おわり)

(内容を更新しました。)

(文・黎宜明)