中国の偵察気球がこのほど、米国領空に侵入し、複数の機密軍事施設上を漂っていたと複数のニュースが伝えました。
米国側は北京が主権と国際法に違反していると非難し、2月4日にF-22戦闘機を出動させ、大西洋上空でAIM9X（サイドワインダー）空対空ミサイルで気球を撃墜させました。
米国防総省は５日、東部サウスカロライナ州沖で撃墜した中国の偵察気球の回収作業を進めていると発表しました。
軍の戦略支援部隊が関与か
北京側は当初、公式メディアを通じて、米国側の「気球説」は自作自演で中国側を中傷していると批判していました。しかし、その後、論調を変え、気球は中国から来たが、気象撮影などの科学研究任務のための「民間」のものであることを強調しました。
しかし、米CNNテレビによると、米国領空で発見された中国の気球の下にあった設備は、約27.4メートルの長さがあり、気球の向きを変えたり監視したりするための装置と見られるものだそうです。
米軍に撃墜された気球は、中国軍が中国内モンゴル自治区で管理する衛星発射基地から打ち上げられたとの情報がありました。同部隊は、戦略に関わる情報の収集を役割の一つとし、偵察衛星を運用して米軍の核兵器施設などの監視を行っているとされています。
撃墜された偵察用気球について、中国軍で宇宙やサイバー、電子戦などを担当する戦略支援部隊が背後で運用に関与しているとの見方が出ています。同部隊は、製造コストが低く、撃墜されても人的被害のない偵察用気球を、衛星による偵察を補完する装備品として活用しているとみられます。ただ、衛星による偵察は上空通過の時間帯が限られ、雲の有無など天候条件に左右されます。
中国軍の内情に詳しい関係者によると、中国軍は偵察用気球を衛星で常時監視しきれない場所に投入し、定点監視ができる態勢を整えようとしているといいます。
同関係者は気球の運用について、「戦略支援部隊は軍民融合を活用し、民間に運用させている」と指摘しました。
習近平政権は、民間技術を軍の強化につなげる「軍民融合」を国家戦略として掲げています。装備品の開発だけでなく、運用面でも軍民融合を進めているとみられます。同部隊が気球を民間に運用させていることは、中国政府が撃墜された気球について「民間のものだ」と主張する根拠にもなっているようです。
米国防総省は５日、撃墜した中国の偵察気球の回収作業を進めていると発表しました。
北米航空宇宙防衛司令部（NORAD）北方軍のバンハーク司令官は声明で「米海軍要員が現在、回収作業を実施しており、沿岸警備隊が作業場所の確保と安全の維持を支援している」としました。
また、5日までに、米国北部で最初に発見され、今回撃墜されてた中国の偵察気球のほか、3日に2つ目の偵察気球が中南米（ラテンアメリカ州）上空に現れました。さらに、米国付近で3つ目の偵察気球が活動している可能性もあるが、当局者は詳細な位置を明らかにしなかったのです。
米当局関係者は、これらの気球が中国の民間企業に軍事関連技術の提供を依存する数年にわたる中国共産党の「軍事偵察計画」の一環であり、気球には高度な「通信機器」が装備されていると明らかにしたが、実際の役割はまだ分かっていません。
米国防総省高官がCNNに明らかにしたところによると、中国共産党の偵察気球は実際、トランプ政権時代に少なくとも3回米国上空に侵入しており、「現政権発足当初にも1度はあったが、今回ほど長く滞在したことはない」といいます。
矢板明夫氏、中国共産党政権の内部が混乱している
ジャーナリストである矢板明夫氏はフェイスブックの投稿で、「何があっても過ちを認めない」のが中国共産党政権の一貫したやり方であると述べました。しかし、今回の事件から、現在の習近平政権は外交の主軸を欠き、内部も混沌としており、大きな問題への対処もかなり軽率であるように見受けられます。
第20回全国代表大会後、習近平政権は表向きは米国との関係を修復しようとしているが、中には米中関係の改善をあまり喜ばない人物がいることが明らかになったと矢板氏が指摘しました。
「今回の気球（事件）は意図的に放出されたのか、それとも誤って迷走した気象観測気球なのか?それはまだ定かではない。しかし、米上空に侵入した以上、深刻な挑発行為となる。中国共産党政権は、なぜ事前に事態を押さえておかなかったのか、おかしいのです」
矢板氏は、中国共産党政府の現在の強硬な態度は、対立をさらにエスカレートさせていると指摘しました。「意図的であろうとそうではなかろうと、中国の観測気球が米国上空で発見され、米国側の不快感を引き起こしたことは事実だ」
中国外交部の慣例によれば、このようなことに遭遇した場合、最も重要なのは口裏を合わせることだ。「しかし、今回は、外交部の声明、報道官の発言、王毅氏の話、すべてが異なることを言っている。内部が混乱している現状を露呈している」
（翻訳・藍彧）