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 月は、地球の直径の約30倍の距離にある地球の唯一の衛星です。太陽系で5番目に大きい衛星で、その直径は地球の4分の1で、質量は地球の81分の1です。現在知られている太陽系の衛星の中で5番目の質量で、木星の第1衛星である「イオ」に次いで2番目に密度が高い衛星です。

 そんな月が突然無くなったら、地球はどうなってしまうのでしょうか?

 まず考えられる事は、月の光が無くなったら、僻地や深い森などの人工の照明のない場所は、夜間真っ暗になり、多くの生物が生存しづらくなるでしょう。

 『動物生態学刊(Journal of Animal Ecology)』に掲載された記事によると、情報収集で視覚を頼る動物は、月の光に大きく依存しています。たとえば、フクロウやライオンは獲物を捕らえる時、月の光に頼っています。全く月の光が無くなったら、これらの動物たちは狩りができません。その結果、草食動物や害虫が大量に増え、種のバランスが崩れてしまいます。

 もう一つの直接的な影響は、地球の潮汐の変化です。

 アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所の研究者であるマット・ジーグラー(Matt Siegler)氏は「地球の潮汐(ちょうせき)が現在の3分の1程度になるだろう」と予測しました。地球の潮汐は、全てが月の引力によるものではなく、太陽の引力もある程度影響しているので、月が無くなったら潮汐は3分の2も減少してしまいます。

 このような変化は、海洋生物圏の中の潮汐に依存する種族を極めて大きく変化させる可能性があり、その結果、エネルギー、水、ミネラルなどの循環にも影響を与えます。カニ、ヤドカリ、フジツボ、ムール貝、ヒトデ、藻類など、海洋系の多くの種の生存は、潮汐の変化に頼っています。これらの生態系は、渡り鳥、留鳥(りゅうちょう)、およびクマ、アライグマ、シカなどの陸生哺乳類の食料にも影響しています。

 潮汐は地球の気候にも重要な役割を果たしています。コロラド大学(University of Colorado)の発見と科学ネットワーク(Network for Exploration and Space Science)の部長ジャック・バーンズ(Jack Burns)氏は「潮汐が無くなったら、地域的な気温差がもっと極端化し、異常気象がより多くなるだろう」と述べました。

 月は地球の気候バランスにとても重要な役割を果たしているのです。そのため、バーンズ氏は「宇宙空間で人類の新しい居住地を探す際に、目標とする惑星に大きな衛星があるかどうかも重要な条件になる」と述べました。

 定期的に満ち欠けする月は、地球からとても観測しやすいため、古来より暦や芸術、神話などの人類の文化にも大きな影響を与えてきました。月の引力と地球の潮汐の影響で、毎日僅かずつですが一日の時間が延長されています。地球から見える月と太陽のサイズが似ているため、時々、月と太陽が一直線上に重なり、皆既日食や金環日食などの現象が起こります。また、満月にお供え物をする「お月見」などの風習も現在まで引き継がれています。もし、月が無くなったら、これら全てが無くなってしまいます。

 また、いくつかの影響が、より長い期間で現れます。たとえば、月の重力の影響が無くなったら、地球の公転の傾斜軸も大幅に変化します。NASAのジーグラー氏は「火星は、安定した大型衛星の保護が欠如し、傾斜軸が大きく変化しました。地球も月が無くなってしまったら、わずか数十万年で、傾斜軸が大きく傾き、極端な気象が次々と現れるようになるでしょう」と述べました。

 私達に様々な表情を見せてくれる美しい月ですが、ただ美しいだけではなく、地球上の多くの生命に大きく影響しているのです。

(翻訳・宴楽)