彭帥さんとカンフー・パンダやプーさんと一緒に写っている写真(ネット写真)

 中国女子テニススター、彭帥選手は19日、「誰かが私に性的暴行を加えたと言ったり書いたりしたことはない」と強調し、自身は自由だと訴えた。また、先月初めのウェイボー(微博、Weibo)への投稿が誤解されたと述べた。

 同日、上海で開催されたクロスカントリースキーの国際レースに出席した彭帥さんは、シンガポール紙「聯合早報」の取材に応じ、「まず、1つ強調したいのは、とても重要なことで、誰かが私に性的暴行を加えたと言ったり書いたりしたことはない。この点は、何としても強調し明確にしなければならない。それから、あのウェイボーに書いたことだが、あれは私個人のプライバシー問題で。あれは既に・・・きっとこれは、皆さんが多くの誤解をしている」などと述べた。

 彭帥さんを突然取材した「聯合早報」の動画では、19日、彭帥さんは上海で開かれたスキー競技を、NBA(米プロバスケットボール協会)の選手だった長身の姚明(ようめい)さんらと観戦したあと、周辺を散策していた。すると、ある人物がいきなり彭帥さんに話しかけてきたので、彼女は非常に怪訝な顔をした。しかし「あ、テレビ局?」という問いに、相手が「はい、そうです。聯合早報です」と答えると、すぐに態度を変えて、取材に応じた。

 彭さんは、張高麗前副首相(75)から性的関係を強要されたとウェイボーで告発してから3週間姿を消し、彼女の安否は国際テニス界や人権団体の注目を集めた。同事件について、彭さんがカメラに向かって公開的に発言したのは、今回の聯合早報の取材が初めてである。

 彼女はまた、北京の自宅で生活しており、全く監視されていないと言った。さらに、彭さんは先月、女子テニス協会(WTA)のスティーブ・サイモン最高経営責任者に送った手紙は自筆であり、「完全に自分の意思」だったが、中国語の手紙を英語に翻訳するには自分の英語のレベルが足りなかったため、中国の国営テレビ「中国環球電視台(CGTN)」で以前英語版を発表した。「その意味は、私がサイモン氏に返信したメールと、ほとんど情報の違いがない」と説明した。

 しかし、取材の中で、彭さんは、ウェイボーに投稿された文章が30分間以内に、微博から削除されたことについては、何も言わなかった。張高麗という人物についても言及することはなかった。

 日本経済新聞社の編集委員である石塚由紀夫氏は、「いまさら『ない』とご本人が強調されても、容易に納得できない。一般論だが、セクハラなど性的被害は力を持つ者が、その力を及ぼせる弱い立場の方に対して行いがち。事があった後も、加害者の影響力の下に置かれたままだと、被害者は本音を明かせない。日本企業であっても、セクハラ被害者が会社や職場の有形無形な圧力に屈し、「被害はなかった」と泣き寝入りや前言撤回を強いられることがある。まして人権尊重意識が世界の中では希薄な中国での出来事。『なかった』と言うなら、以前の書き込みは何を意味し、なぜ世界に発信したのか、明確な説明がないと疑惑は晴れない。これにて幕引とはなりそうにない」と述べた。

 時事評論家の唐靖遠(とう・せいえん)氏は、「1カ月半ほど『説得』された後、彭さんはこの問題を終わらせるために、当局に協力することを選んだ。中国共産党はこれを危機管理の成功だと見なしているだろうが、外部からは「テレビで罪を認めた」としか映らないだろう」と解説した。
 時事評論アカウント「LT視界」は、彭さんがインタビューで「外界が間違った解釈をしている」と強調したが、11月2日にウェイボーで公開した文章は彭自身が書いたことを肯定することになり、「これは彭帥事件を発酵させ続けるだろう、聯合早報は周到に準備対応していたが、このミスを避けられなかった」とコメントした。

(翻訳・徳永木里子)