中国海軍博物館の长征1号原子力潜水艦(StefanTsingtauer, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons)

 中国の原子力潜水艦とみられる艦船1隻が11月29日、台湾海峡に不意に浮上し、そのまま航行していたことが分かった。

 同潜水艦は台湾と中国本土を隔てる海域を浮上航行しているとみられるところを発見された。中共(以下、中共)の元海軍幹部である姚誠(よう・せい)氏は、中共の原潜が台湾海峡を浮上したのは、事故によるものだと考えている。アナリストの多くは、この海域での紛争は偶発的な衝突をきっかけに始まる可能性が高いと指摘する。狭い空間に軍艦が集まればその分、事故が起きる可能性は高まる。

 米海軍の元大佐で、米太平洋軍統合情報センターの作戦責任者を務めたこともあるカール・シュスター氏はCNNに対し、「弾道ミサイル原潜の浮上航行はほぼ前代未聞だ」と述べ、「大規模造船所での調査や修理が必要な艦体もしくは技術上の問題を示唆している可能性がある」との見方を示した。

 潜水艦の専門家H・I・サットン氏は先月29日のブログで、欧州のオープンソース衛星画像サービス「センチネル2号」の画像に写った艦船に言及。中国の094型弾道ミサイル原子力潜水艦との見方を示した。同潜水艦が台湾海峡に展開したとみられる理由は不明だが、サットン氏は通常の任務だった可能性が高いと指摘した。修理かメンテナンスのため渤海にある人民解放軍(PLA)海軍の港湾に向かっていた可能性があるとしている。

 中国公式メディア環球網のウィーチャットアカウント「科大烽火(keluoliaofucn)」は、「094型原潜が水上飛行する理由はただ1つ、台湾海峡は平均水深60メートル、一部の浅瀬は水深十数メートルと浅すぎ、水中の地形も複雑で、加えて094型原潜の1万トン近い排気量は大きすぎるため、どうしても 潜水艦は浮き上がって海峡を渡る必要があった」と主張した。

 これに対して、姚誠氏は、弊社の取材に対し、原潜はその機密性のため、極めて特殊な状況がない限り水面を航行することはなく、今回は突発的な事故で、修理のために浮上した可能性が高いと述べた。恐らく亜龍湾(ヤーロン・ベイ)の造船所で修理ができないため、葫芦島(ころとう)の渤海造船所、あるいは海軍試験基地で修理しなければならない。さもなければ、台湾海峡で姿を見せるはずがない。これは(軍事的には)最もタブーなことだ。

 また、台湾海峡は浅すぎるのも事実だが、台湾の東側から抜けることができるはずだ。原潜が太平洋に入るのは通常で、台湾東部から出るのも問題ない。もしこの潜水艦が正常で海中を航行できるなら、台湾海峡の水上からは航行しないのだろう。中共軍、特に中共戦略ミサイル原子力潜水艦の所在は、米国の全軍事戦略の極めて重要事項であるため、今回の水上航行はやむを得ずで、ほぼ間違いなく故障していて、しかも、より深刻的な故障であることは確実である。原潜は水面航行するどころか、どこにいるのかを米軍に知られるだけで、それは(中共)にとって非常に致命的なことである。

(翻訳・吉原木子)