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 近年、中国の人口問題は深刻で、出生数の減少、深刻化する高齢化、生活のプレッシャーから「躺平(タンピン)(注1)」を選択する若者が増え、さらに中国経済の低迷により子供を産む意欲が低下している。中国共産党(以下、中共)国家統計局が公表した「中国統計年鑑2021」によると、中国2020年の出生率は2020年に1,000人当たり8.52人となり、43年ぶりの低水準となっている。

 出生率は1978年以来の低水準を記録し、自然人口増加率(出生率から死亡率を引いた値)は同時期に1,000人あたり1.45しかなく、これも1978年以来の最低水準であることが、中国複数のメディアの報道で明らかになった。

 総人口で見ると、前年に比べて中国は、2018年に530万人、2019年に467万人、2020年には204万人しか増えていない。

 中国国務院発展研究センター(DRC)の張翠玲(ちょう・すいれい)研究員は、新型コロナウイルス(中共ウイルス、SARS-CoV-2)の流行によって、より多くの若者が晩婚化しており、それが出生率を低下させていると指摘した。コロナの発生以来、中国では2020年の婚姻件数が2019年に比べて12.2%減少し、一方で2020年に登録された早期婚姻件数は近年では記録的な低水準となっており、直接的に、一人っ子しか出産しないという夫婦をより縮少させている。

 近年、中国の人口問題は社会全体の焦点となっている。

 1、深刻な高齢化が進み、2019年末には中国の60歳以上の人口が2億5400万人に達し、総人口の18.1%を占め、すでに子供の割合を超えている。

 2、出生数の急激な減少。

 3、中国本土での初婚者数が2013年の2386万人から2018年1599万人、2019年1380万人に減少している。

 若者が結婚や出産を嫌がる理由はさまざまだが、ほとんどが生活のプレッシャーに関係している。多くの人が結婚前に住宅や自動車のローンに直面し、結婚後に子育てという現実な問題に直面することになる。中国の住宅価格は非常に高く、特に1級都市では一生掛かっても手が届かない家もある。また、1平方メートル当たり20~40万元(約360~720万円)もする高額な学区房(注2)や、高い塾の費用もあり、ネットユーザーは「最高の避妊具」と言っている。

 米国のベテラン経済ジャーナリストの王剣(おう・けん)氏はラジオ・フリー・アジアとのインタビューで、「人口は経済の基礎であり、すべての消費は人口から来ており、すべての産業や発展も人口に基づいている。労働力がなければ何もできない。 人口が多いということはチャンスがあるということで、ここに家を建ててレストランを開く人がいるというように、若い人がいる地域にこそ、経済的チャンスがある。人々は、高齢者が消費しないことを知っているので、機会がなく、どうやって活気ある経済を持つことができるのでしょうか」と述べた。

 同氏はまた、人口は一国の運勢を反映しており、すでに世界で最も多くの高齢者を抱え、最も速いスピードで高齢化が進んでいる中国は、下り坂に入り始めていると述べた。

 注1:「躺平(タンピン」とは、「横たわる」「寝そべる」という意味だが、転じて、若者たちが「結婚しない、子どもも要らない、家や車も買わない、消費しない、最低限しか働かない、質素な生活を送ること」を選択する低意欲、低欲望のライフスタイルのことをいう。

 「学区房」は、ここで言う「房」とは、住宅のことを指す。そして学区は日本語と同意である。「学区房」とは、優れた学校の学区内に立てられている住宅を指す。不動産関係で使用される言葉で、一般的に広く用いられているが、行政文書や正規の場面には登場しない単語である。 

(翻訳・吉原木子)