大学の授業(イメージ / Pixabay CC0 1.0)

 中国の学校では近年、文化大革命(以下、文革)式の告発の風潮が高まっている。多くの大学と専門学校の教授や教師が授業で、西側諸国の政治、政体などを評価したため、学生に告発され、解雇処分になった。湖南省に位置する湖南城市学院の李剣(り・けん)教師はこのほど、授業中の「日本人は優れている上により良いものを求める」という一言で、学生に告発され、学校側からの処罰を受けた。

 李教師によると、今年4月28日、「建築文化概論」の授業で、政治に関する話や、政治的に不適切な発言はなかったが、「日本人は優れている上により良いものを求める」という一言で、学生の李さんの不満を招き、授業後に学校側に告発された。

 その後、学院の人事部は、「李剣教師は教学の水準と能力が欠如しており、授業時間で学生を社会主義の核心価値観を確立するようにうまく導くことができず、立徳樹人(徳を重んじて人を育てる)の根本的な要求を満たさず、党のために、国のために人材を育てるという要求に達していない」との声明を発表した。李教師は授業をすることが停止され、学院の図書館の司書に異動させられた。

 これに対して、李教師は文章の中で、「教学の能力と政治的傾向の二つの問題で指摘されているが、いずれも実質的な内容や価値がない。いかなる具体的な条項も引用されておらず、いかなる証拠も提示されていない」と反論した。李教師は何度も校長、副書記と人事部に、教育庁の自分に対する訴えを含む、自分を処罰する書面での証拠と資料を要求したが、いずれも拒絶された。

 李教師は10月19日午前、心身共に極度に疲弊したため、学校の教師グループで、「敗北」を認め、紛争を終結させる声明を発表した。夕方、李教師は学校の事務所で、中国共産党湖南省委員会視察組に対する学校側の最終回答資料を読んで、鬱憤が収まらず、不満を抱きながら「不服」と署名し、事件に円満でない終止符を打った。

 時事評論家の李昂(り・こう)氏は、中国では、みんなが真実を言えず、この社会の否定的なニュースを言えないという、とても悪い風潮が今、高まっているとコメントした。政府は、学生の間に大量の情報提供者を入れて、教師の言論を監視しているとし、「政府を攻撃しているわけではなく、事実に即した話をしているだけなのに。学校側は自信がなく、劣等感の表れでもあるのか、自分たちの行動が正しくないことを知っているのではないかと思う」とも述べた。

 大まかな統計によると、この5年間、中国では既に10人以上の大学教師が授業中の発言のため、学生に告発された。軽い処分では授業を停止され、職位を異動させられ、重い処分では除名または解雇処分された。

 文革を経験したインターネット作家の譚作人(たん・さくにん)氏はラジオ・フリー・アジア(RFA)の取材で、人間性から見ると、学生と教師の相互告発は人間としての基本的な道徳に反しているとコメントし、「この事件は、今の中国社会が普遍的価値観から外れており、道徳倫理という基本軌道から脱線していることを示している。中国社会は文明の底辺、あるいは文明と真逆の方向に向けて進んでいる。その具体的な例が文革である。その時代では、自分の両親を含むお互いを密告したり、告発したりしていた」と述べた。

(翻訳編集・吉原木子)