孟宏偉(イメージ:Web Summit /CC BY 2.0

 国際刑事警察機構(ICPO、インターポール)の総裁であり、中国公安部副部長でもあった孟宏偉(モン・ホンウェイ)が「失踪」し、その妻がフランスで記者会見を開いたことが世界を驚かせた。中国共産党当局も孟が調査を受けていることを認め、その後孟はインターポールを「辞任」した。この事件により、中国共産党による国際機関に対する影響も注目されている。

インターポール初の「赤い」総裁

 1984年9月、中華人民共和国がインターポールに加入した。2016年11月、中国公安部副部長孟宏偉がインターポールの総裁に就任した。これによりインターポールは初となる赤い総裁を迎えることとなった。

 孟氏の失踪がこうも国際社会の世論をにぎわせたのには二つの理由がある。孟氏の妻がフランスで記者会見を開いたが、これは彼女が中国共産党高層部のなにかの違法行為の証拠を握っているかもしれないこと、そして孟氏がインターポールの総裁の在職期間中に調査をされたことだ。

 インターポールの主な任務はテロ活動や組織犯罪、マネーロンダリング等の国際犯罪の調査だ。しかし近年、インターポールが独裁国家によって政治利用されているのではないかと言う指摘もなされている。

札束で現状変更を試みる中国共産党

 国際組織の資金調達方法には、主に加盟国の拠出金と民間拠出金がある。例えば、国際連合は加盟国の経済状況によって拠出金の比例を決めている。2016年度では、米国は22%、日本は9.68%、中国は7.921%だった。2018年世界貿易機関(WTO)のデータによると、中国はWTOに対し2,000万ドルを拠出した(米国は2,250万ドル)。

 中国が国連に拠出した金額を見れば、人権侵害を行っている中国が2013年11月に人権理事会のメンバーになれたのも不思議ではないと分かる。中国共産党政権は中国国民を迫害しているだけではなく、国連において人権保護に関する議案に反対票を投じることも多い。

 さらに、中国は2001年からWTOに加盟したものの、WTOのルールに違反し、不当な廉売や不当な関税賦課及び為替操作など手法で国際貿易のルールを破った。

 インターポールの元総裁・孟宏偉事件について、中国公安部は「中国共産党官僚は国際組織に勤めていても調査を免れることはできない」と強調した。中国共産党政権が国際組織のルールを無視していることは明らかだ。

国際組織で要職に就いた中国共産党官僚たち

 インターポールは各国の警察の連携と情報交換を主な目的とした組織だが、近年は中国共産党高官が要職に就くケースが増え、組織の独立性と人権の保護が問題となっている。その背景にあるのが、グローバル規模で勢力を拡大し、浸透を続ける中国共産党である。

 2006年11月、陳馮富珍(マーガレット・チャン)が世界保健機関(WHO)の事務局長に当選した。陳馮富珍は中国人民政治協商会議全国委員会の委員でもある。

 2013年8月、中国商務部副部長易小準が世界貿易機構(WTO)の事務局次長に就任した。

 2016年8月、中国人民銀行副総裁張濤が世界銀行(IMF)の副専務理事に就任した。

 2017年7月、中国外交部副部長劉振民は国連事務総長によって副総長に任命された。

 2018年2月、中国外交官薛捍勤が国際司法裁判所(ICJ)の裁判官に選出された。

 2018年7月、元中国衛生部副部長、中央保健委員会副主任黄潔夫が世界保健機関(WHO)の臓器移植特別委員会名誉主席に就任した。黄潔夫は中国国内における法輪功学習者等に対する強制臓器摘出に関与した疑いがある。

(文・邢亜男/翻訳・黎宜明)