1941年―1942年、ドーブ・エルベ川の運河工事をするノイエンガンメの囚人たち(パブリック・ドメイン)

 アメリカ司法省は2月20日、95歳の元ナチス強制収容所の警備員をドイツに強制送還したと発表した。

 ラジオ・フランス・アンテルナショナルの報道によると、今年95歳のフリードリヒ・カール・ベルガー(Friedrich Karl Berger)は1945年、ナチス・ドイツで兵役期間中、強制収容所の看守を勤め、ノイエンガンメ(Neuengamme)強制収容所内で、ナチスの迫害に関与した。

 記録によると、ベルガーが看守として勤めたノイエンガンメ強制収容所内で、4万人以上の囚人が死亡した。その中にはユダヤ人、ポーランド人、ロシア人、デンマーク人、オランダ人、ラトビア人、フランス人、イタリア人の他、反ナチスのドイツ人もいた。

 ベルガーは去年、米『ワシントン・ポスト』紙の取材に、強制送還される理由に対する不服を示した。兵役に服したのは19歳の頃で、武器も持たず、ただ命令に服従しただけだったとし、「75年越し(の強制送還)なんて、馬鹿馬鹿しい」と述べた。

 一方、アメリカ司法省の法廷文書によると、1945年3月末、イギリス軍とカナダ軍の追撃を受け、ナチス・ドイツが囚人をノイエンガンメ強制収容所へ強制移動させる最中、ベルガーは2週間近く、約70人の囚人の命を奪った非人道的な強制移動を監視していた。

 アメリカ司法省の判決文は、強制収容所の看守の勤務から外すよう要請をしたことはなく、またドイツ政府から旧軍人対象の年金を今も受け取っていると、ベルガーの是認を引用した。報道によると、ドイツに到着後、ベルガーはドイツの司法機関の尋問を受ける可能性がある。

 1979年に設立されたアメリカ司法省の特別捜査局は、ナチスへの調査を特化した。2021年2月20日、同捜査局が元ナチスの109人への調査を完了したと司法省は発表した。

 直近の強制送還は2018年8月で、当時95歳の元ナチス看守がアメリカよりドイツへ強制送還された。同元看守は1957年にアメリカに帰化したが、2003年にアメリカ国籍を強制的に剥奪された。

 これに対し、モンティ・ウィルキンソン(Monty Wilkinson)司法長官代行は、「アメリカが、ナチスのような人道に対する罪を犯した人や人権を侵害する行為をした人のシェルターにならないよう、我々司法省と司法部門は努力をし続けてきたことを、ベルガーの送還は証明した」と述べた。「司法省は、敗戦したナチスの元高官たちを裁判したニュルンベルク裁判の記録をはじめ、人権と特別訴訟班がアメリカとヨーロッパで集めた証拠を収集した。今年はニュルンベルク裁判判決から75周年。何十年もの間、司法省はナチスによる被害者のために努力し続けてきたことをベルガーの送還は証明してくれた」とも述べた。

 アメリカ移民・関税執行局のタエ・ジョンソン(Tae Johnson)局長代行は、「我々はアメリカが、人権を侵害する行為をした人や戦犯のシェルターにならないようにするための努力を惜しまない」と述べた。「我々は、他人を迫害する人への追跡を決して止めることはない。我々執行局と司法省は、正義のために努力し続けることに揺るぎはなく、どれだけ時間をかけても、歴史上最もひどい罪を犯した人への追跡を止めないことを、この強制送還が証明してくれた」と強調した。

(翻訳・常夏)